フリーワード検索
海水魚の記事
サンゴの記事

2020.10.14 (公開 2020.10.13) 海水魚図鑑

ツインデムワーゼルの飼育方法~スズメダイとしては比較的温和で飼育しやすい

ツインデムワーゼルはリボンスズメダイ属のスズメダイです。リボンスズメダイ属の魚は従来はアクアリスト業界では見向きされていませんでしたが、近年ではたまに海水魚店で見ることができるようになりました。なお本種は「ビオラリボンスズメダイ」という名前で販売されていることが多いですが、ビオラリボンスズメダイとは別種とされています。今回はこのツインデムワーゼルの飼育方法をご紹介します。

標準和名 なし
学名 Neopomacentrus sororius Randall and Allen, 2005
流通名 イエローテールデムワーゼル、ビオラリボンスズメダイ
英名 Twin demoiselle
分類 スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・リボンスズメダイ属
全長 7cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど
温度 25℃前後
水槽 45cm~
混泳 スズメダイの中では比較的おとなしい種
サンゴとの飼育

ツインデムワーゼルって、どんな魚?

ツインデムワーゼルはスズメダイ科・リボンスズメダイ属の魚です。体色は灰色っぽく、尾の部分が黄色っぽくなっているのが特徴です。背鰭の後方や臀鰭は黄色っぽく、成長すると尾鰭には小さな輝点が入ることがありますが、臀鰭にはそれがありません。

分布域はインド洋で、コモロ諸島、マダガスカル、東アフリカ沿岸から、東はインドネシアにまで見られます。アクアリウムの流通にのる本種はインドネシアで採集されたものであることが多く、安価で購入できます(後述)。リボンスズメダイ属の魚はほとんど真水のような場所から海域に見られますが、本種は海域にのみ見られます。生態についての情報はあまり多くはないのですが、内湾のサンゴ礁域でみられるそうです。

近縁種との違い

ツインデムワーゼルの特徴、二つの斑点

本種は「ビオラリボンスズメダイ」という名前で販売されていることが多いですが、現在はビオラリボンスズメダイとは別種とされています。たしかにに古い図鑑ではビオラリボンスズメダイと同種とされていることも多いのですが、ツインデムワーゼルでは臀鰭に青白い斑点があることや胸鰭基部付近に二つの青色輝点があるのが特徴で2005年に別種とされ、ツインデムワーゼルは新種記載されました。なお写真の個体ではわかりにくいかもしれませんが、2つの斑点を見ることができます。なお、鰓蓋後方、側線始部にも斑点がありますが、これはビオラリボンスズメダイにも見られる特徴です。なお、本種の口の周りは黄色くなく暗い色になっており、この特徴によりよく似たもう1種、コーラルデムワーゼルとも見分けることができます。これらのリボンスズメダイの仲間は従来は海水魚店で見られませんでしたが、近年は海水魚店でたまにみるようになりました。丈夫さはそのまま、スズメダイの仲間としてはおとなしめのものも多いので人気は出そうです。

ツインデムワーゼル飼育に適した環境

水槽

大型になるスズメダイというわけではないので、45cm水槽でも飼育することができます。ただし混泳を考えるなら60cm以上の水槽が最適でしょう。また大型個体であれば最初から60cm以上の水槽で飼育するのがベターといえます。

水質とろ過システム

スズメダイの仲間はおおむね硝酸塩の蓄積に強く、本種も同様なのですが、それでも硝酸塩の蓄積はあまりよくありません。できるだけきれいな水で飼育してあげたいものです。ろ過槽は45cm以下であれば外掛けろ過槽、または小型プロテインスキマーと外部ろ過槽の組み合わせ、60cm水槽以上では上部ろ過槽の使用がよいでしょう。ただし、用意できるのであればオーバーフロー水槽での飼育がが最適です。

ツインデムワーゼルはサンゴには悪影響を及ぼさないので、サンゴ水槽での飼育もできます。ただしベルリンシステムなどでサンゴを飼育しているのであれば、魚はあまり多く入れられません。サンゴを上手く飼育するのであれば魚は少なめにするのが鉄則です。

水温

熱帯性の浅い海に生息している種で25℃前後をキープすれば問題ないでしょう。大体22~27℃くらいであれば状態よく飼育できますが、クーラーとヒーターを使用して常に一定の水温に保たなければなりません。これは水温の変動が大きくなると、体調を崩し、いつもは丈夫なスズメダイの仲間でも病気になってしまうおそれがあるからです。

隠れ家

隙間の多いライブロックはよい隠れ家になる

ライブロックやサンゴ岩、飾りサンゴなどの隠れ家を用意してあげるとはやく落ち着くので、天敵のいない水槽でも入れてあげましょう。

ツインデムワーゼルに適した餌

海の中では流れてくる動物プランクトンを捕食しています。ですが水槽内では細かくした配合飼料をよく食べてくれるのであまり心配しなくてよいでしょう。プランクトンフードなども食べますが、水質を悪化させやすいのでたまに与えるくらいで十分です。

ツインデムワーゼルをお迎えする

ツインデムワーゼルは先ほども述べたように「ビオラリボンスズメダイ」として販売されていることも多いです。インド洋のサンゴ礁域に広くいますが、主産地はインドネシアのサンゴ礁域で、状態がよくないことも多いのです。購入する際に注意したいポイントはいくつかありますが、入荷直後の個体は購入せず、ある程度魚が落ち着いて餌も食べるようになった個体を購入するのが望ましいといえます。

もちろん入荷してある程度時間がたったものでも、体表に傷やただれがあるもの、鰭がぼろぼろだったり、傷やただれがあるもの、白い点がついているもの、背の肉がおちている(やせている)ものなどは購入してはいけません。

ツインデムワーゼルとほかの生物の関係

ほかの魚との混泳

ローランズデムワーゼルなどとの混泳例

比較的おとなしいスズメダイです。そのため、同種同士、もしくはほかの魚と混泳させることもできます。ただし大きく育ったものは気が強くなり、遊泳性ハゼや小型ハゼとの混泳は避けたほうがよいかもしれません。カクレクマノミや小型ヤッコなど、おなじくらいの大きさの魚との組み合わせが最適です。一方、ハタの仲間やカサゴの仲間などの肉食魚、メギスや大型スズメダイなど、気性の激しい魚との混泳はいけません。

サンゴ・無脊椎動物との相性

ツインデムワーゼルはサンゴとの相性もよく、ソフト、ハードコーラル問わず、熱帯の浅瀬にすむサンゴであればどのようなサンゴとも組み合わせることができますが、SPSやソフトコーラルがよく似合うといえます。ただしイソギンチャクの仲間はスズメダイの仲間を食べてしまうことがありますので、あまりおすすめできません。なお、イソギンチャクといってもディスクコーラルやマメスナギンチャクなどはビオラリボンスズメダイに無害です。

甲殻類についてはクリーナーシュリンプや小型のオウギガニ、サンゴヤドカリやベニワモンヤドカリ、ヨコバサミ系とは飼育できますが、大型のエビ(イセエビなど)、大型のカニ、大型のヤドカリなどとは飼育しないほうが無難です。

ツインデムワーゼル飼育まとめ

  • 灰色の体で尾のオレンジ色が美しい種
  • 「ビオラリボンスズメダイ」という名前で流通することもあるが別種
  • 45cm以上の水槽で飼育したい
  • 水質悪化には強いができるだけきれいな海水で飼育する
  • 水温は25℃前後、常に一定であることが重要
  • ライブロックなどの隠れ家を入れておくと早く落ち着く
  • 餌は動物プランクトン。配合飼料もすぐ食べてくれる
  • 入荷直後は購入を避けたい
  • 病気のものや鰭がぼろぼろ、体表などに傷やただれがあるものなどは避ける
  • ほかの魚との混泳も楽しめるが、大型個体は注意
  • 気が強いメギスや大型のスズメダイ、肉食魚との飼育は避ける
  • サンゴとの相性はよい
  • イソギンチャクや大型の甲殻類にも注意

2020.11.10 (公開 2020.10.09) 海水魚飼育の基礎

猫と海水魚を飼育・同居する際の注意点と水槽や蓋の工夫

ネコは魚を食べるというイメージが強く、ネコと魚を一つの屋根の下で暮らすというのは難しいことのように思えます。しかしながら、実際にはマリンアクアリウムを楽しむ愛猫家というのもとても多いのです。ですが、ネコと海水魚の同居には、いくつか工夫が必要です。今回は実際に愛猫家マリンアクアリストにお話をお伺いし、ネコと海水魚がひとつの屋根の下で同居するために必要な対策を考えてみました。

ネコと海水魚は同居できるのか

ネコといえば、「魚を食べる」というイメージが強いです。たとえば日曜日の夕方に放送される国民的アニメも冒頭は主人公の女性が魚を咥えたネコを追いかけるという歌からスタートします。また、キャットフードにはカツオやマグロなど、魚肉が使用されている商品も多くあります。そのため、ネコと魚は一緒に飼育できないというイメージをお持ちの方が多いようです。しかし、実際には愛猫家アクアリストというのも非常に多いのです。今回は実際に海水魚を飼育している愛猫家アクアリストにお話をお伺いしました。

実際にお話を聞かせてもらいました

今回お話を聞かせていただいたのは北海道にお住まいの「クマノミ」さん。二人暮らしで海水魚と4匹のネコとくらしています。そして立派な120cm水槽の中には、ブラックバンデッドエンゼルやヒレナガヤッコペアの混泳に成功。サンゴも我が家では長期飼育に成功できていないナガレハナサンゴなど、いろいろ飼育されています。とくに写真に写っている「ぽん酢」ちゃんは水槽をじっと見ていたり、水槽に乗ったりしているそうです。ちなみにぽん酢ちゃん、体重7㎏もあるとか…。雑種でメインクーンという品種に似ています。

フタは重要

海水魚ラボでは、過去何度も水槽にフタをすることの重要性を説いてきました。それは水のはねを防ぐ(=塩だれを防ぐ)ためであったり、魚が飛び出して死んでしまうなどの事故を防ぐためにフタをすることをすすめてきたのですが、ネコを飼育する上でもフタは重要です。これはネコが水槽の上に乗っかってしまうことがあり、フタをしていないとネコが落ちて水槽が毛だらけになったり、最悪の場合ネコが溺死してしまう危険性もあります。ですからしっかりフタをしておきたいところですが、フタにもいくつか工夫をしておきたいところです。

それにしてもこの写真ではネコよりも魚やサンゴに目が行ってしまいます。チヂミトサカのようなソフトコーラルやオーストラリア産ミドリイシ、魚も中型ヤッコの混泳をしていますが、すべてが非常によさそう。

フタにも工夫を

▲コトブキのフタ受けを使用。でかい。

▲7㎏の体重を支えるためフタも分厚い。水槽の厚みに近い。

ネコのいる部屋で海水魚を飼育するのに、フタにも工夫をしています。クマノミさんは120cm水槽で飼育しておりますが、フタはいくつかに分けています。この水槽はコトブキのもので、フランジはないので、フタを置くためにはフタ受けが必要ですが、このフタ受けについてもしっかりしたものを選ぶ必要があります。この水槽ではコトブキ製のフタ受けを使っていますが、大きく重厚そうです。注意すべき点はガラスの厚さにより使用できるフタ受けが異なることです。また水槽にセンターフランジもあったほうがよいとのこと。

また、フタそのものにも工夫がしてあります。薄いガラスではなく、分厚いガラスを使用して、ネコが上に乗っても割れないようになっています。またネコがケガするのを防ぐためにガラスの角切りもしています。しっかりしたフタ受けと分厚いガラスはネコを飼っていないのであればこれほど分厚いのはいらないと思いますが、ネコの安全を考えると、このくらいのものがあったほうが安心できます。

ちなみに、ガラスフタはこの水槽では4つ使用しているそうですが、最低でもフタ受けをガラス1枚あたり2つか4つつけておきたいところです。

寿工芸 水槽 K‐154 ガラスブタ受け

寿工芸 水槽 K‐154 ガラスブタ受け

423円(12/13 20:02時点)
Amazonの情報を掲載しています
コトブキ K-155 6/8/10mm用ガラスブタ受け

コトブキ K-155 6/8/10mm用ガラスブタ受け

690円(12/13 20:02時点)
Amazonの情報を掲載しています

クーラー

▲哺乳類の毛がクーラーの故障の原因にもなりうる

ネコをはじめ、哺乳類のペットを飼っているのであれば、水槽用クーラーの掃除は忘れないようにしましょう。クマノミさんのネコだけでなく、我が家でもウサギを飼育していたのですが、やはり毛が抜けてフィルター部に毛が詰まりやすいので、定期的な掃除が重要です。毛が詰まってしまうと、なかなか冷えなかったり、最悪故障してしまうことがあります。

隙間に入らないように

ネコは隙間が大好き。水槽の裏の隙間にも平気で入ってしまいます。しかし水槽の裏には配線類などでごちゃごちゃしてしまいがちです。いたずらすると魚が死んでしまったり、ネコが感電するおそれもあります。さらにネコの毛が飛んでしまったりすることもありえます。そのため、柵を設置するなどしてネコが後ろに入らないようにしましょう。

ネコが魚の餌を食べてしまうことがあります。マグロ、カツオなどの缶入りフードに限らず、ドライキャットフードも肉や鶏のほか、魚粉も使用されていますが、この魚粉は海水魚の餌としても主要な原料でもあり、ネコが食べることもあります。そのため魚の餌はネコにとられないような場所に置いておきます。もし食べてしまうようであれば、怒りの表情でしつけます。ネコは甘やかすだけでなく、悪いことをしたら叱るのも大事、とクマノミさんはおっしゃります。

またサンゴなどに添加する添加剤や水質検査に使う薬品はネコに有害なものもあり、ネコが舐めたりしないように注意しましょう。

ネコは屋内で飼うこと

ネコは必ず屋内で飼育するようにしましょう。「魚飼ってるからネコは屋外にいてね~」というのは論外です。ネコを外に出すことにより、ほかのネコから病気をもらってきたり、野生の生き物を捕食したり、さらにほかの家の庭先で糞尿などをしてその家の人に迷惑がかかったりします。ほかの人の家で悪いマナーをすればその人はネコを嫌うようになってしまいます。また屋外は天敵がいたり、車などにはねられる可能性があるなど、ネコにとっても危険がいっぱいです。屋外ではなく、天敵もおらず安心でき、餌もいつも手に入る屋内で飼育するのがネコにとっては幸せといえるでしょう。

ネコと海水魚飼育まとめ

  • ネコと海水魚は同居できるが工夫が必要
  • フタが重要。水槽に転落し最悪溺死するおそれも
  • 厚いフタ、しっかりしたフタ受けなども工夫が必要
  • ネコがケガしないようにガラスの角切りもしたい
  • ネコの毛がクーラーのフィルターにつまり最悪故障することも
  • ネコが水槽の後ろへ行かないようにガードしておきたい
  • 魚の餌も食べることがあるので注意
  • 添加剤や水質検査の薬品などはネコに有害。舐めないよう注意
  • 甘やかさずネコを叱ることも大事
  • ネコは必ず屋内で飼育する

2020.10.07 (公開 2020.10.07) 海水魚図鑑

ナンヨウミドリハゼの飼育方法~緑がきれいなピグミーゴビーで混泳は注意

ナンヨウミドリハゼは、南日本の太平洋岸や琉球列島のサンゴ礁に生息する小型のハゼ(ピグミーゴビー)です。その名の通りの緑色がきれいなハゼです。しかし全長3cmほどと、非常に小さいハゼなので、混泳には注意が必要です。今回はナンヨウミドリハゼの飼育方法をご紹介します。

標準和名 ナンヨウミドリハゼ
学名 Eviota prasina (Klunzinger, 1871)
英名 Greenbubble dwarfgoby
分類 スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・イソハゼ属
全長 3cm
飼育難易度 ★★☆☆☆
おすすめの餌 コペポーダシグマグロウBなど
温度 25℃
水槽 35cm以上
混泳 ほかの極小サイズの魚との混泳にとどめたほうがよい
サンゴ飼育 おおくのサンゴと飼育できるがイソギンチャクは避ける

ナンヨウミドリハゼって、どんな魚?

ナンヨウミドリハゼはハゼ科イソハゼ属のハゼで、その名の通り鮮やかな緑色が特徴的なハゼです。イソハゼの仲間はよくにたシマイソハゼ属やベニハゼ属とならび、ハゼの仲間でもとくに小型の部類に入ります。種類数も非常に多いのですが入荷する種類はそれほど多くはありません。しかしナンヨウミドリハゼについては沖縄便を扱うお店であれば比較的入ってくる種類といえます。イソハゼ属の種類は非常に多く、そっくりなものも何種かいます。とくにミドリハゼやミナミイソハゼなどは本種によく似ています。本種は内湾からサンゴ礁域に広く見られ、タイドプールにもいるなど、小さい体ながら幅広い環境に適した魚といえるでしょう。なお鰭には雌雄で差があるようで、雄の第1背鰭は少し伸びています。

ナンヨウミドリハゼ飼育に適した環境

水槽

大きな水槽で飼育すると、水槽に入れてもどこへ行ってしまったかわからない、なんていうこともありますので、小型水槽が最適です。クロスミニや、グラステリアAGSなど小型オーバーフロー水槽で飼育するのもよいでしょう。ただし水槽のフタはしっかりしめるようにしましょう。なお、この水槽の個体はニッソーの小型水槽「クロスミニ」で飼育しています。

水質とろ過システム

硝酸塩の蓄積にもよく耐えられる強い魚ですが、できるだけきれいな海水で飼いたいものです。ろ過槽はしっかりしたものを選びます。小型の外掛けろ過槽は酸素がいきわたりやすいというメリットがありますが、ろ材を入れられる量が少ないというデメリットがあります。外部ろ過槽は多くのろ材を入れられますが、酸欠になりやすいというデメリットがあります。どちらか片方、ではなくできるだけ二つの方式を組み合わせるようにしたいものです。そうすればどちらかのろ過槽が故障してもどちらかが循環していれば魚は生きていけるからです。このほか外掛けろ過槽ではなく小型のプロテインスキマーを使用するという方法もあります。

オーバーフロー水槽については一般的なオーバーフロー水槽では広すぎて観賞しにくいことがありますが、先述のような小型オーバーフロー水槽であればおすすめといえます。ナンヨウミドリハゼはサンゴとの相性はよく、ベルリンシステムでの飼育もできますが、サンゴを多く入れた水槽では観賞しにくいというデメリットもあります。

水温

水温は25℃を保てばよいでしょう。大体22~27℃くらいで飼育できます。ナンヨウミドリハゼは小さくても丈夫な魚ではありますが、水温の変動が大きいと丈夫なナンヨウミドリハゼも体調を崩してしまうことがあります。またそれにより病気が発生することもあります。年中ヒーターとクーラーで温度を一定に保ちます。

隠れ家

ナンヨウミドリハゼは臆病なので、隠れ家としてライブロックやサンゴ岩などを入れてあげるようにします。ただしナンヨウミドリハゼを肉食性の魚と混泳するとどんなに隠れ家をいれてもいつの間にか捕食されていなくなってしまうのでいけません。

ナンヨウミドリハゼに適した餌

ナンヨウミドリハゼは肉食性で、主に動物プランクトンなど微小生物を捕食しています。ただし水槽内では動物プランクトンに限らず小粒の配合飼料などを食べてくれます。ただし大きい粒だと食べられないことがあります。シグマグロウの小粒(B)などが向いているでしょう。たまには冷凍のコペポーダなどを与えてもよいのですが、与えすぎると水を汚すことがあるので注意が必要です。とくに小型水槽では水質が悪化しやすいので十分に注意しましょう。

どじょう養殖研究所 グロウ B 細粒タイプ 55g

どじょう養殖研究所 グロウ B 細粒タイプ 55g

960円(12/13 20:22時点)
Amazonの情報を掲載しています

ナンヨウミドリハゼをお迎えする

ナンヨウミドリハゼは購入するだけでなく、南日本太平洋岸の磯で採集することもできます。

採集する

▲手網に入ったナンヨウミドリハゼ

沖縄まで行かなくても、紀伊半島や高知県の磯、塩だまりなどで採集することができます。ごく浅い潮だまりに生息しており、干潮時、潮のよく引いた潮だまりでは潜る必要もないといえます。死んだサンゴの隙間などに隠れていることが多く、そのような死サンゴがあるような地域で探してみるとよいでしょう。採集してもそのまま水から開けず、プラスチック製の容器などを使用して水から掬うようにします。これはイソハゼなどのピグミーゴビーはスレ傷に弱いことが多いからです。

購入する

ナンヨウミドリハゼ購入のポイント

ナンヨウミドリハゼはイソハゼ属としては比較的お店でも見るので購入するのもよいでしょう。お店で購入する時の注意としては、色が妙に白くないものを選ぶことです。水槽底面の色が白っぽいと体色も白くなることはありますが、それでも透明感があります。透明感がない白くなっている個体は採集時など、スレてしまっている可能性もあります。このほか、採集して時間がたっていない個体、鰭がぼろぼろ、鰭や体表が溶けるようになくなっているものなどは購入してはいけません。

また販売水槽に大きめの性格のきつい魚がいるようだと、その魚にびびってしまうこともあります。そうなるとやせてしまうことがあるので、そのようなものは選ばないほうがよいかもしれません。

ナンヨウミドリハゼとほかの生物との関係

ほかの魚との混泳

▲ほかのピグミーゴビーとの飼育がベスト

ナンヨウミドリハゼは一般的に「小型」とされるスズメダイなどよりもずっと小さいので、ほとんどの魚との混泳には向いていません。ほかの魚と混泳するのであれば同じようにピグミーゴビーやネオンテンジクダイなど極小サイズの魚に限ります。大きい魚と混泳させると、その存在によりナンヨウミドリハゼがおびえてしまうことがあります。また本種は小型水槽で飼育して観察したい魚であり、そういう意味でも大きめの魚はよくありません。

なおナンヨウミドリハゼ同士の飼育は可能です。本種に限らず小型のイソハゼ類は同種同士の混泳も難なく可能ですが、温帯域に生息する大型のイソハゼなどとの混泳は避けたほうがよいでしょう。

サンゴ・無脊椎動物との相性

ナンヨウミドリハゼはサンゴ水槽でも飼育できます。しかし大型のリーフタンクではどこへいったか分からなくなってしまうということもあります。また大型のディスクコーラルや、ウチウラタコアシサンゴなど捕食性の強いサンゴはナンヨウミドリハゼを食べてしまうこともあります。もちろんイソギンチャクなどもだめです。

甲殻類についても一緒に飼育することは難しく、ほかの魚を襲わないようなエビ、カニ、ヤドカリであってもナンヨウミドリハゼのような小さな魚を食べてしまう可能性があります。そのため組み合わせは避けたほうがよいでしょう。ただコトブキテッポウエビ(ランドールズピストルシュリンプ)とは問題ないようでヒレナガネジリンボウなど小型共生ハゼも一緒に入れられます。貝類については魚食性のものや大きいものを除いて問題ありません。

ナンヨウミドリハゼ飼育まとめ

  • イソハゼの仲間の小型種で濃い緑色が美しい
  • 大型水槽では観察がしにくいため小型水槽がよい
  • 小型水槽でもしっかりとしたろ過が重要
  • 水温は25℃前後を一定に保つ
  • サンゴ岩やライブロックなどで隠れ家を作ってあげたい
  • 大きい配合飼料は食べられないので細かい配合飼料を
  • コペポーダなどは水質を悪化させるため与えすぎない
  • 採集することもできるがスレに注意
  • 購入する時も体が白っぽくなっているのは避ける
  • 同じようなピグミーゴビーとの混泳が望ましい
  • サンゴ類との相性はよいが捕食性のサンゴやイソギンチャクは避ける
  • 甲殻類も相性が悪いものが多い

2020.10.07 (公開 2020.10.06) メンテナンス

海水魚飼育における塩だれ対策~放置しておくとショートの危険も!

海水水槽で魚やサンゴなどを飼育していると、水槽のガラス面に白い線がついていることがあります。

これが塩だれと呼ばれるものです。なんらかの理由で海水がはねたりした結果起こるもので、放置しておくと、塩がガチガチに固まってしまいます。そうなると水槽周辺の美観を損ねることになるほか、金属をさびつかせたり、最悪の場合はコンセントがショートしてしまうこともあります。今回は海水魚飼育の天敵「塩だれ」とその対策についてご紹介します。

塩だれが発生する理由

▲水槽から落ちてきた水滴が塩だれになりつつある

塩だれが起きる大きな理由は水のはねです。海水がはねて水槽壁面をつたうと、やがて水が蒸発して塩が残ります。これが塩だれです。ろ過槽の種類によって、特に外掛けろ過槽の周りは水がはねやすく、そこから大きな塩だれができている、なんていうこともあります。もちろんこれはオーバーフローシステムや上部ろ過槽など、別のろ過槽を使用しても起こる可能性があります。水のはねはろ過槽だけでなく、魚が暴れることでも起こることがあります。小さなカクレクマノミはそれほどでもないのですが、大きな魚、例えば大型ヤッコなどは餌を食べるとき水しぶきをあげることがあります。それで水槽中の水がはねて、塩だれがおこることもあります。

また海水魚水槽は淡水水槽とくらべて酸欠になりやすいところがあり、エアレーションをしているアクアリストも多いのですが、このエアレーションも水のはねが起こりやすく、その結果塩だれが発生しやすくなるので工夫・対策が必要になります。このほかに海水の入った容器などを落っことしたとか、水槽に手を突っ込んで腕から水がたれていたのを放置したとか、オーバーフロー水槽の出水口が上に上がってしまっていた、ということも水はねの原因にあげられます。

塩だれでおこるデメリットと問題

塩だれが発生すると周囲の電気機器に故障などの悪影響を及ぼしたり、金属製品はさびてしまうことがあります。また、コンセントにかかってしまったら最悪の場合、ショートしてしまう危険性もあります。また、この塩だれが発生することにより、水槽やその周辺の美観が大きく損なわれることにもなりますので、できるだけはやいうちに塩だれを取り除いてあげる必要があります。

塩だれ防止策

発生したら拭く

▲塩だれが発生したらすぐにふき取る

塩だれが発生したらできるだけ早いうちにふくようにします。ガラス水槽の場合、タオルや雑巾をぬるま湯または水でしぼってふきます。塩だれが多量に発生し、水分が蒸発して固まってしまうと取り除くのは難しくなってしまうことがあります。水槽台に塩だれが発生するとさびが出てくるだけでなく、最悪の場合腐食してしまうことがあります。かつては水槽や水槽台の表面をコーティングするアイテム「ソルトクリープエルミネーター」がカミハタから出ていたのですが現在は販売終了となってしまったようで、入手することができません。塩だれが出たらしっかり拭き掃除しておくことが重要です。

フタとフランジ

フランジは重要

フタとフランジは重要で、これがある水槽では塩だれの被害を大きく軽減することができるでしょう。実際に我が家の水槽ではフランジが極めて重要なことに気づかされます。フランジがついている水槽はついていない水槽に比べて塩だれが少ないので、塩だれ防止に高い効果があるものと思います。新しく水槽を購入する予定があるのならば、フランジ付きの水槽を購入するようにしましょう。ガラス水槽をオーダーメイドで作ることもできますが、その際には多少高くなってもフランジをつけてもらうことをおすすめします。フランジがついていなければ、水槽の上に木の枠をつけて、その上にフタを置いても、枠の隙間から塩だれが発生した…なんていうこともあるからです。

そしてフランジの上には必ずフタをつけます。フタは水はねの防止に非常に効果的ですが、このほかにも魚の飛び出しや、大きめの魚の水しぶきを防止するなどのメリットもありますので、絶対にフタはつけるべきです。

ろ過槽とエアレーション

▲バブルストッパーを使用した90cmサンゴ水槽

塩だれの発生はろ過槽の種類によることもあります。たとえば外部ろ過槽は静かでパイプの位置によっては塩だれを軽減させることもできます。外掛けろ過槽などのように、どうしても水面でばしゃばしゃやっていると、海水がわずかにはねてしまい、塩だれができてしまうことがあります。しかしながら、外部ろ過槽は静かではあるのですが、酸欠が起こりやすく、ろ過された水が水槽に戻るパイプの位置によっては魚が酸欠を起こして死亡してしまうこともあるため、メリットといいにくいところがあります。バイオラボトットから出ている「バブルストッパー」などを使ったエアレーションも併用するべきかもしれません。バブルストッパーをつかうべき理由としては、普通にエアレーションすると塩だれがおきやすいからです。また、サンゴ水槽でふつうにエアレーションをすると、気泡がサンゴの共肉につくことがありサンゴがストレスを感じることがありますが、バブルストッパーを使えばそのような心配も無用です。

バイオラボトット (TOTTO) バブルストッパー

バイオラボトット (TOTTO) バブルストッパー

2,100円(12/13 22:21時点)
Amazonの情報を掲載しています
バイオラボトット (TOTTO) バブルストッパー ミニ

バイオラボトット (TOTTO) バブルストッパー ミニ

1,250円(12/13 22:21時点)
Amazonの情報を掲載しています

塩だれまとめ

  • 海水がはねたりしたときに塩だれが発生することがある
  • 外掛けろ過槽などろ過槽の種類によっては塩だれが発生しやすい
  • 大型魚が暴れたり餌に飛びついた際に水が跳ねることも
  • 塩だれで美観を損ねるだけでなく金属製品がさびたり最悪の場合電源がショートしてしまうことも
  • 塩だれが発生したら早めにふき取りたい
  • フランジがあれば水のはねはある程度抑えられる
  • 外掛けろ過槽よりも外部ろ過槽を使用すれば塩だれが発生しにくいが酸欠に注意
  • 外部ろ過槽をつかうならバブルストッパーなどを使用してエアレーションをしたほうがよいかもしれない

2020.10.02 (公開 2020.10.02) 海水魚図鑑

モンガラカワハギの飼育方法~初心者に人気だが混泳は不可

モンガラカワハギはその派手なもようから人気がありそうな海水魚です。「人気がある」のでなく「人気がありそうな」としたのは、この種は実は経験を積んだアクアリストからの人気がいまいちな魚だからです。なぜかというと、やや大きくなること、強い歯でサンゴやライブロック、最悪の場合コードをかじってしまうおそれがあること、性格が非常にきつくほかの魚を入れるのが難しいことがその理由です。しかしながら今でもこの魚を飼ってみたいというアクアリストは初心者を中心に多いようです。今回はこのモンガラカワハギの飼育方法をご紹介します。

標準和名 モンガラカワハギ
学名 Balistoides conspicillum (Bloch and Schneider, 1801)
流通名 ホンモンガラ
英名 Clown triggerfishなど
分類 フグ目・モンガラカワハギ科・モンガラカワハギ属
全長 40cm
飼育難易度 ★★☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど
温度 25℃前後
水槽 120cm~
混泳 成魚は同種を含めほかの魚との飼育は難しい
サンゴとの飼育 不可

モンガラカワハギって、どんな魚?

モンガラカワハギはフグ目モンガラカワハギ科に含まれる魚です。カワハギ、と名前についてはいるのですが、カワハギとはやや異なる仲間で、背鰭に3棘があり(カワハギでは2棘)、体には大きな鱗がある(カワハギでは微小)のが特徴です。色彩的には腹部の大きな白色斑、背中の黄色い模様、口の周辺の黄色がカラフルです。インド―太平洋域の熱帯・亜熱帯のサンゴ礁に生息し、カワハギの大部分の種よりも大きく、全長40cmくらいになり、最大で50cmくらいになるといわれています。

カワハギとは異なり、モンガラカワハギは食用としてはあまり使用されません。これは内臓が毒化するおそれがあったり、シガテラ毒を有する可能性があるからです。モンガラカワハギ科の一部の種、たとえばキヘリモンガラやゴマモンガラ、オキハギなどの種は刺身、煮つけで食べられ美味ですが、これらも肝臓などの内臓は食用にされていないようです。

モンガラカワハギの仲間の英語名は「Triggerfish」(引き金の魚)です。これは背鰭の特徴からきています。危険が迫ると岩穴などに逃げ込み背鰭と腹鰭の棘を立てて引きずり出されないようにして身を守るのです。本種はその中でもClown triggerfishと称されます。Clownとは道化師のことで、体側の変わった模様からついたのでしょう。

モンガラカワハギの仲間

▲ムラサメモンガラ

モンガラカワハギの仲間は(同定が不確実なものも含め)世界から43種が知られています。うち日本には24種が分布もしくは報告されています。モンガラカワハギ同様、カラフルなものや面白い模様を持つものが多く、どの種も観賞魚として人気がありますが、気性が荒い種も多く、ほかの魚との混泳には向いていない魚といえるでしょう。また種類によっては幼魚と成魚の色彩変化を楽しむことができるようなものもいますが、そんな種は大型化して歯もつよくなるため取り扱いには注意が必要です。なお、ほかのモンガラカワハギの仲間と区別するために種の標準和名でモンガラカワハギと呼ばれるものは「ホンモンガラ」の名前で流通することもあります。

取り扱い注意

意外と強い歯を有するので取り扱いに注意

モンガラカワハギは大きな歯と強い顎を有しており、かまれるとケガをするおそれがあります。また尾柄付近にも棘列がありますので、できるだけ素手や網でつかんだりせず、水ごとプラケースやバケツなどで掬ったほうがよいでしょう。本種に近縁なゴマモンガラは歯が強くかまれると危険ともされます。

モンガラカワハギ飼育に適した環境

水槽

▲コーラルタウンのオーバーフロー水槽で飼育されているモンガラカワハギ

水槽はアクリル水槽のオーバーフロー水槽をおすすめします。筆者はこれまでガラス製の水槽をすすめ、また一般種についてはオーバーフロー水槽でなくても飼育できるということを記述していますが、モンガラカワハギの仲間に限ってはアクリル製のオーバーフロー水槽を強くすすめます。それにはいくつかの理由があります。

大型になる

モンガラカワハギは自然下では全長40cm、飼育していても30cm近くにはなります。そのため水槽も大きいものが欲しいところです。最低でも90cm、できれば120cm水槽を用意してあげたいところです。またこのようにある程度大きくなる魚は排せつ物の量も多く、しっかりとしたろ過槽も必要になってきます。そのため、オーバーフロー水槽が最適といえるのです。

ヒーターなどのコードをかじる恐れがある

モンガラカワハギは強い歯と顎をもち、かまれると危険なのですが、さらに厄介なことに、何でもかじるというクセをもっています。ライブロック、サンゴはもちろん、個体やサイズによってはヒーターやコードなどもかじってしまうおそれもあります。そうなると最悪の場合火災などの危険もあります。そのようなことを防ぐためにコード類やヒーターを収容できるサンプのあるオーバーフロー水槽がモンガラカワハギの飼育に最適であるということがいえます。

ガラスを割ってしまうこともある

モンガラカワハギはまだそれほどでもないのですが、この仲間には卵を守っていたり、驚かせたりすると突進してくるような種類もいます。そのような種類はガラス水槽を突き破ってしまうこともあり、十分注意する必要があります。

水質とろ過システム

モンガラカワハギはあるていどの水質低下には耐えられる強い魚ですが、できるだけきれいな水で飼育してあげたいものです。ただし、上記の理由から、ろ過システムの選択肢は基本的にオーバーフロー水槽一択となります。なお、サンゴとは一緒に飼育できず、排せつ物の量も多いためベルリン水槽で飼育するのは困難ともいえます。魚を飼育するために、サンプに生物ろ過槽をこしらえた強制ろ過で飼育するべき魚といえるでしょう。

水温

モンガラカワハギは熱帯域に多い魚ですので25℃前後で飼育するようにしましょう。幼魚はやや深い場所にいるといいますが、それでも水温25℃で飼育できます。重要なのは水温が一定であることで、一定の水温を保たないと病気になってしまったりすることもあるからです。

モンガラカワハギ飼育に適した餌

モンガラカワハギは雑食性ですが主に甲殻類やウニなどを食べ、付着生物や藻類なども食べます。また小魚も捕食したりすることがあります。甲殻類やウニなども与えたら喜んで捕食するでしょう。ただし餌の与えすぎで水を汚すことのないように注意します。配合飼料にもよくなれ、粒状の餌もよく食べますが、できれば成長に伴い、餌の粒のサイズを変えてあげるのがベストといえます。

モンガラカワハギをお迎えする

モンガラカワハギの選び方

モンガラカワハギは海水魚店で販売されていますが、最近はサンゴ水槽全盛期であり、魚についてもスズメダイの仲間を除くとほかの魚と混泳できるような魚が人気です。そのためモンガラカワハギは一般的なヤッコやクマノミなどと比べ、あまりお店では見なくなった種類といえます。また人気は模様が細かくてかわいい幼魚に集中し、大きな個体はあまり販売されることがありません。

購入する時の注意点としてはゆったりおよいでいる、鰭のきれいなものを選ぶようにします。また鰭が妙な色をしていたり、鰭や体表に白い点がついているもの、体高がなく細長い形をしているもの、背肉が落ちている(やせている)などは購入するのを避けたほうが賢明でしょう。もちろん入荷してすぐの個体の購入も避けたほうがよいでしょう。

成魚は相模湾以南で採集できますが、キヘリモンガラやゴマモンガラ、ツマジロモンガラ、ムラサメモンガラの類とは異なり、タイドプールなどの浅瀬ではまず見られない魚です。そのためある程度潜れる人でないと本種を採集するのは難しいといえます。また、釣りで採集することもできますが、飼育できるような状態の個体が多いわけではありません。銛やヤスを使った「突き漁」で採集すると確実に死んでしまうため、これもいけません。

モンガラカワハギの病気対策

▲殺菌灯は確かに病気の予防効果があるものの万能ではない

モンガラカワハギもフグ目の魚で病気にかかることがあります。体表や鰭に細かい白い点(原生生物)のつく白点病にかかることもあります。薬浴して治療しますが、その前に病気にかかりにくいようにします。定期的な水かえを行い、常にきれいな海水で飼育し、水温も一定に保つように心がけます。病気予防といえば「紫外線殺菌灯」を思い浮かべますが、その以前に基本的なことをしっかりすることが大事なのです。

ほかの生物との関係

ほかの魚との混泳

▲小さなうちはまだよいのだが

水族館の水槽ではほかの魚と飼育されているケースも多いのですが、これは水族館の水量は家庭水槽の水量とは比べ物にならず、かつほかにも大きく強い魚が多く泳いでいることがほとんどです。したがって家庭の水槽ではほかの魚との混泳は困難であると考えましょう。小魚はばりばり食べますし、ある程度大きな魚でも体表や鰭などをかじったりしてしまうので、混泳には向いていないといえます。小さいうちはほかの魚との混泳もできなくはないのですが、モンガラカワハギが成長するに従い確実に水槽が増えていくでしょう。そのため持て余してしまうこともあります。そうなっても海に逃がしたりせず、観賞魚店に引き取ってもらうようにしましょう。

サンゴ・無脊椎動物との相性

モンガラカワハギは造礁サンゴやソフトコーラルさえかじってしまうのでサンゴ水槽での飼育はやめたほうがよいでしょう。またカニやエビなどの甲殻類、ウニや貝類なども好んで食べてしまうのでそれらの無脊椎動物との飼育は無理といえるでしょう。

モンガラカワハギ飼育まとめ

  • モンガラカワハギ科の魚でカワハギとはやや異なる仲間
  • サンゴ礁に生息しカラフルな色彩が特徴
  • 性格がきつくほかの魚との混泳は困難
  • 水槽はアクリル製のオーバーフローが最適
  • コードをかじることがあるのでそれらはサンプにおさめたい
  • 水質低下には比較的耐性があるが病気に注意
  • 餌は配合飼料もよく食べる
  • やせているものや鰭などに白い点がついているものなどは避ける
  • 綺麗な水と一定の水温で病気を予防したい
  • 小さいうちはほかの魚とも飼えなくはないがそのうち別水槽が必要になる
  • サンゴ水槽や甲殻類との飼育も不可

取材協力

コーラルタウン

2020.12.04 (公開 2020.10.01) 海水魚の買い方

海水魚・サンゴ専門店コーラルタウン(茨城県土浦市) の「町長」こと店長へ直撃インタビュー!

コーラルタウンは茨城県土浦市にある、海水魚とサンゴに特化した専門店です。筆者の自宅からも近く、よく訪問し、キャビネット作成、配管の作成、飼育のアドバイスなどいろいろ相談に乗っていただき、施工もしていただきました。

2008年10月1日のオープンから12年(現時点)になります。今回はインタビュー形式でコーラルタウンをご紹介します。

コーラルタウンについて

コーラルタウンは茨城県県南、土浦市にある海水魚とサンゴの専門店です。この地域は東京から通勤圏内であり人口も多いのですが、茨城県南で唯一の海水魚・サンゴの専門店といえます。アクセスは、高速道路を使用する場合は常磐自動車道の桜土浦ICから10分ほどと好立地で駐車場も3台分用意されています。JR常磐線荒川沖駅が最寄り駅となり徒歩で20分。

このコーラルタウンを語る上で欠かせないのが店主の小沼さん(通称「町長」さん)です。水槽内のレイアウトが大変に上手で、そのルックスから、一部雑誌では「レイアウト王子」なるニックネームがついています。ほかにも木材を切ってキャビネットを作って販売したり、配管も行ったり、床下補強などなんでもできてしまいます。休日は水曜日と第3火曜日なのですが、これらの日もメンテナンス作業が多く忙しそうです。今回は私と、町長さんとのインタビュー形式で進めていきます。

コーラルタウンで扱っている魚の種類

▲コーラルタウンの販売水槽。ハギやヤッコ、クマノミなど

管理人:まずお伺いしたいのですが、コーラルタウンではどのような魚を中心に扱っているのですか?

町長さん:うちは「コーラルタウン」ですので、基本的には「サンゴ水槽で混泳できる魚」をメインに扱っています。メインで入れているのはハギ(ニザダイ)、ヤッコ、ベラ、クマノミですが、チョウチョウウオ以外はおおむね入れていると思います。

管理人:あまり高級な魚はいませんね?

町長さん:高級魚の在庫はしていません。リクエストがあればとる感じです。

管理人:ヤッコは調子よさそうですね。

町長さん:そうですね、餌付けてから販売するのを心がけてます。(餌付けにくい)ニシキヤッコとかも、一応。

管理人:店内の水槽の数はどのくらいですか?

町長さん:うーん、数えていないからわからないなぁ(笑)

一同(笑)
※数えてみたら39個ありました。

コーラルタウンで扱っているサンゴの種類

▲「コーラルタウン」らしくサンゴの在庫・状態も素晴らしい

管理人:「コーラルタウン」の名前の由来になっているサンゴ(コーラル)はどういうのを入れていますか?

町長さん:コーラルタウンでは、人気があるミドリイシに限らず、色々なサンゴを入れています。上級者向けから初心者向けまで幅広い種類を在庫しています。

管理人:フラグサンゴもありますね、店内のサンゴをフラグにしたんですか?

町長さん:そうですね、店内のサンゴをフラグサンゴにしたのもありますけど、フラグ用に来てるのもありますね。

取り扱っている内装・器具

管理人:コーラルタウンはレッドシーの認定ディーラーショップなんですね?

町長さん:そうでーす!レッドシーの商品は使いやすいんですが、いい商品ならメーカー問わずそろえています。ライブシー、マックススペクト、マーフィード、アクアリウムシステムズ。お客さんの希望があれば取り寄せも行います。

管理人:店内中央にあるこの水槽周りのインテリアはどのようなイメージで作られたのでしょうか?

町長さん:「南国」をイメージして作り上げました。木材や観葉植物をたくさん使用し、水槽とのバランス・インテリアを重視しています。買わずに見ていくだけでも楽しんでもらえると思いますよ。

管理人:観葉植物はさすがに販売はしていませんよね?

町長さん:販売してません!

コーラルタウンの魚、サンゴの状態は非常に良好で、この海水魚ラボ内で掲載しているサイト素材についてもいつもご協力いただいています。

初心者の方へのメッセージ

管理人:最後に初心者アクアリストにひとこと!

町長さん:なんでも相談に乗りますので、ぜひご来店ください!

まとめ

  • 茨城県南では数少ない海水魚専門店
  • 海水魚はサンゴ水槽で飼育できる種が中心
  • サンゴはSPSからLPS、沖縄のソフトコーラルまで一通りそろう
  • レッドシーの認定ショップだがほか各メーカーを取り扱う
  • 店内の装飾もすばらしい。観葉植物も多数あるが販売はしていない
  • ビギナーからベテランまで通う人気店

2020.09.29 (公開 2020.09.29) 海水魚飼育の基礎

なぜ海水魚を放流してはいけないのか

海水魚を採集している人がブログやSNSなどで「採集したスズメダイが大きくなったので海へ逃がしてあげた」という書き込みを見ることがあります。

これについては「採集したところとおなじところで採集したものなので別に問題ないだろう」と思っている方も多いのですが、実は大きな問題をはらんでいます。また近頃は「生物多様性」というワードがクローズアップされており、「生物を屋外に放してはいけない」とよくいわれていますが、なぜ放してはいけないのかを説明できない人は多く、あいまいな答えしかできないことも多いのです。

今回はなぜ海水魚や、そのほかの生物を海や河川、屋外に放ってはいけないのかご紹介します。

海水魚における外来種問題とその事例

▲レッドドラム

外来魚問題としては淡水魚(内水面)の世界で問題視されていますが、海水魚であっても外来種問題というのは存在します。淡水魚の場合はゲームフィッシュの移植やそれの散逸(オオクチバスなど)、天敵魚種の移入(魚類の場合はカダヤシ)、食用を目的とした移植(ハクレンなど)、飼育しきれなくなった魚の放流ですが、海水魚における外来種問題でよく知られているのは養殖場からの逸脱です。要は養殖していた魚が逃げ出したというものです。例えば宮崎や愛媛などでのタイリクスズキや、一時長崎で確認されていたニベ科のレッドドラム(中国などで養殖されている)などはその例といえるでしょう。近年日本では中国や台湾などから養殖種苗を購入していることもありますが、これらも逸脱したり、奇形などであっても「ハネ」て海へ逃がすことがないよう養殖業者にお願いしたいものです。一方海水魚ではないのですが、近年埼玉などで琵琶湖特産のホンモロコを養殖していますが、これも最近の河川増水などで逸脱してしまう危険性があります。

一方、最近はアクアリストが海水魚を放流したケースもあります。基本的には飼育しきれなくなった大型魚(セダカヤッコ、ホクロヤッコ、イエローテールエンゼルフィッシュ)が放流されることも多いのですが、そのようなことは絶対にしてはいけません(後述)。ただしセダカヤッコのうち、ある個体は船のバラスト水にのって日本にやってきたともいわれています。さらに伊豆のダイビングスポットでは、ダイバーがわざわざ日本に生息していないはずのクマノミの仲間であるスパインチークアネモネフィッシュを放流して楽しむように見せていたという事例もあります。アクアリストも、ダイバーも魚を放したりしないようにお願いいたします。

なぜ魚を放流してはいけないのか

外来魚が在来の生物を捕食する

▲オオクチバス

これが一番よく知られている問題です。とくにゲームフィッシュとして持ち込まれたオオクチバスが有名です。このような魚が在来の魚やそのほかの水生生物を捕食してしまうのです。それゆえ最初は神奈川県芦ノ湖に限定的に放流されていたのですが、各地で釣り人が勝手に放流などを行うなどして爆発的に増えていきました。

このほかブルーギル、ハス、チャネルキャットフィッシュなども肉食性が強くて在来生物やザリガニの仲間を捕食してしまいます。一方琵琶湖特産のワタカは魚類をあまり捕食しませんが、各地の河川に放流されて水草を好んで食べ問題視されます。海水魚の世界では広い水域を有し、在来のライバルも多いためこの問題は起こりにくいのですが、それでもブラウントラウト(海に降りるタイプもいる)、ハタ類や中国のタイリクスズキなどは肉食性が強く注意します。とくにこれらは養殖業者がかかわっていることが多く、外国産種苗の取り扱いには注意しなければなりません。

生態系地位(ニッチ)の競合

▲個体数が減少したミナミメダカ

ニッチ(ニッチェとも)は最近は隙間市場などという意味でよく使われていますが、生物学におけるニッチというのは生態系の地位を指します。メダカによく似たカダヤシは昆虫のカの子であるボウフラ対策のために移入されましたが、小さな小川にも適応し、よく似た生態系地位にあったメダカを駆逐してしまいました。メダカは卵生で卵の状態で産み落とされるのに対し、カダヤシは仔魚で産まれるためメダカよりも生存率が高まります。そしてそれゆえメダカにとっては脅威になり、さらに河川工法の変化や田んぼの減少、農薬などもありメダカは減ってしまいました。

遺伝子汚染

鹿児島県の南日本新聞社のニュースサイト「373news」によれば、最近鹿児島県のある地域のミナミメダカを調査したところ、在来の「薩摩型」のほか「東海型」とよばれるグループのものも見つかったということです。薩摩型というのは、もともと薩摩地方にいたタイプであり、もうひとつの東海型というのは、愛知県などでみられるタイプです。東海地方にはまだまだメダカも多くすみ、一部は観賞魚店でも販売されていて、それを誰かが放流したと思われます。

上記のように最近メダカ類は数が減少し、あちこちで移植・放流などが行われていますが、地元にいたメダカと違うメダカを放流した場合は競合して生息地や餌の奪いあいが発生したり、最悪の場合は不稔が発生して、数が少なくなってしまっていたメダカが絶滅してしまう、なんていうことも起こる危険性があります。

病気・ウイルスなどの問題

▲ネズスズメダイの稚魚

ネズスズメダイの成魚。気性が荒く単独飼育中

よく夏から秋の磯採集では、スズメダイの仲間を採集することができます。その中には、イチモンスズメダイ、ミヤコキセンスズメダイ、ネズスズメダイ、ミツボシクロスズメダイなど、カラフルであったり、模様が面白いものもいますが、これらの魚は成長につれて模様が変化し、真っ黒になってしまったり、灰色になってしまいます。色が変化するだけであればまだよいのでしょうが、性格も大きくなるにつれて悪くなり、やがてもてあましてほかの魚を入れられなくなることがあります。同様のことは小型のハタの仲間、タイの仲間、フエダイの仲間などにもいえます。

こういうときに「逃がしてあげた」という人もいますが、決して放流してはいけません。すでにもともと魚を飼育している場合は病気のもとになるウイルス、菌、原生生物、もしくはもっと大きな寄生虫をもっている可能性もあるからです。淡水魚ではアユの冷水病やコイのヘルペスウイルス、海水魚でもイシダイやハタなどでみられるウイルスによる病気VNN症など、放流は病気を媒介することにもつながるおそれがあります。

ただし、採集してほかの魚がいる水槽などにいれず、バケツなどでストックしておいて逃がすのであれば問題ありません。また放流に限らず全く別の場所で採集した魚を同じ水槽に入れる、というのはこのように細菌感染や寄生虫の寄生、病気への罹患などのリスクを伴うことがありますので注意が必要です。できれば水槽へ入れる前にトリートメントしておくのがよいでしょう。トリートメントのときは別水槽を用意してグリーンFゴールド顆粒を規定量の半分以下を使用した薬浴がとられることがあります。もちろんろ過も必要ですが、活性炭などは抜き、殺菌灯も消しておく必要があります。もちろんトリートメントした後で放流してよいというものではありません。

サケやタイなどの放流はいいのか

マダイの幼魚。放流されるマダイのサイズはこれよりももっと小さいものが中心

このように海水魚・淡水魚の放流について問題点を指摘しましたが、現状日本では魚の放流が多く行われています。たとえばサケ・マスの類やアユ、マダイ、ヒラメなどといった魚の放流です。これは親魚を漁獲し、卵を採り孵化させ、その子魚を放流してその魚の数を増やそうという目論見があります。しかしながら、親魚から採卵、孵化させた子魚を親魚と同じ場所かその近辺に放つのであれば問題は少ないように思えますが、別の地域でとれたマダイの親からうまれた子を放流すると問題が出てくる可能性もあります。

マダイにも地域別のグループが存在する

一般的に海の魚は淡水魚ほど遺伝子汚染の問題が騒がれにくい傾向にあるように思います。しかしマダイであっても日本近海のものは6つの系群に分かれるとされており、それぞれ成長サイズや好む水温、回遊の様式なども若干異なっています。そのため、無秩序な放流が行われると、これらの生活様式が崩れてしまい、最悪の場合個体数が減少してしまう可能性もあります。そのため別の場所からマダイを購入して放流しても、効果が得られないこともあり、また系群間の競合により、放流が逆効果になってしまうおそれもあります。

奄美大島でのマダイ放流の問題

奄美諸島特産のホシレンコ

奄美諸島にはタイの仲間が5種ほど生息していますが、その中の一種「ホシレンコ」は奄美諸島の一部にしか生息していないタイの仲間です。ホシレンコはもともと数が少ない種のようで、奄美諸島のスーパーでは、同様に奄美諸島に生息するキビレアカレンコよりもかなり高い値段がつけられていました。

しかし最近は奄美大島でもマダイの放流がなされているようで、同様な場所を好むホシレンコと競合してしまいそうです。ただでさえ数が少なめなホシレンコですが、さらに個体数が減少してしまう可能性もあります。海水魚であっても、たとえ産業上重要な魚であっても、その場所に生息していない(か、めったに出現しない)種の放流は避けなければなりません。琉球列島ではマダイは主な分布域からずれているためかほとんど見られず、そのかわりにホシレンコのほか、タイワンダイなどがそのニッチに入り込んでいるようで、そこにマダイを放流したらそのタイワンダイと競合し、個体数が減少する可能性もあります。

「飼育した個体は最後まで飼う」が生物飼育の基本中の基本

海水魚に限らず、淡水魚、哺乳類、爬虫類から昆虫、植物にいたるまで、生物は一度飼育したら最後まで飼育するのが基本中の基本です。どうしても飼育できないというときは、購入したお店に引き取ってもらうようにしましょう。野や海や川へ生物を放つのは絶対にしてはいけません。もし飼えなくなったのであれば、お店に相談するか、飼いたいという人に譲るようにするとよいでしょう。

魚の放流まとめ

  • 採集したスズメダイを採集した場所に逃がしてしまうアクアリストも多い
  • 外来生物問題は海水の世界でも起きている
  • アクアリストが飼えなくなったもののほかダイバーが放したり養殖種苗の逸出によるものも
  • 遺伝子汚染やニッチの競合は海水魚でも起こる可能性がある
  • 病気や寄生虫、ウイルスなどの問題は海水魚でも実際に発生している
  • マダイなどの種苗放流についても問題が多く発生している
  • どんな生物であっても終生飼育は基本中の基本

2020.09.18 (公開 2020.09.18) 餌・添加剤

キョーリン「マリンプロス レッド」を海水魚に与える

「マリンプロス」は、海水水槽の餌としては大きな「メガバイト」ブランドでお馴染みのキョーリンが製造・販売している餌です(製造は子会社のキョーリンフード)。この餌はメガバイトとは異なり、ペラペラのフレークフードとなります。そのためメガバイトとはまた特徴が若干異なっている餌といえます。今回はこのマリンプロス レッドを飼育している海水魚に実際に与えてみました。

ヒカリ (Hikari) マリンプロスレッド 50g

ヒカリ (Hikari) マリンプロスレッド 50g

644円(12/14 10:44時点)
Amazonの情報を掲載しています

マリンプロス レッドの特徴

マリンプロスはこのサイトでも紹介した「メガバイト」シリーズとは異なり、フレーク状の餌となっています。フレーク状の餌はほかの餌と比べてよく浮かんでいるので、魚が見つけやすいのが特徴です。また、軽くて粒状の餌よりも安いというのもメリットといえます(メガバイトレッドS、Mでは希望価格1,524円なのに対しマリンプロスレッドでは1,250円、いずれも税抜)。

しかし、その一方でペラペラで軽量な分、質量も小さいというのはデメリットといえます。つまりこれだけでは腹を満たしにくい可能性があるということです。また浮いているのでハゼの仲間などはこの餌を食べにくいところがあります。さらにオーバーフローのパイプにつまってしまうことがあるのでオーバーフロー水槽では注意が必要です。なお、マリンプロスのようなフレークフードと、メガバイトのような粒餌の比較は以下でまとめていますので、ごらんください。

マリンプロスの種類

マリンプロスにも「メガバイト」同様2種類があります。「マリンプロスレッド」と「マリンプロスグリーン」です。マリンプロスレッドは「メガバイト レッド」同様雑食性の海水魚(クマノミ、スズメダイ、ベラ、ハナダイ、バスレットなど)に最適で、マリンプロスグリーンのほうは「メガバイト グリーン」のようにニザダイ、アイゴ、ヤッコなど藻類を好んで食う魚に最適といえます。しかしカエルウオの仲間は表層にうくフレークフードを食べにくそうです。そのためカエルウオの仲間は粒状の「メガバイト グリーン」や、「海藻70」のほうが適しています。カエルウオの仲間は海では付着藻類を主に食い、浮かんでいる餌はあまり食べないのです。

大きさ

マリンプロスのサイズ

フレークフードという製品の都合上、粒餌と異なり、どのくらいの大きさかどうかはいいにくいところがあります。写真を参考にしてください。ただし輸送中や、使用中にだんだん擦れて小さくなっていきます。粒餌もやがて容器の下方に粉のようにたまっていきますが、フレークはより小さくなっていきやすいです。

マリンプロス レッドの主な成分

フィッシュミール、オキアミミール、でんぷん類、イカミール、シルクワームミール、海苔、魚油、ビール酵母、小麦粉、乳化剤など

実際に与えてみました

▲マリンプロスを食べるカクレクマノミ

我が家の魚は(飼い主に似て?)餌への反応が非常に早く、すぐに食いつき始めました。スズメダイやクマノミ、ベラといった魚はちぎるように食べ、テンジクダイ類は大きめの口で丸のみという感じ餌に群がります。いずれも表層に突進してこの餌を捕食していました。ただし小型のカエルウオは餌にはよく反応し、食いつこうとするのですが浮いている餌は粒状のものと勝手が違うのか食べにくそうでした。やはりカエルウオ類の餌としては上記の通り、海藻70やメガバイト グリーンなどが適しているでしょう。カエルウオの仲間はノリ系の餌や海藻そのままのフードは食べません。

循環ポンプは停止させたほうがよさそう

▲水槽が波打つとフレークは沈みやすい

今回実際に給餌して思ったことは、「循環ポンプを停止させたほうがよいかもしれない」ということです。これは水槽の海水が波打ってしまうようだとフレークが沈みやすいので、フレークのメリットが生かしにくいです。強力な水流ポンプを使っている場合も同様です。

ただし循環ポンプを停止させるかどうかは、そのポンプが生み出す水流の強さによります。我が家のオーバーフロー水槽は二つあり、魚水槽は水中ポンプ(カミハタのリオ)、サンゴ水槽はマグネットポンプ(レイシー製)を使用しています。サンゴ水槽では常に波がありますので、そのような状況ではフレークが沈んでしまいやすいです(底方のハゼなどにもいきわたりやすいというメリットはあり。ただしそれをするなら粒状の餌を与えたほうがよい)。一方リオのは穏やかな凪で、波も立ちません。このような水槽では長いことフレークが浮いておりゆっくり沈むので、魚に見つけやすいといえます。そしてフレークフードが配管に引っかかってしまうということもある程度防ぐことができるでしょう。ただし、循環ポンプを停止したまま放置していたら温度が下がって魚が死んでしまった、なんてことがないように十分ご注意ください。

マリンプロスまとめ

  • 「メガバイト」でおなじみのキョーリンが作るフレークフード
  • フレークフードは軽く水に浮くため魚が見つけやすくかつ安価
  • その一方で質量が小さく魚の腹を満たさないというデメリットも
  • 「レッド」と「グリーン」の2種類あり。飼育している魚に合わせて選ぼう
  • 大きさは粒餌よりも変わりやすい
  • スズメダイやクマノミなどはちぎるように餌を食う
  • テンジクダイなどは浮いている餌を丸のみにする
  • カエルウオの仲間も反応はよいが食べにくい
  • 循環ポンプはいったん止めてから与えたほうがよいかもしれない
ヒカリ (Hikari) マリンプロスレッド 50g

ヒカリ (Hikari) マリンプロスレッド 50g

644円(12/14 10:44時点)
Amazonの情報を掲載しています

外部リンク

キョーリンによるマリンプロス レッド紹介ページ

2020.09.17 (公開 2020.09.17) 水槽・器具

バクテリア製剤の使用方法~水槽立ち上げ時にバクテリアを連れてくる

水槽の立ち上げにあたって、基本的にいきなり魚を入れてはいけません。立ち上げ初期は水槽にろ過バクテリアが存在していないためです。ろ過バクテリアは海水魚水槽のろ過の要ともいえ、あるていど増殖するまで魚は入れられません。ではこのろ過バクテリアを最初にいれればいいのではないか、という声も聞かれますが、それもひとつの案です。これについては簡単で、市販されているバクテリア製剤を入れればいいのです。

海水水槽におけるバクテリアの役割

水槽で魚が餌を食べて排せつをする、もしくは餌が残ってしまうと、やがてバクテリアに分解されてアンモニアになります。このアンモニアは魚にとっては猛毒でほぼ検出されないようにする必要があります。このバクテリアをバクテリアが亜硝酸に分解してくれます。しかしこの亜硝酸も毒性が強いため、別のバクテリアにより亜硝酸を硝酸にかえてもらう必要があるのです。硝酸になれば毒性は低いですが、それでも蓄積されるとサンゴや無脊椎動物、一部のデリケートな魚にはよくありません。ですから水かえをして水槽から硝酸を排出する必要があります。繰り返しますが、水槽で発生する硝酸・亜硝酸・アンモニアはもとをただせば魚の排せつ物であることが多いです。つまり、サンゴや水質悪化に弱い生物を飼育するならば魚が少ないほうがいい、といわれるワケはここにあるのです。

バクテリアを水槽に持ち込む方法はいくつかあります。ライブロックを入れることやすでにバクテリアが付着されたろ材を使用する方法、天然海水やショップで使用された清浄な飼育水を使用する方法などもありますが、今回は市販されている「バクテリア製剤」を使用して水槽にバクテリアを投入する方法をご紹介します。

バクテリア製剤とは

バクテリア製剤というのは新鮮なバクテリアをガラス管やプラスチック製の容器にパッキングしたものです。バクテリアにもいろいろ種類がありますが、一般的には硝化細菌や反硝化細菌が含まれているとされます。多くはバクテリアだけでなく、バクテリアの餌も一緒に入っていることがあります。バクテリア剤の種類は通性嫌気性バクテリアとされることも多く、密封していて酸素が少ない状態でも繁殖できるようです。

バクテリア製剤の比較は難しい

バクテリア製剤の各商品の比較は難しいことです。なぜならばバクテリアは私たちの目には見えず、メーカーを信じるしかないことと、その効果がなかなか体感しにくいからです。硝酸塩やそのほか栄養塩が少なくなった!という体感はできるものの、それにももともといたバクテリアの量、飼育している魚の量までさまざまな要素がからみますので、一概に「どのバクテリア製剤がよい」と比較することは困難なのです。また、メーカーによってはバクテリア製剤のなかにどのようなバクテリアが入っているか公表していない、もしくは一部しか公表していないことも多いのでそういった意味でも単純に比較はしにくいといえます。

バクテリア剤を使用上の注意

こんなときに使おう

バクテリア製剤を使用するのは一般的には水槽を設置し、海水をはり、ろ過槽を稼働させ、あとは魚を入れるだけ、というときです。このときにバクテリアを入れると早く海水魚を入れることができますが、急に多数の魚を入れるのには不向きです。また、水かえを行うと水中を浮遊しているタイプのバクテリアが取り除かれたりしますので、そのときにバクテリア剤を添加するのもよいでしょう。また、プロテインスキマーも同様にバクテリアを水槽から取り除くことがありますので、強力なスキマーを使用している水槽に添加するというのもアリでしょう。ただし添加してすぐの間はプロテインスキマーは止めておいたほうがよいでしょう。また、水槽に添加するバクテリア製剤は1種類、もしくは1ブランドだけにとどめておいたほうがよいかもしれません。バクテリアの量のバランスが崩れる可能性もあるからです。

使用期限がある

バクテリアも生き物です。そのため使用期間というのもあります。プロディビオなどガラスアンプルの中に入っているものは通常の商品よりも長持ちするかもしれませんが、いずれにせよ、いちど開封したら早めに使い切らなければなりません。基本的に多くのメーカーは開封後1年以内に使用してください、といわれていることと思います。

紫外線殺菌灯は消しておく

紫外線殺菌灯は魚にとって脅威になる病原菌や原生生物などを殺してしまうのですが、殺菌灯に照射された小動物を無差別に殺してしまいます。もちろんバクテリアも殺してしまうのでよくありません。そのためバクテリア製剤を入れた後はしばらくの間(数時間くらい)は殺菌灯は消すようにしておきましょう。

プロテインスキマーとの関係

▲泡の力で水槽から有機物だけでなくバクテリアも取り除いてしまう

プロテインスキマーについては添加時、および添加後数時間は一時停止しておいたほうがよいとされます。消しておいたほうがよい理由はバクテリア製剤を入れてもスキマーにより取り除かれてしまうことがあるからです。もちろん添加して数時間経過した後、スキマーの再稼働を忘れた、なんていうことがないように注意しましょう。

ただし直接バクテリアを入れるのではなく、バクテリアを増やすための炭素源を投入した場合は急激にバクテリアが増殖してしまい、酸欠や水の白濁を招きやすいため、プロテインスキマーは重要といえます。とくにみりんなどは危険です。市販されているレッドシーのNO3PO4-xについても、プロテインスキマーを必要としています。

主なバクテリア製剤の種類

プロディビオ バイオダイジェスト(淡水・海水両用)

フランスのプロディビオが製造販売する商品で、海水・淡水両方使用できるバクテリアです。特徴はバクテリアがガラスアンプル内に封入されており、長期保存に優れている点です。しかしガラス製のため割ったりしないよう、取り扱いには注意が必要になります。ちなみに事務所の海水水槽はライブロックとこのバイオダイジェストを使用して立ち上げました。中身はメーカーサイトによれば硝化バクテリア、反硝化バクテリア、通性細菌とのことです。

バクテリアの水質浄化スピードをあげるには別に販売する添加剤を使用するとよいのですが、この添加剤は海水と淡水に分かれています。海水水槽であればバイオプティム、淡水水槽であればバイオトレースが効果的です。プロディビオの日本での代理店はエムエムシー企画レッドシー事業部です。

プロディビオ バイオダイジェスト 12本入

プロディビオ バイオダイジェスト 12本入

4,025円(12/14 10:42時点)
Amazonの情報を掲載しています

マメデザイン マメバクテリア ニトロマリン(海水用)

マメデザインが輸入・販売しているバクテリアです。ユニークなのはアンモニアを含有していることで、これと自然由来のゼリーで保護することによりバクテリアが長いこと生存できるというわけです。注意点はけっこうきついにおいがするということ(実際にマメデザインのサイトでも「嗅がないでください」との表記あり)と、投入時に若干のアンモニアが検出されることがあるということです(含まれているバクテリアが処理するので問題なしとされる)。きついにおいがいや、という人にはあまりおすすめできないかもしれません。

またマメバクテリアには淡水用と海水用のものがあり、淡水用のものを海水用に添加しないように注意しましょう。含まれているバクテリアの種類はメーカーサイトによるとニトロソモナス属、ニトロバクタ―属のバクテリアとのことです。通性嫌気性バクテリアとのことで、酸素があってもなくても増えていくタイプのようです。

リーフエボリューション ドクターティムシリーズ(海水用)

▲水槽立ち上げ時には「ワン&オンリー」の使用がおすすめ

このシリーズは海水と淡水のものがあり、海水だけでも6種類販売されていますが、用途別に必要なバクテリアを集めたものです。「ワン&オンリー」「ファースト ディフェンス」「ウェイスト アウェイ」「リフレッシュ」「エコ バランス」「クリアー アップ」が日本で販売されており、そのうち「ワン&オンリー」は水槽立ち上げに最適です。ほかの商品は魚の健康維持や濁りなどの除去をうたっていますが、甲殻類などに悪影響を及ぼすようなものもあるので、添加の前には説明書きをよく読んでから添加するようにしましょう。もちろん、これはドクターティムシリーズ以外のバクテリア製剤を使用する時も同様です。

ワン&オンリーの主成分は硝化細菌とのことです。リーフエボリューションシリーズの日本での代理店は「インスタントオーシャン」や「マキシジェット」などと同様にナプコリミテッドジャパンです。なお、ここで紹介したもののほかにも各種メーカーからさまざまなバクテリア製剤が販売されています。ここに紹介していないバクテリア製剤が決して悪いものではないということをご理解いただければと思います。

バクテリア製剤まとめ

  • バクテリア製剤は硝化細菌・反硝化細菌やその餌を封入して販売されたもの
  • 立ち上げた水槽にバクテリアを入れると早く魚を入れることができる
  • ただし急に多くの魚を入れてはいけない
  • バクテリア製剤の導入後は殺菌灯やプロテインスキマーは消しておく
  • 「マメバクテリア」はアンモニアも封入されバクテリアが長持ちするがにおいがきつい
  • 「バイオダイジェスト」はガラス製アンプルに入っていて長持ちするが取り扱い注意
  • 「ドクターティム」シリーズは商品によって入っているバクテリアが異なる
  • バクテリア製剤を購入したら説明書はよく読んでおきたい
プロディビオ バイオダイジェスト 12本入

プロディビオ バイオダイジェスト 12本入

4,025円(12/14 10:42時点)
Amazonの情報を掲載しています

2020.09.15 (公開 2020.09.14) メンテナンス

水槽ガラス面のコケ取り用クリーナー・掃除用品のおすすめ3選

アクアリウムというのは基本的に「見て楽しむ」ものです。観賞のため、そしてサンゴやマリンプランツなどの育成には「照明」というものが欠かせません。これらの生物は光合成によって、もしくは光合成をおこなう褐虫藻を共生させ、それによりエネルギーを得ているからです。

しかしながら、それは同時にコケもエネルギーを得るということになり、美観を損ねることになりかねません。そのため定期的にガラス面や壁面についたコケをそぎ落とす必要があるのです。今回は水槽のガラス面のコケとりに最適なアイテムを3種類ご紹介します。

コケの種類にあわせて道具を選ぶ

▲水槽のガラス面に生えた緑色の点のようなコケ。硬く水槽から取り除きにくい

海水水槽で海水魚を観賞したり、サンゴを育成するのには「光」が欠かせません。海藻、海草といったマリンプランツはもちろん、サンゴやイソギンチャク、シャコガイのといった生物の飼育にも光が欠かせません。これらの生物は褐虫藻という藻類を共生させ、その光合成で生きていくためのエネルギーを得ていると考えられるからです。しかしながら、これらの生き物だけでなく水槽内をおおうコケも光をエネルギーとしており、そのコケが大量発生したらせっかくの魚も見えにくくなり、美観を損ねてしまいます。そのため適度に水槽のコケを取り除いてあげる必要があるのです。

海水水槽で発生するコケはいくつもの種類があり、ガラス面や壁面に発生するコケだけでも、薄い茶ゴケや、写真のようなしっかりとはえる緑色のコケ、さらに紫色のシアノバクテリア、高KHやカルシウムを維持すると出てくる石灰藻など、分類も特性も硬さもさまざまです。そのためコケを取り除く道具もそれぞれのコケにあったものを選ばなければなりません。今回はコケを除去するための道具をご紹介します。

ケント「プロスクレイパー2」

▲先端部だけでも掃除はできる

アメリカのケントマリンが販売しているスクレイパーです。基本的には持ち手とその先端部(3種類)からなりますが、先端部だけで使うこともできます。3種の先端部の中で筆者がよく使用するのは黄色のステンレスブレードで、薄い茶ゴケだけでなく、頑固な緑色でやや硬いコケや、石灰藻などもよく落としてくれます。

ステンレスブレードはがしがし削ることができてコケもきれいにそぎ落とすことができますが、アクリル水槽では使用してはいけません。アクリル水槽は乱暴に掃除すると傷だらけになってしまうからです。筆者がガラス水槽をおすすめする理由のひとつは、水槽のガラス面につくコケを多少乱暴にそぎ落としても傷つくことが少ないことにあります(とくに初心者アクアリストでは乱暴にしがち)。なお、このプロスクレイパーの先端部は単品で市販されており、購入することもできます。日本でのケントブランド代理店は株式会社マーフィードであり、同社の「エコペーハー」や浄水器、ブライトウェル社の添加剤を扱っているところで購入できます。そのため、入手できる店舗が多いのも特徴です。

長さは3種類

「プロスクレイパー2」シリーズは長さ別に3種類あります。長さ13.5cmの「ショート」、30.0cmの「ミドル」、そして61cmの「ディープ」の3タイプです。一般的な60cm水槽であれば30cmの「ミドル」で十分でしょう。

TLF「マグネットクリーナー ナノマグ」

▲黒い円形のものが「ナノマグ」

フロリダ州マイアミにあるトゥーリトルフィッシィーズ社(TLF)の商品です。ナノマグは水槽のガラス面に二つのマグネットを挟んで使うアイテムで、外面には円形の磁石、水槽の内面には平らでざらざらした磁石がついており、このざらざらした部分がブラシのようにコケを落とします。なお、このナノマグには姉妹品として「マグフォックス」という商品があります。マグフォックスはブラシが入らないような細いホースの中についたコケなどを除去できるすぐれものです。ただし茶ゴケはよくとれるのですが、緑色の頑固なコケはうまく落とせませんでした。茶ゴケメインとして考えれば最もおすすめできる商品です。アクリル水槽にも使用できるようです(自己責任で)。また磁石が弱くなったと感じたら、補修用品も購入することができます。

TLF社の日本での代理店は有限会社ブルーハーバーです。扱っていないお店もあるのですが、アクアリウム専門店の通販で購入できます。またブルーハーバーは小売りもしていますので、直接問い合わせても購入することができます。なお、TLF社はほかにも各種添加剤や餌、フィーダー、接着剤、リアクター、リバイブなどの製品から、書籍まで幅広くラインナップしています。

マグネットクリーナー ナノマグ

マグネットクリーナー ナノマグ

3,025円(12/14 11:52時点)
Amazonの情報を掲載しています

フレックス スクレイパー

フレックススクレイパーはガラス水槽だけでなく、アクリル水槽でも使うことができる掃除用のアイテムです。例えば「プロスクレイパー」は先述したようにアクリル水槽では水槽を傷つけてしまうおそれがあるので使えませんが、このフレックス スクレイパーはアクリル水槽でも使用しやすいので、アクリル水槽で海水魚を飼育するのであれば必需品となるアイテムといえるでしょう。欠点としては、掃除のときに手を水槽内に突っ込まなければならないところがあげられます。メーカーは淡水のアクアリストにとっては麦飯石溶液などでお馴染みの株式会社フレックスです。

これらの製品は日本国内の海水魚店で多く取り扱いがなされているものであり、ここに掲載されていないものが悪いというわけではありません。ただし商品によってはスクレイパーの部分がさびやすいので、使用後は真水で洗浄するなど、しっかりと手入れをしておきたいものです。

フレックス スクレイパー

フレックス スクレイパー

660円(12/14 11:52時点)
Amazonの情報を掲載しています

海水水槽おすすめクリーナーまとめ

  • 海水魚・サンゴ水槽では照明によりコケがはえやすいのでこまめなコケ掃除をしたい
  • ケントの「プロスクレイパー2」は先端を変更することで様々な水槽に対応できる
  • TLFの「ナノマグ」はフタさえ開けずに水槽掃除が可能
  • フレックスの「フレックススクレイパー」はアクリル水槽のコケ取りに最適
マグネットクリーナー ナノマグ

マグネットクリーナー ナノマグ

3,025円(12/14 11:52時点)
Amazonの情報を掲載しています
フレックス スクレイパー

フレックス スクレイパー

660円(12/14 11:52時点)
Amazonの情報を掲載しています

2020.09.15 (公開 2020.09.10) 海水魚図鑑

名前に「タイ」がつくけどタイの仲間ではない魚たち

我が家ではロクセンスズメダイクロオビスズメダイフチドリハナダイイトヒキテンジクダイなど様々な魚を飼育しています。

実は日本産魚類のうち、種の標準和名に「~ダイ」(タイの意味)とつくものはたくさんおりますが(423種)、そのうちタイ科に含まれるのは9種類だけです。今回は日本に分布し「~ダイ」という名前がついていてもタイ科ではない魚と、タイの仲間について解説します。

「~ダイ」と名前についていてもタイ科ではない魚

▲キンメダイはタイの仲間ではない。「目」のカテゴリから異なる

日本産魚種で、和名に「タイ」を意味する「~ダイ」という名前がついている魚は423種います。基本的に体がよく側扁していて、細長くなく、やや体高の高い種には「タイ」の名前がつくことが多いように思います。おもにスズキ目・スズキ亜目の魚にこの名前がつくことが多いのですが、イボダイ亜目のイボダイやメダイ、カサゴ亜目のアコウダイ、ベラ亜目のコブダイやキツネダイ、ブダイなどにも「~ダイ」とついているものがいます。中にはマトウダイ(マトウダイ目)、キンメダイ、エビスダイ(ともにキンメダイ目)のように、上位階級の「目」の時点でタイの仲間が含まれるスズキ目と異なっている種がいます。

アクアリウムでお馴染みの魚

▲イトヒキテンジクダイ

「~ダイ」という名前がついている魚でアクアリウムの世界でお馴染みなのは、スズメダイの仲間です。遊泳性の強いスズメダイ属の魚を飼育しているとわかるように、水槽の中を燕ほどとはいいませんが、俊敏に泳ぎ回ります。このほかにも冒頭でご紹介しましたイトヒキテンジクダイなどのテンジクダイ類、キンギョハナダイなどのハナダイ類、飼育は難しいのですがチョウチョウウオ科のハタタテダイ、トノサマダイなどもお馴染みでしょう。このほか、イロブダイ、オキナワサンゴアマダイ、ヒメフエダイ、コロダイなどもマイナーですが観賞魚店でみることがあります。しかし、これらの魚はタイの仲間ではありません。本当に「タイの仲間」といえるのはタイ科の魚だけといえるでしょう

タイの仲間の特徴

タイ科の魚は種類が多いのですが、おおむね10~13棘、10~15軟条、(少なくとも日本産の種類は)前鰓蓋骨より前方に鱗があるが涙骨上は鱗に覆われない、などの特徴を有しています。

タイ科とひとくちにいってもいくつかの亜科に分けられています。主に歯の形状から日本産種は3つの亜科に分けられていますが。ヘダイ亜科はクロダイ属とヘダイ属を含み、3列以上の臼歯をもち、体色は赤くなく灰色から銀色っぽいです。マダイ亜科はマダイとタイワンダイ、チダイ属からなり、赤い体と2列の臼歯をもちます。キダイ亜科はホシレンコ、キダイ、キビレアカレンコの3種からなり、1列の円錐状歯をもちますが、歯というのは食性に応じて変化していくものであり、あまり亜科を分ける目安にならないかもしれません。

日本には14種のタイ科魚類が分布しており、海水魚の種類が非常に多い東南アジア近海ですがタイ科は15種ほどしか知られていません。5000種もの魚が生息しているとされるオーストラリアでも9種または10種と少ないです。一方で南アフリカでは47種類、地中海では30種以上が見られ、このあたりがタイ科の「本場」といえるでしょう。なお。アメリカの東岸でも20種前後はいますが、アメリカ西岸では数が極端に少なくわずか3種のみが知られます。

日本に生息するタイ科の魚14種

ヘダイ / Rhabdosargus sarba (Forsskål, 1775)

北海道以南の日本海岸、宮城県以南の太平洋岸、琉球列島。沿岸から内湾、汽水域。

クロダイ / Acanthopagrus schlegelii (Bleeker, 1854)

琉球列島や小笠原諸島を除く各地の海、汽水域でごく普通にみられる。

キチヌ / Acanthopagrus latus (Houttuyn, 1782)

岩手県、千葉県以南の太平洋岸、兵庫県以南の日本海岸、東シナ海、小笠原諸島(琉球列島にはいない)。内湾から汽水域に多い。

ミナミクロダイ / Acanthopagrus sivicolus Akazaki, 1962

屋久島と琉球列島。内湾や汽水域に入る。沖縄ではクロダイにかわり本種が分布するようである。

オキナワキチヌ / Acanthopagrus chinshira Kume and Yoshino, 2008

沖縄島と石垣島近海。内湾域。数はやや少ない。

ナンヨウチヌ / Acanthopagrus pacificus Iwatsuki, Kume and Yoshino, 2010

久米島と八重山諸島。内湾や汽水域に住み、マングローブ域などにもいる。

イワツキクロダイ / Acanthopagrus taiwanensis Iwatsuki and Carpenter, 2006

台湾に分布するとされたが日本でも鹿児島県笠沙の定置網で漁獲された。

マダイ / Pagrus major (Temminck and Schlegel, 1843)

ほぼ日本各地。奄美諸島以南では少ない。水深200m以浅の海にすみ、養殖も盛ん。

タイワンダイ / Argyrops bleekeri Oshima, 1927

土佐湾、奄美大島以南。やや深場に生息する。

チダイ / Evynnis tumifrons (Temminck and Schlegel, 1843)

北海道南部~九州までの各地。大陸棚のやや深場に生息しているが浅場の定置網でも獲れることがある。
※釣り人が「ハナダイ」といった場合チダイを指すことが多い。

ヒレコダイ / Evynnis cardinalis (Lacepède, 1802)

南日本の太平洋岸、山口県にもいるが少なく東シナ海に多い。大陸棚の深場にすみ底曳網で漁獲される。

キダイ / Dentex hypselosomus Bleeker, 1854

青森県~屋久島、東シナ海。大陸棚縁辺の深場にすみ釣りや底曳網で漁獲される。

キビレアカレンコ / Dentex abei Iwatsuki, Akazaki and Taniguchi, 2007

小笠原諸島、奄美大島、喜界島、沖縄島、伊平屋島。水深50~150mの岩礁に住み釣りで漁獲される。

ホシレンコ / Amamiichthys matsubarai (Akazaki, 1962)

奄美諸島特産種。200m以浅の海底にすみ釣りにより漁獲される。

「~ダイ」と名前についていないタイ科の魚

ホシレンコ

タイ科の魚は日本に14種が知られていますが、そのうち5種類については「~ダイ」という名前がついておりません。キチヌ、オキナワキチヌ、ナンヨウチヌ、キビレアカレンコ、ホシレンコです。

これらの種のうち、キチヌ、ナンヨウチヌ、オキナワキチヌの3種は「チヌ」という名前がついていますが、これはクロダイの別名の「チヌ」によるものです。チヌという名の由来は大阪湾の別名「茅渟の海」から。キビレアカレンコ、ホシレンコの2種類はキダイ(別名レンコダイ)と同じDenticinaeに属するからと思われます。ホシレンコは従来学名はCheimerius matsubaraiとされていましたが、近年は属名が変更されAmamiichthys matsubaraiとなっています。その属の学名(奄美の魚の意)の通り奄美諸島にしかいない固有種で、ただでさえ少ないのに同じような環境を好むマダイの種苗放流が近年、奄美大島でも行われているようで、マダイと競合して個体数を減らすおそれがあります。放流についてもうちょっとよく考えてほしいものです。

タイ科魚類とアクアリウム

▲マダイの若魚

海水魚店ではタイ科の魚はめったに見られません。ごくまれに近海魚に強いお店でキダイやチダイなどが販売されていることがありますが、これらはやや深い海に生息し減圧症が出ていることもあるため衝動買いせず、じっくり個体を見て決めたほうがよいでしょう。また高水温も禁物で、一般的なサンゴとは一緒に飼育できません。

採集してもよいのですが、マダイの場合種苗放流もされるなど産業上重要種で、サイズにより放流しなければならないこともあります。またキチヌやクロダイは大きくなると結構気が強くなり、混泳水槽の住人としてはあまり適していないところもあります。しかしながら稚魚や幼魚に限ってはスレ傷や水質悪化に弱いところがあります。幼魚から成魚まで、いずれも餌食いは抜群によく、配合飼料もよく食べてくれます。

海外のタイ科魚類

世界には様々なタイ科の魚が知られ、ゼブラやデーン、ダブルバーブリームなど美しい種も知られています。これらが入ってくれば少しは人気が出てくるかもしれません。しかしこれらの種は南アフリカや中東に分布し、一般的な観賞魚ルートではまず入ってこない希少な魚といえます。またダブルバーブリームはクロダイ属ですので結構気性が荒い可能性もあり、それなりに大きくなるのでもてあます可能性もあります。日本では水族館での飼育実績がありますが、大きな水槽でなければほかの魚との混泳は難しいかもしれません。

タイと名前のつく魚まとめ

  • 海水魚飼育の世界では「~ダイ」という名前で呼ばれる魚が多い
  • 「~ダイ」と名前の付く魚は423種もいるがタイ科の魚は14種しかいない
  • 温帯や深場のものも多くサンゴと飼いにくい種も
  • クロダイやキチヌなどは混泳水槽には不適切な種も
  • タイ科は丈夫で買いやすいものが多いが性格には要注意
  • タイ科は大きく育つものが多いため大型水槽が必要になる

2020.09.08 (公開 2020.09.08) 水槽・器具

海水水槽に適した置き場所を考える~直射日光の当たる場所や電源の近くは注意!

海水水槽はどこへでも自由に置けるというわけではありません。たとえば直射日光が当たる場所はまぶしいですし、カラーボックスの上に水槽を置くとカラーボックスが水槽につぶされることもあります。さらにコンセントなど海水がかかるとまずいところも避けます。また、夜間寝る寝室にオーバーフロー水槽を置くと非常にうるさい音がします。置き場所をしっかり考えて魚やサンゴ、そして人間にも、ストレスフリーな環境で飼育するようにしましょう。

海水水槽の置く部屋を考えよう

まず海水水槽をどの部屋へ置くか考えてみましょう。水槽を置く部屋の条件としてはこのほかに「水道が近くにあり水かえがしやすいこと」や、後述するように「床がしっかりしていること」などもあげられます。

玄関

▲玄関に置いていた90cm水槽の住人たち

玄関は来客の方に水槽を見てもらえる場所です(私も以前マンションに住んでいたときは玄関に海水魚水槽を置いていたことがありました)。そのため実際に玄関に水槽を置くアクアリストも多いのですが、玄関は電源がとりにくいことがあります。またドアに近いところでは水温の差も激しいことがあり、注意が必要です。玄関入って奥に水槽台を設置しその上に水槽を置くのであれば問題ないのですが、玄関の上に備え付けられている下駄箱などの上に水槽を置くとつぶれてしまうことがありますので置いてはいけません。小型水槽でもかなりの重さになり、塩だれが発生して周囲の金属部品がさびてしまうこともあります。

リビング

▲リビングに置いているサンゴ水槽

もっとも海水魚水槽が置かれることが多いのはこのリビングでしょう。サンゴ水槽をリビングにおいておけば、家族みんなが部屋で団らんしながらサンゴの海を見て楽しむことができます。ただしリビングであればどこへでも水槽を置けるというわけではありません。電源の位置に注意し、ドアのそばや直射日光が当たるような出窓などは避けたほうが無難でしょう。またオーディオ機器などのそばもNGです。

寝室

寝室は寝るための場所ですが、寝る前に魚の姿を見るといやされます。ただしろ過槽のシステムによってはうるさく、睡眠どころではない場合もあるので注意が必要です。たとえばオーバーフロー水槽はばしゃばしゃとうるさいことがあります。外部ろ過槽は静かではありますが、密閉式のろ過槽ですので、酸欠になって魚が死ぬことがある、というデメリットもありますので、プロテインスキマーや小型の外掛けろ過槽なども使う必要があります。

水槽を置くときの注意

直射日光が当たる場所は避ける

直射日光が当たる場所は魚にとっても朝日がまぶしくてストレスを感じたり、水温が急変しやすかったり、コケが生えやすくなったりと、デメリットが大きいといえます。海の中では日光は海の上だけをてらしますが、水槽での海水魚飼育では水槽のガラス面も照らしてしまうのです。またアクリル水槽はとくに直射日光に弱いともされ、紫外線によりヒビのようなものができることもあるといいます。出窓に海水魚水槽を置きたくなるのですが、このようなデメリットもあるので避けたほうが無難といえます。

畳の上や電子機器のそばも避ける

▲電源の位置が重要だが近すぎるのも要注意!

水槽を循環させたり、水温をキープしたり、サンゴに光を供給したりするのには電源が欠かせません。そのため水槽は電源の近くに置くことが大事なのですが、近すぎるのも危険といえます。これは水がはねたりして電源にかかってしまうようなことがあればショートする危険性があるからです。とくに最近は地震も多く、地震ではねた水がコンセントにかかった…なんていうことも起こる可能性があります。

写真のような位置では水がかかりやすくて危ないかもしれません。後ろを板などでカバーするなどの工夫が必要でしょう。

専用キャビネットの上に置いておこう

▲90cm水槽用のキャビネット

水槽は水を入れると非常に重くなります。カラーボックスなどに水槽を置くとカラーボックスがつぶれてしまい、あたりが水浸しになり、最悪魚が死んでしまうこともあります。そのため専用のキャビネットの上に水槽を置くようにしましょう。とくに大型水槽を購入するのであれば、専用の水槽台がついているものを購入するのが一番安全です。既製品の60cmフレーム付きガラス水槽などであれば、各メーカーから出ている金属製の台の上に乗せるという手もありますが、海水だと錆びやすいので、こまめに拭き掃除をしたいものです。ちなみに筆者はニッソーのスチールキャビネットや自家製の水槽台なども使用していました。

ドアの近くは危ないかも

ドアのすぐそばもやめたほうが無難です。これはドアの開閉で魚がびっくりしてしまうことがあるためです。また、先ほども述べたように、ドアの周辺も水温の変動が大きくなることがあるため、海水魚飼育にはあまり適していないところがあります。

水槽の重さによっては補強がいる

コーラルタウンの小沼さんに補強していただいた床下。大引を支えるジャッキのようなものが「床束」

オーバーフロー水槽を木造一軒家に設置するときに、床の補強を行ったほうがよいケースもあります。たとえば水槽を置きたい場所の下に、床の重みをささえる柱などが何もないようなケースです。我が家では大型の90cmオーバーフロー水槽を2つ置いていますが、もともとは水槽の下には何もない状態でした。そのため、ふたつめのオーバーフロー水槽を設置する前に床下の大引(木造床下の最下層にある水平材)に床束を用いた補強を施しています。

水槽置き場所まとめ

  • 海水水槽の置き場所はしっかり考える必要がある
  • 玄関は多くの人に魚を見てもらえるが水温の変動に注意したい
  • 寝室に置く場合は落下音などにも気を付ける必要がある
  • リビングに置く場合も直射日光や電源コンセントの位置に注意
  • 水槽は専用のキャビネットの上に置いておきたい
  • 水槽の大きさによっては補強が必要なケースも

2020.12.04 (公開 2020.09.07) 水槽・器具

海水魚ラボの水槽環境・器具類をご紹介します!

我が家ではサンゴ水槽や海水魚水槽など、海水水槽を何個か所有していますが、今回はTwitterなどでのリクエストもありまして、マリンアクアリウムを楽しむために使用している水槽や機材をご紹介していきます。

サンゴ水槽

飼育生体

【魚】
カクレクマノミ、イトヒキテンジクダイ、ハナゴンベ、ロイヤルグランマ、シマギンポ、クモギンポ、クロヤハズハゼ、ヒメユリハゼなど

【サンゴ】
カタトサカの仲間、ウミキノコ、バラウネタケ、被覆状シコロサンゴ、カビラタバサンゴ、オオタバサンゴ、アザミサンゴ、ウミバラ、マメスナギンチャク、キクメイシ、リュウキュウキッカサンゴ、シコロサンゴ、ウスコモンサンゴ、ハマサンゴ、オオバナサンゴ(ヒユサンゴ)、ヤッコアミメサンゴ、コンフサ、コモンサンゴ(種不明)、ヒメオオトゲキクメイシ、マルハナガタサンゴ

【その他】
マダラヨコバサミ、各種サンゴヤドカリ、ベニワモンヤドカリ、コケ取り貝各種、アワビ、クビレズタ(ウミブドウ)

水槽

水槽はアクアマリンプロの中古ガラス製水槽を使用しています。幅90cm、高さ45cmですが奥行き60cmあり、奥行き感が出せる水槽になっっています。枻出版社の「コーラルフィッシュ」を愛読されていたなら、編集長のタクタ氏の「水槽日記」に登場した水槽と同じサイズといえばわかりやすいでしょう。三重管の一般的なオーバーフロー水槽です。

amp(アクアマリンプロ)の水槽はブラックシリコン、クリアなガラス、エンブレムなど、非常によい水槽に見えます(実際によいガラス水槽です)が、これは残念ながら水槽上法にフランジがついておらず、やや塩だれが気になってしまうところがあり、そこは中古商品を購入して失敗したところです。またフタも載せることはできません。そのため上に専用のキャノピー(これも付属していた)を使用していますが、若干海水がはねて塩だれがでやすいところがあります。

水槽台(キャビネット)

水槽台も水槽を購入したときに付属してきたものです。購入したお店(コーラルタウン:茨城県土浦市)のオリジナル品です。魚水槽のキャビネットとの違いは観音開きとなっており、開閉がしやすいのが特徴です。配線はキャビネットの後方にある穴から延長コードをキャビネット内に入れて行っています。

サンプ

サンプは水槽に付属していたアクリル製のサンプを使用しています。サンプ内にはろ過槽がなく、サンプの上にウールマットを敷くウールボックスがあるのみです。これで大きなゴミをこしとります。左上には自動給水システム用のフロートがありますが、これは現在使用していません。奥に見えるプロテインスキマーは後述します。

ろ過槽

2020年8月現在、ろ過槽はウールマットしか使用していません。従来はバイオペレットを使用していましたが、ポンプの故障を機に、バイオペレットの使用はやめました。バイオペレットは量の調整が難しく、ペレットのカスがスキマーでは取り切れなかったのか、若干水槽にも入ってしまい、パイプなどを汚してしまいました。今後はバイオペレットは使用しないかもしれませんが、NO3;PO4-Xは使用してみたいと考えています。

循環ポンプ

レイシーのRMD-551を使用しています。マグネットポンプの一種で、流量が毎分60リットルにもなります。水中ポンプと異なり長期メンテナンスフリーでパワーがすごいのですが、水槽に穴をあけなければならないという大きなデメリットが存在します。そのため設置はお店の人にやってもらうのがベストといえます。我が家もコーラルタウンに設置をお願いしましたので水漏れも一切なくばっちりです。

レイシー マグネットポンプ RMD-551

レイシー マグネットポンプ RMD-551

36,700円(12/14 01:00時点)
Amazonの情報を掲載しています

クーラー

クーラーはゼンスイのZC-500を使用しています。

これでも十分冷えているのですが、水槽の温度が上がりやすい殺菌灯を使用してることを考えますと、もう1ランク上のものがよいかもしれません。そうだとすれば現行の商品群ではZC-700αがよいでしょう。また、冷やすことができる水量は周囲の気温にも左右されるため、室内クーラーも日中はかけています。またキャビネット内にクーラーを置くとキャビネット内部の温度があがってしまい冷却効率が下がるので、クーラーをキャビネットの外においておきます。作動音はうるさいですが、大事な魚を守るために水温をキープすることが重要なのです。

ゼンスイ 小型循環式クーラー ZC-500α

ゼンスイ 小型循環式クーラー ZC-500α

129,899円(12/14 01:00時点)
Amazonの情報を掲載しています
ゼンスイ 小型循環式クーラー ZC-700α

ゼンスイ 小型循環式クーラー ZC-700α

156,799円(12/14 01:00時点)
Amazonの情報を掲載しています

ヒーターとサーモスタット

ヒーターはサーモスタットと一体になっているよりも、分離式のものがおすすめです。そうすればヒーター部分が壊れてもヒーターの部分だけを交換すればいいので楽です。

筆者はコトブキ製のET-300 xを使用しています。同様にヒーターもコトブキ製のセーフティヒーターSP300wを使用していますが、ちょっと小さいかもしれません。冬が来る前にヒーターは二つ用意してもよいくらいです。安全規格を示すマークはSPマーク(統一標準規格SP)です。

プロテインスキマー

プロテインスキマーはH&S社のHS-850を使用しています。最近では音の問題や省エネの観点からDCポンプを使用したハーフコーンスキマーが人気ですが、DCポンプはどうしても耐久性に劣ってしまうという特徴があり、我が家では比較的安価で安定して稼働するACポンプ使用のHS-850を愛用しているのです。古い機種ですが意外とハイパワー、扱いやすく長いこと使用されています。HS-850は古い機種であってもハイパワーですので、90cmベルリン水槽では最適といえそうです。HS-850については以下でも解説しておりますので、ぜひご覧ください。

殺菌灯

殺菌灯はライフガードのQL-15を使用しています。チョウチョウウオなどがいるわけではないので、これでも十分かなと考えています。ヤッコなどを購入するのであれば、もう1ランクくらい上のものが必要になります。また、殺菌灯は点灯すると熱を出しますので、クーラーもより大きなものが必要になります。なお、この水槽では殺菌灯とクーラーは循環ポンプ(レイシーRMD-551)を使用して動かしています。

照明

照明はLED照明のケシル、およびT5蛍光灯(オプティマス・ハイブリッド、エムエムシー企画)をメインに使用しています。T5の蛍光灯は従来は入手が容易ではあったものの、最近は作っているメーカーも少なく、入手しにくくなってしまいました。照明は今なおT5を作っているDDのものです。DDも国内取扱店はエムエムシー企画ですので、オプティマスとの親和性も高いといえます。なお、オプティマス・ハイブリッドはその名の通りT5とLEDの両方がついていますが、LEDの部分が故障しています。

水流用ポンプ

使用しているレイシーのマグネットポンプは非常に強い水流を生み出しており、その強い水流が全体的にいきわたるため、ポンプはマグネットポンプからの吐出口からの水流と反対の方向への水流ができるように、ハイドールのコラリアナノを使用して水流をつくります。特に我が家の水槽ではコモンサンゴやシコロサンゴといった複雑な形状のサンゴが多いため、隙間にゴミがたまりやすく、複雑な流れが必要になります。

カルシウムリアクター

カルシウムリアクターはかたい骨格をもつサンゴ、とくにミドリイシにとっては非常に有効なものなのですが、我が家では現在装備していません。カルシウムやマグネシウム、KHなどは計測しながら添加剤を使用して供給、定期的な水かえでイオンバランスをリセットするという考えです。

そのほかの備品

水槽の水温計はテトラのデジタル式を使用、フタは水槽に付随していたアクリル製のフタを使用します。また水槽の直接の備品ではありませんが、水槽の下はジャッキにより補強がなされています。

テトラ (Tetra) デジタル水温計 ブラック BD-1

テトラ (Tetra) デジタル水温計 ブラック BD-1

900円(12/14 01:00時点)
Amazonの情報を掲載しています

メンテナンス

添加剤はアキュリの添加剤が切れたのでブライトウェルの添加剤に統一しています。もちろん、水かえも定期的に(週1回)行い、水質の維持につとめています。魚の餌はメガバイトシリーズをメインに配合飼料各種、たまにコペポーダホワイトシュリンプを少量与えます。この少量というのが重要で、多すぎると水質の悪化につながってしまいます。

ブライトウェル リキッドリーフ 250ml

ブライトウェル リキッドリーフ 250ml

3,600円(12/13 21:58時点)
Amazonの情報を掲載しています

海水魚水槽(魚のみの水槽)

飼育生体

【魚】
クマノミのペア、ヤノリボンスズメダイのペア、イエローリップダムゼル、ブラックバンデッドデムワーゼル、ワニグチボラ、セグロマツカサ、ヒメアイゴ、カエルウオなど

【甲殻類】
ケブカガニ、ベニワモンヤドカリ、クリイロサンゴヤドカリ

水槽

水槽は90×45×48cmほどで、やや高さのあるオーバーフロー水槽を使用しています。

サンゴ水槽との違いは三重管ではなくコーナーカバー式を採用していることです。メリットは観賞の邪魔になることのある管を使用しないこと、大型魚がパイプにぶつかって壊すことがないなどが挙げられますが、水槽の遊泳スペースがどうしても限られてしまうというデメリットがあげます。海水魚でも大型ヤッコやハタなどは結構力が強いことがあるので、コーナーの存在はメリットといえます。背景はデフォルトのまま、黒い化粧板を使用しています。ただし後方に若干の傷がついてしまったので、内側からライブロックやサンゴ岩を若干高めに組み合わせ、隠してみようか、とも考えています。

水槽台(キャビネット)

コーラルタウンオリジナルの90cm水槽用キャビネットを使用しています。カバーをかぶせて器具が見えないようにすることができますが、夏はクーラーの冷却効率を上げるため、来客時でないときは開けっ放しにしています。これのよいところは木製で美しいところ、下部全体が「受け皿式」になっており、水を万が一こぼしても安心といえます。逆によくないところはしっかりはめにくいところがあるということです。

サンプとろ過槽

サンプはコトブキ製の60cm水槽(プログレ)を使用しています。従来から海水魚を飼育しているときに使っていたものです。これにホームセンターで購入したバスケットなどを使用してろ材を入れています。後述するプロテインスキマーなどやメインポンプのリオ、クーラー用の循環ポンプ、ヒーターもサンプ内に入れているので、かなりキツキツになってしまっています。

メイン循環ポンプ

メインで使用している循環ポンプはカミハタの「リオ」です。リオは水中ポンプであり、マグネットポンプよりもだいぶ静かですが、パワーはマグネットポンプよりも劣ります。定期的なメンテナンスは必須ですが、最近はやっているDCポンプに比べれば信頼性は高いといえます。ただ個人的にはこのポンプは小さいと感じており、近日中に別の水中ポンプに変えるかもしれません。

クーラー

ジェックスのクールウェイ110を使用しています。クールウェイは60cm水槽や90cm単体水槽で使っていましたが、90cmオーバーフロー水槽でもそこそこのパフォーマンスを見せてくれています。ただし、クーラーのパフォーマンスを上げるのに、キャビネットのフタをあけ、日中は周囲の冷却も行うために室内クーラーも使っています。

ヒーター

ニッソー製のサーモスタットを使用しています。これにヒーターを組み合わせて冬季でも22~23℃を確実にキープします。

クーラー用循環ポンプ

クーラー用のポンプはリオにつながないで単体で回しています。これはリオのパワーはどうしてもマグネットポンプに比べて劣ってしまうためです。そのため我が家ではクーラーの循環にマキシジェットを単体で使用しています。

プロテインスキマー

海水魚水槽でもプロテインスキマーを使用しています。サンゴ水槽と同じくHS-850 を使用しています。よく海水魚水槽ではプロテインスキマーは不要とか、使用しても意味がないという方も多いのですが、ろ過できなかった汚れを取り除いてくれたり、酸素を発生させてくれるなどメリットが多いです。また、NO3PO4‐Xなど、液体の炭素源を導入する場合は、魚メインの水槽であってもプロテインスキマーを使用する必要があります。

照明

照明は海水魚水槽でも蛍光灯を使用しています。LEDのようにギラギラした光ではなく、より優しい光を魚に提供してくれます。灯具の部分は水草レイアウトで有名なアクアデザインアマノ製の中古で、蛍光灯は白1本、青灯(スドーのカリビアンブルー)を1本使用しています。問題はLEDよりも熱を持ちやすいということです。そのためクーラーの大きさには余裕をもったほうがよいでしょう。

水流用ポンプ

水流用ポンプはネワの旧型ポンプを使用しています。後ろはマグネットで接続する方式ではなく、吸盤式でしたので吸盤を外し、作ってもらった専用のホルダーを使用して水槽に引っ掛けて使っています。ただし、魚が多い水槽では底の方の水流が弱いとデトリタスがたまりやすいため、下方にもうひとつ水中ポンプが欲しいところです。この用途であればコラリアナノあたりで間に合います。

メンテナンス

こちらも定期的な水かえを行いますが、底のほうに水流がうまくいっていないからなのか、単に魚が多すぎなのか、デトリタスがたまるようになってきており、ホースを使用して定期的に海水ごとデトリタスを抜いて、新しい海水を足してあげます。餌は普通に配合飼料を中心に与えているのですが、魚の数が多いためやや水質が落ちやすくなっています。そのためやや多めに水をかえてあげるとよさそうです。

水槽まとめ

我が家の水槽はここに挙げた通りです。どちらも生物の数がかなり多めではありますが、これは魚水槽ではほどほどのサイズのろ過槽+大容量のスキマーの設置+丈夫な海水魚を飼育しており、サンゴ水槽では大型のスキマーの設置、そしてこまめな水かえによって成り立っているものです。この部分も理解していただかないと、マネしてもうまくいかないように思います。

ご紹介した製品

レイシー マグネットポンプ RMD-551

レイシー マグネットポンプ RMD-551

36,700円(12/14 01:00時点)
Amazonの情報を掲載しています
ゼンスイ 小型循環式クーラー ZC-500α

ゼンスイ 小型循環式クーラー ZC-500α

129,899円(12/14 01:00時点)
Amazonの情報を掲載しています
ゼンスイ 小型循環式クーラー ZC-700α

ゼンスイ 小型循環式クーラー ZC-700α

156,799円(12/14 01:00時点)
Amazonの情報を掲載しています
テトラ (Tetra) デジタル水温計 ブラック BD-1

テトラ (Tetra) デジタル水温計 ブラック BD-1

900円(12/14 01:00時点)
Amazonの情報を掲載しています
ブライトウェル リキッドリーフ 250ml

ブライトウェル リキッドリーフ 250ml

3,600円(12/13 21:58時点)
Amazonの情報を掲載しています

2020.09.02 (公開 2020.09.02) 海水魚飼育の基礎

「海水魚」「淡水魚」「熱帯魚」それぞれの違い

お客さんの来訪時、よくカクレクマノミなどの海水魚を指さされ「これは熱帯魚ですか」ときかれたアクアリストも多いかと思います。たしかにカクレクマノミやルリスズメダイ、ヤッコの仲間などは熱帯域を中心に分布している「熱帯魚」ではあるのですが、一般的にアクアリストが使用する「熱帯魚」とは少し意味が異なるようです。今回は、「海水魚」「淡水魚」、そして「熱帯魚」という言葉の意味と飼育の考え方をご紹介したいと思います。

海水魚とは

▲アクアリストのいう海水魚の代表的な存在、アケボノチョウチョウウオ

海水魚とは文字通り「海に暮らす魚」のことをいいます。私たちにお馴染みのクマノミ、スズメダイ、チョウチョウウオ、ヤッコのほぼすべてが含まれ、食用魚や釣り魚としてもお馴染みのイワシ、アジ、サバ、カツオ、タイ、カサゴ、カワハギ、キスなどのほぼすべての種もこの中に含まれています。

ただしアクアリウムの世界で海水魚というのはまた別の考え方になります。アクアリストのいう海水魚は当然「アクアリウムで飼育できる海水魚」ということになるため、マグロやカジキ、ジンベエザメ、サンマ、イワシなどは対象外になってしまいます。

海水魚はひとつの種類が広く分布しているものも多いです。とくにチョウチョウウオ科のある種は南アフリカの南東岸から中南米の太平洋沿岸にまで見られます。同様にニザダイ科やベラ科、ウツボ科なども広い分布域をもつものもいます。逆にスズメダイの仲間、メギスの仲間、テンジクダイの仲間など、卵が大きい魚で、親魚が卵を保護するような魚は分散能力が乏しく、一部の海域の固有種となっているものがいます。アクアリストにお馴染みの「プテラポゴン」ことバンガイカーディナルフィッシュや、「フリードマニー」ことオーキッドドティバックなどがまさにその例です。

海水はどこも大体pHが8.1~8.3くらいなので、好むpHの違いでほかの魚と一緒に飼育できない、という魚はいませんが、水温と比重は海水魚の生息する海域により違いがあります。オホーツク海やアメリカ西海岸の寒冷な海域に生息している魚は当然、カクレクマノミなどと一緒に飼育することはできません。また紅海(周囲を砂漠に囲まれ蒸発が激しい)は比重が高くなるため、紅海特産の魚は飼育においても高めの塩分で飼育してあげたいものです。比重は比重計を使ってしっかりと見てあげたいものです。

ナプコ シーテスト比重計

ナプコ シーテスト比重計

1,400円(12/13 17:10時点)
Amazonの情報を掲載しています

淡水魚とは

▲日本産淡水魚の代表的な種、コイ科のオイカワ

▲エンゼルフィッシュも南米のアマゾン川水系などにすむ淡水魚

淡水魚はその名の通り淡水域に生息している魚です。熱帯から亜寒帯の河川に生息していて、中には水系ごとに独自に分化した集団が知られていたりもします。そのため外来種や開発の影響を受けやすく、滅んでしまったものもいます。また絶滅しそうだからと異なる水域から別の地域集団を持ち込んだために在来集団を駆逐し滅ぼしてしまったという例もあります。その一方で淡水魚は海水魚より増やしやすく、養殖で間に合ってしまう種も多くいます。また、多くの改良品種も作出されています(コイ科やカワスズメ科などで顕著)。

ただし魚は海水魚・淡水魚とひとくくりにできない現状があります。例えばサケの仲間は卵を産むときに海から河川へとのぼりますし、アユやヨシノボリなども稚魚は河川から海へおりていくなどの回遊を行います。また淡水と海水のまじりあう汽水域を好む魚も多くいます。

淡水は河川や湖によってpHもまちまちです。コイやキンギョ、日本産淡水魚は水道水を中和したpH7の中性の水で飼育できますが、ディスカスやカラシン、ある種の淡水エイなどはおおむねpHが低めの水で飼育し、アフリカのマラウィ湖やタンガニィカ湖などの魚はアルカリ性の水で飼育したいものです。したがってこれらの魚は一緒に飼育するべきではありません。淡水魚は海水魚に比べて簡単なように思われがちですが、水質や入れる魚については淡水魚以上に気をつけなければなりません。もちろん海水魚同様水温にも注意を払わなければなりません。

熱帯魚とは

▲(狭義の)「熱帯魚」の代表種ネオンテトラ

熱帯魚は文字通り「熱帯に生息する魚」のことです。「コトバンク」(朝日新聞社や講談社、小学館などの辞書から用語検索ができるサービス)によれば、「熱帯地方の水域に産する魚」のことを熱帯魚といいますが、コトバンク内に収録されている「ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典」には「~淡水産のものと海水産のものがあるが、一般には淡水魚が愛好されている」とあり、やはりコトバンクに収録されている「日本大百科全書(ニッポニカ)」にも「~広義には淡水・海水産の両方の魚種を含めるが、狭義には淡水産のもののみをさす」とあります。簡単にいえば熱帯から亜熱帯のサンゴ礁に生息するカクレクマノミは日本大百科全書でいう広義では熱帯魚のなかに含まれていますが、狭義では熱帯魚の中に含められません。もちろん、熱帯性海水魚のカクレクマノミと、熱帯の河川に生息するネオンテトラやエンゼルフィッシュなどと同じ水槽ですることもできません。

実際に筆者が以前所有していた熱帯魚カタログでは、淡水の熱帯魚と一部の汽水魚が掲載されていましたが、海水魚は掲載されていませんでした。やはり熱帯魚=熱帯域に生息する淡水魚、という考え方がアクアリストの考えに近いように思います。なお、熱帯域に生息する海水魚を「熱帯性海水魚」と呼ぶことがあります。当サイト「海水魚ラボ」では、この表記を採用していますし、冒頭のようなシチュエーションであったら、「これは熱帯性の海水魚ですね」と答えるでしょう。

いずれにせよ「海水魚」「淡水魚」「熱帯魚」という分け方は分類学的なものではなく、生息している場所で分けているものです。ただしコイの仲間やドジョウの仲間、カラシンの仲間、ナマズの仲間、メダカの仲間、カダヤシの仲間はほとんどが淡水魚で、海水魚はごくわずかです。古代魚(ガーやポリプテルスなど)も淡水魚は多いのですが海水魚は少ないといえ、河川と海を行き来するチョウザメや、南東アフリカやインドネシアの深場にすむシーラカンス類くらいといえます。

海水魚と淡水魚と熱帯魚の違いまとめ

一般的な意味 アクアリストの間での意味
海水魚 主に海に生息する魚。マグロ、カツオ、サバ、イワシ、タイ、チョウチョウウオ、クマノミ、サメなど。 アクアリストが飼育できる海の魚。チョウチョウウオ、クマノミ、ナンヨウハギなど。
淡水魚 主に淡水域に生息する魚。改良品種も含む。キンギョ、コイ、フナ、オイカワ、ナマズ、エンゼルフィッシュ、ネオンテトラなど。 主に淡水域に生息する魚。改良品種も含む。キンギョ、コイ、フナ、オイカワ、ナマズ、エンゼルフィッシュ、ネオンテトラなど。
熱帯魚 熱帯域に生息する魚。広義ではネオンテトラ、エンゼルフィッシュ、ディスカス、ベタ、カクレクマノミ、ナンヨウハギなど。 熱帯に生息する淡水魚。ネオンテトラ、エンゼルフィッシュ、ディスカス、ベタなど。

このほか、海と河川を行き来する回遊魚(サケ、アユ、ウナギなど)や汽水域に生息する魚も多数知られている。

参考資料

コトバンク―熱帯魚

2020.09.02 (公開 2020.09.01) 海水魚図鑑

スプリンガーズデムワーゼルの飼育方法~青い体がきれいで比較的温和なスズメダイ

スプリンガーズデムワーゼルはルリスズメダイ同様青色がきれいなスズメダイです。体はルリスズメダイよりも寸詰まりでシルエットはシリキルリスズメダイによく似ていますが、黄色い部分がありません。丈夫で飼育しやすくサンゴにも無害であるのはもちろん、ルリスズメダイよりもだいぶおとなしい性格をしているものが多く、混泳もさせやすいといえます。今回はスプリンガーズデムワーゼルの飼育方法をご紹介します。なお、本種の名前については「スプリンガーズダムゼル」「スプリンガーズダムセル」などの表記の揺れが見られます。今回はスプリンガーズデムワーゼルという名称で統一します。

標準和名 なし
学名 Chrysiptera springeri (Allen and Lubbock, 1976)
流通名 スプリンガーズデムワーゼル、スプリンガーズダムゼル、スプリンガーズダムセルなど
英名 Springer’s demoiselle
分類 スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・ルリスズメダイ属
全長 6cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトグリーンシグマグロウBなど
温度 25℃前後
水槽 35cm~
混泳 ルリスズメダイよりもおとなしい性格
サンゴ飼育

スプリンガーズデムワーゼルって、どんな魚?

スプリンガーズデムワーゼルはスズメダイ科・ルリスズメダイ属の魚で、ルリスズメダイと同様に青い色が特徴です。写真はちょっと鮮やかすぎで、実際にはもっと暗く深みのある青色となっています。体はルリスズメダイと比べてやや寸詰まりで、シルエットはむしろシリキルリスズメダイに似ています。しかしながらシリキルリスズメダイは鰭や尾柄部などが黄色になるのに対し、本種ではそうなりません。分布域はモルッカ諸島などのインドネシア、マレーシア、フィリピンであり、日本には生息していません。このグループではシリキルリスズメダイが日本に分布していますが、それ以外の種は日本に分布していません。幼魚も成魚も鮮やかな青色をしており、成長によって色彩が変わってしまうことはありません。

バリエーションと近縁種

スプリンガーズデムワーゼルは色彩に変異があることが知られています。インドネシアのものは青一色なのですが、フィリピンのものは黒っぽい不思議な模様が入ることが多いです(入らないこともあるようです)。この模様を持っているものは別種となる可能性があります。Glyphidodontops springeri (オリジナルコンビネーション)のタイプ産地はインドネシアのモルッカ諸島となるため、フィリピンのもののほうが新種となる可能性が高いようです。なおフィリピンのものはよく販売されており、むしろインドネシア産の個体のほうが珍しいようです。飼育方法についてはどちらも変わりません。

またスプリンガーズデムワーゼルにはよく似た種がいます。とくにニューギニアやビスマルク諸島のChrysiptera cymatilis Allen, 1999などは、スプリンガーズデムワーゼルのインドネシアタイプのものに非常によく似ています。またやはりビスマルク諸島などに生息するシンクレイヤーズデムワーゼルも幼魚のうちはスプリンガーズデムワーゼルに似ていますが、成長すると吻の付近や背中が茶色っぽくなってしまうようです。ただしこれらの種はほとんど輸入が見られません(シンクレイヤーズデムワーゼルは輸入されたことがあったようですが)。

スプリンガーズデムワーゼルに適した飼育環境

水槽

この仲間としては比較的小型のスプリンガーズデムワーゼルは小型水槽での飼育も可能です。ただし小さい水槽では気性が激しくなる傾向もあり、ほかの魚と混泳させるのであれば最低でも45cm、できれば60cm水槽が欲しいところです。また小型水槽は水量が小さく、水質や水温などが安定しにくいため、初心者には難しいところがあります。

水質とろ過システム

スズメダイの仲間で水質の悪化には強い傾向にありますが、できるだけきれいな水で飼育したいものです。小型水槽で飼育するのであれば外掛けろ過槽をメインに、外部ろ過槽を併用して使用するのがよいでしょう。60cm以上の水槽では上部ろ過槽も使用できるので、より飼育しやすくなりますが、いずれにせよオーバーフロー水槽が他を圧倒したろ過能力を有するため、一番おすすめです。

またスプリンガーズデムワーゼルはサンゴ飼育に適したベルリンシステムやゼオビットシステムなどでも飼育することができますが、これらのシステムではあまり多くの魚を入れることはできませんので注意が必要です。

水温

▲水温は一定に保つこと

水温は25℃前後をキープします。22~26℃くらいであればまず問題ないでしょう。混泳する魚やサンゴに合わせて水温を調整しましょう。なお、水温はできるかぎり一定にしておきます。これは水温が急変してしまうと魚の体調に影響をおよぼし、白点病などの病気にかかりやすくなってしまうからです。

隠れ家

青いスズメダイだから性格がきつい、と思いがちですが意外と臆病なところがあります。ライブロックやサンゴ岩、魚混泳水槽でもパイプなどを使用して隠れ家を作ってあげるとよいでしょう。ただし無理な混泳は避けた方が無難です。

スプリンガーズデムワーゼルに適した餌

▲小粒の配合飼料が最適

スプリンガーズデムワーゼルは雑食性で、動物プランクトンや藻類を食いますが、飼育下では配合飼料もよく食べてくれるため餌についての心配は不要でしょう。ただし餌のサイズについては注意が必要で、小粒の配合飼料を中心に与えたいところです。どうしても食わないときは冷凍餌を与えますが、冷凍餌を与えると水質が悪化しやすいので、ほどほどにとどめておきましょう。我が家ではメガバイトのSや、シグマグロウBなどを与えています。藻類も食うのでメガバイトグリーンのSでもよいでしょう。実際に我が家でもメガバイト グリーンを与えています)。

どじょう養殖研究所 グロウ B 細粒タイプ 55g

どじょう養殖研究所 グロウ B 細粒タイプ 55g

960円(12/13 20:22時点)
Amazonの情報を掲載しています

スプリンガーズデムワーゼルをお迎えする

スプリンガーズデムワーゼルは日本には生息していないので、飼育したいのであれば購入するしかありません。購入する際の注意点としては、まずスプリンガーズデムワーゼルは安価なスズメダイなのであまり大事な扱いをされていないことが多いです。そのため入荷して直後の個体はおすすめできません。また鰭や体表にただれ、傷があったり、白い点がついているもの、泳ぎ方がおかしい、岩などに体表を頻繁にこすりつけているものもいけません。鰭が溶けるようになっているのも購入してはいけません。しっかり見極めるようにしましょう。

スプリンガーズデムワーゼルとほかの生き物の関係

ほかの魚との混泳

背鰭や尾鰭がほかのスズメダイの攻撃により傷ついたスプリンガーズデムワーゼル

ルリスズメダイ属の魚としてはおとなしめの性格をしています。そのため多くの魚と混泳可能ですが、小型水槽では気性が荒くなることもあるため注意が必要です。一方自分よりも大きく性格がきつい種類のスズメダイや大型魚との混泳は避けた方が無難といえます。このほかメギスの仲間や、ハタやカサゴなど肉食性の魚とは一緒に飼育しないほうがよいでしょう。

スズメダイ同士の混泳としては本種のように比較的おとなしい種類のスズメダイ、たとえばローランズデムワーゼルやタルボッツデムワーゼルなどと組み合わせるのが最適です。ヒレナガスズメダイやネズスズメダイはかなり気性が激しいので危険です。幼魚のうちはこれらのスズメダイもおとなしいのですが、水槽内で成長することも考えなければなりません。同種同士の混泳も可能ですが、この場合は最低でも60cm水槽でほかの魚(ヤッコなど)と一緒に飼育してパワーバランスの均衡を保つとよいでしょう。

なお我が家では現在ハナゴンべ、クロオビスズメダイ、カクレクマノミ、イトヒキテンジクダイなどと一緒に飼育しています。遊泳性のハゼなどはスプリンガーズデムワーゼルも水槽内で大きくなることを考えると、あまりおすすめできません、

サンゴ・無脊椎動物との相性

スプリンガーズデムワーゼルはサンゴに全く無害ですので、サンゴ水槽での飼育も楽しめます。SPSやソフトコーラルなどとの混泳が似合いますが熱帯性の浅瀬にすむサンゴであればどんなサンゴと一緒に飼育しても問題ありません。ただしイソギンチャクは捕食性が強く一緒に飼育するのはやめた方が無難ですが、ディスクコーラルやマメスナギンチャクとであれば問題なく飼育できます。

一方甲殻類は注意が必要です。小型のクリーナーシュリンプか、小型のカニ、サンゴヤドカリなどとの組み合わせが無難といえます。イセエビや大型のカニ、大型のヤドカリもやめましょう。クリーナーシュリンプとされるオトヒメエビも大きなハサミで小魚を襲うので避けるようにします。

ほかの青いスズメダイとの飼育方法の違い

ルリスズメダイ

ルリスズメダイは色彩も含めてスプリンガーズデムワーゼルによく似ていますが、体がやや長めで、頭部の模様なども若干異なります。スプリンガーズデムワーゼル同様鮮やかな青色は成長により変わってしまうことはありません。またルリスズメダイの雄は尾鰭が青いですが、雌は透明、スプリンガーズデムワーゼルは雌雄ともに透明なようです。どちらの種も海域によるバリエーションが知られ、ルリスズメダイは尾鰭などがオレンジ色になる変異が知られますが、スプリンガーズデムワーゼルも体側に独特な模様が入るバリエーションが知られています。

しかし性格はこの2種では異なり、スプリンガーズデムワーゼルは比較的おとなしいのですが、ルリスズメダイは同じくらいの大きさの魚をいじめてしまうことがあります。混泳相手はこのルリスズメダイよりも大きな魚が適しています。ただしスプリンガーズデムワーゼルも小型水槽では気が強くなってしまうこともありますので注意が必要です。

ソラスズメダイ

全体的に鮮やかな青色が特徴ですが、スプリンガーズデムワーゼルやルリスズメダイよりもメタリック感が強くてギラギラしています。しかし青色が鮮やかなのは最初のうちだけで、飼育していると黒っぽくなってしまうことが多いです。また大きくなるにつれて性格もきつくなっていき、魚の種類や水槽のサイズによっては混泳も難しくなってしまうことがあります。なお、ソラスズメダイは鰭などがうっすら黄色くなりますが、スプリンガーズデムワーゼルはそのようなことはならないので見分けられます。ルリスズメダイとも間違えられやすいですが、本州から九州の磯で見られるのはほとんどがこのソラスズメダイです。採集も飼育もしやすく、入手はスプリンガーズデムワーゼルよりも簡単ですが、おとなしい魚との混泳を考えるならスプリンガーズデムワーゼルのほうがよいでしょう。

スプリンガーズデムワーゼル飼育まとめ

  • 青色が美しいスズメダイの仲間
  • ルリスズメダイ同様成魚から幼魚までずっと青い色彩のまま
  • 産地などによって黒い模様が入ることがある
  • フィリピン産のものなどは模様に違いがある
  • 小型水槽でも飼えるが混泳には60cm以上の水槽がよい
  • 水質悪化にも比較的強いがろ過はしっかりしたものが必要
  • 水温は25℃を一定に保つ
  • 餌は配合飼料をよく食べてくれる
  • 入荷直後のものや体、泳ぎ方などがおかしいものは避ける
  • この仲間ではおとなしいため混泳は注意
  • サンゴとの相性はよい
  • ルリスズメダイは気性が激しいので注意
  • ソラスズメダイは気性がやや激しく色も落ちやすい
どじょう養殖研究所 グロウ B 細粒タイプ 55g

どじょう養殖研究所 グロウ B 細粒タイプ 55g

960円(12/13 20:22時点)
Amazonの情報を掲載しています

2020.08.29 (公開 2020.08.28) 海水魚の買い方

はじめて海水魚を買う・飼う前にやるべきこと~水槽環境は事前に準備!

夏祭りの縁日で金魚すくいですくったキンギョを飼育するのに「あとから水槽を買った」という話をよく聞きます。河川でメダカやオイカワなどを採集し、これらを飼育するのにも後から水槽を購入した方もいるかもしれません。淡水魚であればそれでもなんとかなることもありますが(本当は淡水魚飼育もしっかり準備するべきですが)、海水魚はそのようなやり方ではとても失敗しやすいです。今回はカクレクマノミと水槽セットを一緒に購入しても失敗する理由というのを考えてみましょう。

海水魚の飼育が淡水魚に比べて難しい理由

海水魚は淡水魚と異なり、非常に安定した環境に住んでいるものが多いです。そのため水質の悪化、水温の上昇および下降に対する耐性があまりないとされ、これが海水魚の飼育が難しい理由となっているといえるでしょう。

水温の問題

▲キンギョやコイは強い魚である

キンギョやコイなどはわが国の屋外でも飼育されることがあり、氷点下近い水温から30℃近くの水温にまで耐えることができ、水質の悪化にも非常に強い魚といえます(キンギョはリュウキンや土佐錦魚など一部の品種をのぞく)。

しかしながら、海水魚、とくに私たちが飼育しようとしているサンゴ礁の魚はおおむね20~28℃くらいの水温で見られ、冬に低い水温にさらされると死んでしまいます。また高いほうの水温もきれいで広大な海では32℃くらいまでは耐えられますが、狭い水槽では30℃くらいまでが限界といえます。水も悪くなりやすいですのでできるだけ25℃くらいで飼育してあげましょう。そのためにはクーラーとヒーターを周年使用することが大事ですが、水槽用クーラーは、従来より安価になったものの、まだまだ高価であるというのも手が出にくい理由のひとつといえます。

ろ過能力の問題

▲しっかりしたろ過システムの構築は海水魚の長期飼育には欠かせない

海水魚を飼育するのにはしっかりしたろ過槽が必要になります。これが、水槽セットを後から買った人の大部分が失敗する理由です。なぜならば、ただろ過槽を組めばいい、というわけでなく、魚の排せつ物をもとに発生する猛毒のアンモニアから、毒性がやや弱い亜硝酸へ、そしてその有毒の亜硝酸を魚に無害な硝酸に変えてくれるバクテリアの繁殖を待たなければいけないのです。大体人工海水とろ過槽をセットして2週間くらい空回ししてからカクレクマノミを導入します。バクテリア剤を入れればより早く立ち上げることができますが、それでも1週間くらいは待った方がよいと思います。

海水魚は真水(淡水)で生きていけません。しかしその真水に溶け込ませて海水をつくる人工海水のもとは各地のペットショップや通販で購入できます。そのため工程は増えるものの、入手は難しくありません。そのため日本で海水魚の飼育がはじまったころとは異なり、海水の入手は難しいものとはなっていません。しかし安価だからといって市販の塩では人工海水を作ることはできませんのでご注意ください。また海水を作るためには専用の比重計が必要になります。

カクレクマノミを飼いたいと思ったらリサーチが重要

カクレクマノミをしっかり飼育したいのであればリサーチが重要です。最近は調べものをする際にインターネットを使用することが多いのですが、しかしながらインターネットはいくつか良質サイトやコミュニティはあるもののその多くは有象無象、記事の質もよいもの悪いものが混ざり合っています。それゆえに信頼できる情報を得にくいところもあります。

おすすめは本を読むことです。海水魚飼育の本を読めば飼育の情報が簡単に手に入るでしょう。写真は私が海水魚飼育を再開するときに教科書としてきた枻(えい)出版社の「はじめて海水魚を飼うときに読む本」ですが、現在はもっと新しい本である「カクレクマノミの上手な飼い方」という本が2016年(ファインディング・ドリーの公開にあわせて)同じ枻出版社から出ているので、そのような入門書を読むのが一番確実でしょう。

UFOキャッチャーにカクレクマノミが?

冒頭でご紹介しました「金魚すくいでとったキンギョを飼うために水槽セットを買う」という話が海水魚でも起こっていました。なんと、UFOキャッチャーでカクレクマノミが景品になっているところがあったのだとか。

これはどうやら2013~2016年ごろということで、現在もあるのかは不明ではありますが、狭い容器にカクレクマノミが入っていてかわいそうという意見もあったのか最近は見られなくなりました。たしかに切り花的な消費とか、動物愛護の観点からも、このような景品は廃止したほうがよさそうです。

ただUFOキャッチャーで「捕獲」した後カクレクマノミをうまく飼育している人も決していないわけではありません。UFOキャッチャーの狭い容器から水槽へのケアがうまくいけば長期飼育も難しくはないかもしれません。しかし、しっかりしたろ過槽などの準備もしておかないと、短期間で死なせてしまう可能性が高いです。

UFOキャッチャーのカクレクマノミの出どころは?

UFOキャッチャーでとれるカクレクマノミの出どころは不明ですが、景品としては安定的な供給が必要不可欠であり、またかなり丈夫な個体が必要であるということから、野生のものを採集した、というよりは養殖個体が出どころになっている可能性が高いです。採集もののカクレクマノミの場合、ストレスの多い環境では病気になったりする可能性が養殖のものよりも高いと思われるからです(実際に我が家のワイルドもののクマノミも白点病的な症状やウーディニウム様の症状が出たことがあります)。

養殖のカクレクマノミについては供給がおいついている、もしくは供給過多なのか、お店などではひとつの大型水槽にたくさんのクマノミが乱舞している光景も見られるものの、一つの水槽に入れる数が多いと水質も悪化しやすく、岩陰には眼がないカクレクマノミの亡骸が・・・なんていうこともあります。そのためカクレクマノミを購入するときには安易に買わず、じっくり状態を見て決めたいものです。もちろんどのような魚にも共通していえることなのですが、養殖カクレクマノミのような安価な魚はとくにそうです。

カクレクマノミと水槽セットまとめ

  • カクレクマノミと水槽セットを一緒に飼っても長生きさせられない
  • カクレクマノミが住めるようバクテリアを繁殖させるのに時間がかかる
  • キンギョやコイなどの淡水魚と比べると海水魚は安定した環境にすむため変化に弱い
  • 海水魚を飼育する前のリサーチが重要
  • UFOキャッチャーで「捕獲」しても飼育準備をしていないとすぐに死なせてしまうことが多い

2020.08.25 (公開 2020.08.25) サンゴ図鑑

カクレクマノミと相性のよいサンゴと悪いサンゴ

カクレクマノミをうまく飼うことができるようになると、サンゴも気になってきます。サンゴの中にはカクレクマノミの相性がよいものと、よくないものがいます。サンゴ飼育の難易度はお店の人に聞けばわかりますが、お店の人はあなたが何を飼育しているか知りません。

そのため、カクレクマノミと相性の悪いサンゴを購入してしまうとサンゴが短命に終わってしまいやすいところがあります。今回はカクレクマノミとサンゴとの相性についてご紹介します。なお、ほかの魚とサンゴの相性はこちらもご参照ください。

カクレクマノミとは

カクレクマノミはスズキ目スズメダイ科の魚で、映画「ファインディング・ニモ」に登場するキャラクター「ニモ」「マーリン」のモデルになったとされる(実際はペルクラの方ともされますが)魚です。クマノミの仲間はスズメダイ科の中でも特異なグループで、鰓蓋に変わった棘があったり、イソギンチャクと共生する変わった習性を有し、クマノミ属とその近縁種であるPremnas属とあわせてひとつの亜科を形成します。

従来からアクアリウムの世界では人気があった魚ですが、映画公開後はさらに人気が高まりました。カクレクマノミは天然の個体、養殖の個体が販売されていますが、個人的には養殖個体のほうがよく慣れており初心者にも飼育しやすいと思います。天然物はやや病気になりやすいという点もあり、そういう意味でも初心者には養殖個体がおすすめです。

カクレクマノミと一緒に飼いたいサンゴ

マメスナギンチャク

▲マメスナギンチャク

マメスナギンチャクはサンゴの仲間とされていますが分類学的にはだいぶ離れたグループです。小さくてかわいい、またカラーバリエーションが豊富で集める楽しみもあります。餌はたまに与えることで成長を促します。「~ギンチャク」と名前がついていますが、スナギンチャクのグループでイソギンチャクのようにクマノミとは原則共生しません。ただし隠れ家がないときなど、クマノミが寄り添うことはあります。

ディスクコーラル

▲ディスクコーラル

ディスクコーラルはサンゴというよりイソギンチャクに近い仲間ですが、サンゴの一種として販売されています。そのサンゴの中でももっとも丈夫で飼育しやすいもので、初心者にもっともおすすめのサンゴともいえます。この特徴は非常に重要です。なぜならばカクレクマノミが飼いたい!という人は初心者に多く、その初心者はお店に足を運べばサンゴも飼育したくなるからです。まずはカクレクマノミと、このディスクコーラルのような飼いやすいサンゴを飼育し、サンゴ飼育のスキルを身につけるとよいでしょう。また、ヘアリーディスクなどはカクレクマノミがすり寄ることもあります。

スターポリプ

▲スターポリプ

スターポリプ(ムラサキハナヅタ)も飼育しやすいサンゴとされますが、マメスナギンチャクなどよりはやや難しいです。ある程度きれいな水であればよく増殖してくれますが水流や照明の変化などにデリケートなところがあります。ロングタイプのスターポリプは知らない人が見ればイソギンチャクにもよく似ているようで、実際にカクレクマノミがすり寄ることもあります。

トサカ

▲トサカとハナビラクマノミ

トサカはソフトコーラルの一種で、イソギンチャクとは大きく異なるグループとされていますが、写真のようにハナビラクマノミと一緒に飼育していると、ハナビラクマノミがトサカの中で休息していました。トサカの仲間は種類によって飼育難易度が異なり、カタトサカの仲間は比較的飼育しやすく、チヂミトサカはミドリイシ並みにきれいな水が欲しいところです。またトゲトサカやベニウミトサカなどは給餌が必要で、ベテランでも飼育しにくい種です。ヌメリトサカなどは強い毒がありほかのサンゴとの接触は避けます。なお写真の個体はカタトサカの仲間です。

ウミキノコ

▲ウミキノコ

浅いサンゴ礁に生息するソフトコーラルの一種であるウミキノコはやはり浅いサンゴ礁域に生息するカクレクマノミとの相性が抜群といえます。またウミキノコの種類によってはカクレクマノミがすり寄ることがあります。飼育はトサカの仲間ではやさしいほうではありますが、毒性が強いサンゴとは接触させてはいけません。よく似たウネタケもウミキノコと同様の条件で飼育できます。

キッカサンゴ

キッカサンゴ

▲キッカサンゴ

キッカサンゴはとても丈夫で飼育しやすいハードコーラルです。適切に飼育してカルシウムなどを添加してやればよく成長します。魚との相性もおおむねよく、カクレクマノミとの飼育も何ら問題はありません。はじめてのハードコーラルに最適な種のひとつです。

ウミバラ

▲ウミバラとペルクラ

ウミバラはキッカサンゴと同じ科のハードコーラルですが変わった形が特徴です。さらにキッカサンゴよりも共肉が厚くボリュームがあります。カクレクマノミと飼育すると、カクレクマノミがウミバラをイソギンチャクのかわりに寄り添うことがあります。我が家ではトサカやウミキノコも飼育していますが、我が家のカクレクマノミはウミバラを好むようです。写真はコーラルタウンで飼育されていたペルクラですが、ペルクラも同様の習性をもっているのでしょう。共肉は厚めなので、後述のアワサンゴなどと比べてサンゴにはあまり悪影響もないようです。丈夫で飼育しやすく、ハードコーラルに初めてチャレンジしたい、という方にはおすすめですが、触れたサンゴは溶かしてしまうことがありますので注意しましょう。

シコロサンゴ

シコロサンゴ

丈夫で飼育しやすいサンゴで、SPS(ポリプの小さなイシサンゴ)をはじめて飼育するのには本種は最適です。きわめて丈夫で飼育しやすいですが、クマノミの仲間はあまりシコロサンゴの中には入りません。むしろ小型のハゼやカエルウオなど、カクレクマノミとの混泳に適した魚の隠れ家に最適です。毒性はやや強くほかのサンゴと触れないように注意が必要です。

キクメイシ

▲キクメイシ

キクメイシも飼育しやすいサンゴですが成長がやや遅く、傷つけたり一部が減退すると回復させることが難しいという注意点もあります。この仲間は飼育しやすいものも多く、カクレクマノミとの相性もよいものが多いです。キクメイシの仲間はほかにもタバネサンゴなどもおり、これらもクマノミ類との相性はかなりよいといえるでしょう。

コモンサンゴ

▲ウスコモンサンゴ

コモンサンゴのはミドリイシ科の一種で、初心者にはやや難しいサンゴの仲間です。ミドリイシの仲間はきれいな水を好み、硝酸塩の蓄積には弱いのです。しかしコモンサンゴの仲間はミドリイシと比べて硝酸塩の蓄積に耐性があるため、シコロサンゴなどは除けば、SPSの入門種として最適なもののひとつです。カクレクマノミとの飼育も全く問題はありません。

ミドリイシ

▲ミドリイシの仲間

ミドリイシの仲間は美しいのですが繊細で、最も飼育が難しいサンゴのひとつとしても知られています。しかしながら色上げや成長を楽しみ、美しい水景を作りたい、ベテランアクアリストにとって大人気のサンゴです。その水景にはイソギンチャクを入れにくいのですが(ミドリイシにダメージを与えることもあるため)、カクレクマノミを泳がせているアクアリストも多いです。

カクレクマノミと一緒に飼いにくいサンゴ・注意が必要なサンゴ

アワサンゴ・ハナガササンゴ

▲アワサンゴ

▲ハナガササンゴ

アワサンゴはややデリケートなサンゴです。カクレクマノミとは相性がよくないのですが、これはカクレクマノミがアワサンゴにすり寄りことがあるからです。アワサンゴは共肉も薄く、すり寄られるとダメージを受けやすいようです。同じ仲間のハナガササンゴは長期飼育が難しいサンゴとしても知られており、なおさらカクレクマノミと一緒に飼育するのはやめるべきでしょう。

ナガレハナサンゴ

▲ナガレハナサンゴ

ナガレハナサンゴなど、ハナサンゴ科のサンゴも同様にカクレクマノミとの飼育しにくいサンゴです。これも理由はアワサンゴなどと同様で、カクレクマノミがすり寄るからとされます。また近縁種のコエダナガレハナサンゴなどもクマノミがすり寄ってダメージを受けることもあります。またこれらのサンゴはキクメイシやキッカサンゴなどよりは輸送のダメージに弱い、元素欠乏に弱い、水質にデリケートなど、飼育が難しいところがありますので、初心者にもあまり向きません。

ハナガタサンゴ・オオバナサンゴ

▲ヒユサンゴ(オオバナサンゴ)

ハナガタサンゴやオオバナサンゴなどは丈夫で飼育しやすいハードコーラルです。たまに餌を与えることによりコンディションを良好に保つことができます。しかしながらクマノミを入れると顔を突っ込んでまでサンゴの餌を奪うことがあります。サンゴにも十分餌がいきわたっているかどうか、しっかりチェックしましょう。またカクレクマノミはこれらのサンゴにすり寄ることがありますが、アワサンゴなどと比べると問題にはなりにくいといえます。ただしどうしても長いことすり寄られてサンゴがストレスを受けている、というようなときは隔離すべきかもしれません。

カクレクマノミとサンゴの相性まとめ

まず結論として、カクレクマノミを飼育している水槽にサンゴを入れるのであれば相性がよいサンゴを、自分の飼育スキルと相談しながら水槽に導入していくのがベストといえます。

  • サンゴの中にはカクレクマノミとの相性がよいものと、よくないものがいる
  • よいものはソフトコーラル全般、シコロサンゴ、キッカサンゴ、ウミバラ、キクメイシ、ミドリイシなど
  • 相性がよくないものはアワサンゴ、ハナガササンゴ、ナガレハナサンゴの類など
  • 注意が必要なものはヒユサンゴ(オオバナサンゴ)、ハナガタサンゴなど

2020.08.22 (公開 2020.08.21) 水槽・器具

マメデザイン「マメプラグ」を使ってみました~メリットとデメリット

2019年、サンゴのブリードに使用するプラグにニューフェイスが登場しました。マメデザインから販売されている「マメプラグ」です。このマメプラグは、そのほかのメーカーから出ているプラグとは大きく異なります。今回はこのマメプラグの特徴や、ほかのプラグとの違い、使い方などをご紹介します。

マメプラグとは?

マメプラグはマメデザインから出ているサンゴブリード用の土台(プラグ)です。一般的に販売されているプラグは人工物的な感じが強いのですが、マメプラグは本物のライブロックと同じ炭酸カルシウムを主成分とし、色もライブロックに生えた石灰藻のような赤紫色をしています。写真のようなきれいな袋に入っており、お菓子のようにも見えます。マリンアクアリウム業界でもデザインにこだわるマメデザインらしいものですが、もちろん食べてはいけません。

マメプラグのメリットと特徴

「人工物感」が少ない

▲一般的なプラグ(左)との比較

マメプラグは見てもわかるように、赤紫色の石灰藻カラーをしています。普通にフラグサンゴをつくるときに使うプラグは灰色から白っぽい色をしていて水槽では目立ちやすいのに対し、ライブロックに付着する石灰藻と同じような色彩をしているマメプラグは水槽でもなじみやすいといえるでしょう。

ろ材としての機能も

マメプラグには多数の微細な穴が開いており、通水性がよく、バクテリアもよく定着しやすいという特徴をももっています。同じマメデザインの「マメバクテリア」を使用することによって、より高い効果が得られそうです。

炭酸カルシウムが主成分

マメプラグの主成分は炭酸カルシウムです。これはライブロックの主成分と同じで、さらにやはりマメデザインの「マメカルシウムサンド」まで練りこんであるためミネラルが豊富に含まれています。そのためサンゴの育成には大変都合のよくできている商品といえるでしょう。また表面が白っぽくなってしまっているこおもありますが、これはカルシウム成分であり、そのまま使っても問題はないとのことです。

サイズは2種類

マメプラグシリーズには2種類のサイズが用意されています。「マメプラグ」は横55~65mm、「マメプラグミニ」はより小さく、横35~40mmとなっています。自分の水槽サイズに合わせて使用するとよいでしょう。マメプラグよりも大きいのがいい!というのであれば同じマメデザインから販売されている姉妹品のマメライブロックを使用するのもよいでしょう。

マメプラグのデメリットと注意

棒がない

マメプラグは裏面に「棒」がついていません。これはマメプラグの表面と裏面の両方を活用できるようにする、という理由からです。片方の面はつるんとしておりハードコーラル向け、もう片方は隙間が多くソフトコーラルを接着するのに適しているとされています。しかしながら専用のフラグラックにマメプラグをさすことができないというデメリットにもなりえます。

真水で洗ってはいけない

海水魚に関するアイテムは使う前に「真水(淡水)で洗うべきもの」と、逆に「真水で洗ってはいけないもの」の二つがあります。水槽内に入れる飾りサンゴ、ほか水槽内に入れるスポイトやピンセット、スキマーなどの各種器具は水で洗うべきものですが、ライブロックやバクテリア付きのろ材などは水で洗ってはいけません。

マメプラグも真水で洗ってはいけません。理由としてはプラグ表面のpHがサンゴに適さなくなり、生育に影響が出てしまうからとされます。ただ、「真水で洗ってはいけない」ようなことは、マメプラグのパッケージに説明がなく、QRコードを使って閲覧しなければなりません。

マメプラグを実際に使ってみました

今回は実際にマメプラグを用いてフラグサンゴを作成してみました。用意するものはマメプラグ、タオル、海水、ピンセット、サンゴ用のジェル状接着剤、ディッピング用のヨウ素、そしてピンセットです。

接着剤は我が家ではデルフィス製のものを愛用しています。その中でもタオルなどで拭いてよく乾かしてから接着する「クイックジェル」、水中でも接着可能なウォータージェルの2種類がありますが、今回サンゴへの負担を少なく、手早く行うためにウォータージェルを使用しています。ただしほかのメーカーから出ている接着剤でもアクアリウム用であれば問題はないと思います。ピンセットはカミハタの多目的ピンセットを使用しています。これはステンレスのものよりもやわらかいためサンゴを傷つけにくいものです。

まずはマメプラグを飼育海水で軽く洗浄し、洗浄したあとの海水は捨てます。接着剤「ウォータージェル」を使用してマメプラグにサンゴを接着していきます。今回はウスコモンサンゴシコロサンゴのフラグを作ってみました。どちらも非常に丈夫ですが、ウスコモンサンゴはミドリイシ科でやや水質にうるさめです。

接着が終わったらディッピングを行います。これは傷口から感染症になるのを防ぐために行います。今回はシーケムの「リーフディップ」を使用しました。新しく海水をくみ、リーフディップを規定量入れ15~30分ほど浸します。ディッピング後の海水は捨てます。

水槽にマメプラグを入れた様子です。マメプラグはほかのフラグより目立つものではないのですが、明るい照明の下ではどうしてもその赤紫色が目立ちやすい感じです(我が家の水槽では石灰藻の量が少ないだけかもしれませんが)。こんな感じで隙間や陰になる部分に配置するとよいでしょう。ただしミドリイシのような強い光を好むものは光のよく当たる場所に配置する必要があります。もちろん水流についても気をつかう必要があります。

こちらはヤッコアミメサンゴをフラッギングしたものです。小さい枝でもやがて大きく育つ、極めて丈夫なサンゴといえます。これらのサンゴの生育状況については、また更新してご紹介したいと思います。

マメプラグまとめ

  • 一般的なプラグとは異なる形が特徴
  • ライブロックと同じ主成分
  • 色彩もライブロックを模した赤紫色
  • 一般的なプラグと異なり下方に「棒」がない
  • 真水では洗ってはいけない

2020.08.18 (公開 2020.08.18) 餌・添加剤

海水水槽に“みりん”を添加する効果と危険性について

みりんは料理の調味料として使われる料理用酒の一種です。

このみりんはもちろん、本来の用途は料理に使うものであり、アクアリウム用ではないのですが、最近このみりんを海水水槽に添加するのが流行っているようです。はたして、なぜみりんを添加しているのでしょうか。どのような効果が得られるのでしょうか。そしてみりんは安全なものなのでしょうか。今回はそのあたりを考えてみたいと思います。

なぜみりんを添加するのか

みりんを添加するとバクテリアがみりんに含まれる炭素をとりこみ、効率よく硝化・脱窒を行います。このみりんを添加して硝酸塩を抑える方法のもとになったと思われる方法として、米国などではやった「VSVメソッド」というのがあります。

VSVとは、ウォッカ、砂糖、酢の頭文字で、これらを水槽に添加するというものです。これらに含まれる炭素をバクテリアに供給、活性化をはかり硝化・脱窒のプロセスを高めるというものです。その結果海水水槽の硝酸塩を低レベルで維持できる、というわけですが、VSVメソッドは大変危険な方法なので、初心者にはおすすめすることはできません。またある程度経験を積んできたアクアリストであっても、失敗したという経験談も聞かれますので、よく理解していないと失敗することになります。エキスパート向けのメソッドといえます。

みりんを添加するメリット

みりんはスーパーなどで安価に販売されています。日本全国ほぼどこでも販売されていて入手も容易にできるというのもメリットです。ただし確かにアクアリウムショップで販売されているNO3PO4-Xよりは安価なのですが、ここでお金をケチって魚を死なせてしまうリスクを冒すことを考えると、あまり安い買い物とはいえず、メリットとなっていないようにも思います。

また、硝酸塩を極限まで減らしてサンゴの色上げの効果もうたわれていますが、硝酸塩を大幅に減らしてサンゴの色上げをするのであれば、多少の出費があってもゼオビットなどのほうが安心です(これらもしっかりマニュアルを守らなければ失敗するので注意)。したがってこれもメリットとはいえないかもしれません。

みりん添加の危険性と注意点

みりん添加については適切なマニュアルなどはなく、実際にみりん添加をおこなっているアクアリストから教えてもらうのがベストですが、いずれにせよ添加は自己責任でおこなってください。

すべてのバクテリア(細菌)類の増殖

炭素源はあらゆるバクテリアの餌になり、硝化・脱窒を行ってくれるバクテリアだけでなく、病原菌が繁殖する危険性も秘めています。そのため、初心者が何も知らずに添加してしまうのは危ないといえます。また本来VSVメソッドは酒(みりん)のほかに砂糖や酢も添加しているのですが、この3種類を添加する理由としては、ひとつの炭素源だけを入れているとバクテリアの種類が偏ってしまうためよろしくないということです。つまりある種のバクテリアだけが増殖してしまうことはバランスを崩してしまいよくないといえるのです。

SPS水槽において菌が増殖した場合、KHの値が高すぎるとSPSが細菌に感染するということが起こりやすいともいわれており、このようなところも注意しなければなりません。一見手軽で簡単なように見えるみりん添加ですが、ベルリンシステムなどよりもずっと慎重さが求められます。

酸欠になりやすい

同様にみりんの量が過剰であると、バクテリアがかなり増殖しますが、このうち好気性バクテリアが増えすぎたり、水中の酸素を大量に消費するようなバクテリアが増えてしまうと水が白濁、酸欠になりやすくなってしまいます。そうなると魚が全滅してしまうおそれもあります。さらにみりんだけを添加すると同じ種類のバクテリアが増殖しやすく、その中には酸素消費量の多いものも含まれているようです。

プロテインスキマーが必須

▲酸素供給や過剰なバクテリアの除去のため強力なスキマーが必要

みりんを添加する水槽にはプロテインスキマーが必須となります。これはバクテリアが増えすぎた際にそのバクテリアを水槽から出すのに使用したり、好気性バクテリアに消費されやすい酸素を補うのに重要です。水槽のサイズのちがいもあり、どのスキマーがいいとはいいにくいのですが、ベンチュリー式、ベケットヘッド式、もしくはダウンドラフト式のプロテインスキマーを使用して、エアリフト式は避けるようにします。

なお、添加するのは必ず「本みりん」でなければなりません。みりん風調味料などは中身が異なりますので絶対に添加してはいけません。

「NO3:PO4‐X」の使用が安心

ここまでいろいろ述べてきましたが、みりんを水槽に添加し硝酸塩濃度を下げるのは危険であり、初心者には全くおすすめできません。しかしながら、このみりんの代わりになる、初心者にも扱いやすいアイテムがあります。それがレッドシーから出ている「NO3PO4-X」です。これはレッドシーが製造しているもので、きちんとしたマニュアルもあり、それに従えばよいので初心者でも簡単に硝酸塩を減らすことができるでしょう。成分はエタノールやメタノール、酢酸などで、結局アルコールが主成分ですが、いくつかの成分が含まれているため、単一のバクテリアのみが繁殖しやすいという状況に陥りにくくなっているのかもしれません。

ただし、NO3:PO4-Xもその使用のためにはプロテインスキマーが必須となります。理由はみりんを添加するときと同様で、過剰なバクテリアを水槽から取り除いたり、酸素を供給し酸欠をふせぐなどの役割をします。このほかに、正確に添加量を測定できる専用のテストキットも必要になります。高価であり必要なものは多いのですが、その分みりんよりも安全に、しかも効率よく硝酸塩を減らすことができるでしょう。さらにみりんを使っただけではあまり除去できないリン酸も減少させてくれます。私であればこちらのNO3:PO4‐Xを使用します。

みりん添加まとめ

  • 水槽内にみりんを添加することで硝酸塩を減らせる可能性がある
  • バクテリアがみりんに含まれる炭素を取り込み効率よく硝化脱窒を行う
  • VSVメソッドが原型であるが水槽崩壊につながることもあるためおすすめできない
  • 安価で入手もしやすいが魚やサンゴを殺すことも考えるとおすすめしにくい
  • 硝化・脱窒のバクテリアだけでなく病原菌も増殖してしまうおそれがある
  • 好気性バクテリアの中には大量に酸素を消費するものもあり酸欠にも注意
  • プロテインスキマーは必要
  • NO3:PO4-Xの添加はマニュアル化されており初心者にも比較的扱いやすい
  • NO3:PO4-Xを添加する際にもプロテインスキマーが必要

2020.08.14 (公開 2020.08.14) 海水魚飼育の基礎

海水魚飼育に最適な水温について考える

水温はアクアリストが直接目で見ることはできませんが、魚が生きていくのには大事な要素のひとつです。しかしながら魚によって好む水温は異なっており、好む水温が大きく異なるような魚は一緒に飼育することはできません。今回は魚ごとに適した水温を考えてみます。

サンゴ礁の浅瀬の魚

▲人気のカクレクマノミも浅瀬の魚

私たちが飼育するサンゴ礁の魚は多くがこのパターンになります。カクレクマノミ、スズメダイ、ナンヨウハギ、ヤッコの仲間の多くの種、ハゼの仲間の多くの種などは大体これに当てはまります。水温は大体25℃前後をキープしますが、大体22~28℃であれば健康に過ごせる種類が多いといえます。30℃くらいになると危険です。そのためクーラーをしっかりとつけておくようにしましょう。逆に水温が20℃を下回ることがないようヒーターも必要です。重要なのは年中クーラーとヒーターをつけておくことで、それにより水温を一定に保ちます。

なお、サンゴも浅瀬に生息するSPSやキクメイシ、各種ソフトコーラルなどはこの水温で問題なく飼育できます。

サンゴ礁の深場に生息する魚

▲ハナゴンベはやや深場にすむ(15~70m)

サンゴ礁のやや深場に生息する魚もアクアリストの飼育対象となっています。やや深場にすむ種、たとえば水深30m以深にみられるような魚、種を上げればハナゴンべなどハナダイの仲間、イトヒキベラの仲間、中型ヤッコ(ゲニカンの類、グリフィス、ブラバンほか)など。これらの種を飼育するのであれば25℃よりも22℃前後のほうがよいでしょう。またこれらの魚は水質もきれいなものを好み、そういう意味でも低めの水温のほうが飼育しやすいといえます(水温が高いと水質が悪化しやすい)。

なお、これらの種類はカクレクマノミなどとの飼育もできます。カクレクマノミと飼育するのであればカクレクマノミを23℃前後で飼育すればよいのです。25℃よりも23℃のほうが餌食いが悪くなるといわれることもありますが、その程度ではあまり餌食いが悪くなるといえません。ただし、もちろん26~28℃くらいで飼育しているものを一気に23℃の水槽へ移せば体調を崩してしまうことがあるので注意しなければなりません。サンゴ類は全般的にこの水温で飼育可能です。

日本近海の魚

▲メバルなどは高水温に注意

釣りで採集した日本の近海にすむ温帯性の魚を飼育しているアクアリストも多いといえます。しかしその中には高水温に耐性があるものとそうでないものがいます。前者はイソギンポ、コケギンポ、ナベカ、スズメダイ、クロダイ、イシガキダイ、メジナなどで、後者はマダイ、カサゴ、メバル類、ソイ類、ダイナンギンポ、キヌバリ、チャガラなどです。春の海に多く見られるような魚は高水温にはかなり弱いと考えてよいでしょう。このような魚は大体18℃、高くても20℃前後で飼育するようにします。また、「高水温に強い魚」といっても、一般的な海水魚を飼育するような25℃以上にはしないほうがよいと思います。

オーストラリア近海に生息する魚

▲ホワイトバードボックスフィッシュ

オーストラリア近海にもいろいろな魚がおり、珍しいものがいろいろ輸入されています。著名なのはヤッコの仲間はスクリブルドエンゼルやパソニファー、チョウチョウウオはタキゲンロクダイ、マージンドコーラルフィッシュ、ゴールドストライプバタフライフィッシュ、レインフォーズバタフライフィッシュ、タルマコーラルフィッシュなど。スズメダイ科ではオーストラリアンアネモネフィッシュ、バリアリーフクロミス、各種スケイリーフィン。そのほかではホワイトバードボックスフィッシュや、ハリセンボンの仲間のサザングローブフィッシュ、タナバタウオ科のフラフィッシュ、軟骨魚のポートジャクソンシャークやフィドラーレイ、そしてなんといってもシードラゴンなど、長くなりましたがオーストラリアは独特な種が多いのです。

ただしオーストラリアの魚といってもひとつの水槽で飼育することができるわけではありません。サンゴ礁の魚は25℃で飼育できる種類も多いのですが、南へ行くほど、つまり高緯度になるほど海は冷たくなり、その分冷たい海水を用意してあげたいものです。15℃前後と低めの水温で飼いたい種も多く、飼育したい魚はオーストラリアのどこの産なのか、そしてその海域はどのくらいの水温で飼育すべきなのか、調べてみるとよいでしょう。

ハワイ諸島の魚

▲ポッターズピグミーエンゼルは高水温に注意!

ハワイ諸島の魚もやや低めの22℃前後がよいとされています。キイロハギなどは25℃の水温でも飼育でき、より高水温でも飼えるようですが、ブラバン(やや深場にすむ)やポッターズエンゼル、各種チョウチョウウオは高水温に弱いように思われます。そのためしっかりとしたクーラーが必要です。またヤッコやチョウチョウウオは病気にかかりやすく殺菌灯をつけたくなりますが、殺菌灯は水温を上げてしまうのでより強力なクーラーが必要になるので出費が大きくなります。

カリブ海・西アフリカの魚

クイーンエンゼルことホクロヤッコ。きれいなやや水温低めの水槽で飼育したい種だ

カリブ海の浅い海に生息している魚も23℃前後で飼育したほうがよいとされます。ただしカリブ海産の魚でもロイヤルグランマなどは29℃の水温でも短期間であれば耐えられるようです。いつも25℃で飼育してもよいと思いますが、一部の種では色褪せなどの影響が出やすいです。クイーンエンゼルの色彩の維持が難しいのはもしかしたら水温によるものもあるかもしれません。

西アフリカはガーナなどから海水魚が来ます。種類は多くなく「アフリカヌス」ことウェストアフリカンエンゼルフィッシュ、特産種のチョウチョウウオであるロブストバタフライフィッシュ、マルセラバタフライフィッシュなどが代表的です。こちらも高水温は危険で22℃くらいの低めをキープしておきましょう。カクレクマノミなどと飼育するのであれば、カクレクマノミのほうを22℃に合わせます。

ダンゴウオなどの冷水性魚

ダンゴウオの仲間の飼育は低水温で行う必要がある

ダンゴウオは冬の海の天使と呼ばれるかわいい魚なのですが、カクレクマノミやナンヨウハギなど、熱帯性海水魚との飼育はできません。水温15℃以下を保つようにしなければ短命に終わってしまうからです。このほかスナビクニンなどもダンゴウオと同じくらいの水温を維持しなければなりません。餌は最初のうちはプランクトン、ヨコエビ、ホワイトシュリンプなどで、配合飼料にはなかなか餌付きません。

深海生物

▲深海生物は12~14℃ほどの水温で飼育したい

最近は深海性の魚も飼育されるようになりました。飼育できるものはハシキンメやキホウボウなどまだごくわずかなものですが、それでも一部の種は飼育されているのです。深海性の魚は非常に低い水温と安定した環境を好みます。水温は大体12~14℃であり、それより高いと弱ってしまう種類も多いのです。そのためクーラーも非常に高価な室外機タイプのものを使用するのがベストといえます。また非常に結露が発生しやすいので常にふき取るようにします。また厚いアクリル水槽で飼育することにより結露を抑えることもできます。

クーラーは最初から余裕のサイズを!

水温を安定させるのにはクーラとヒーターを一年中使用して安定させるのがベストなのですが、ヒーターは安価で手に入ることが多いものの、水槽を冷やすためのクーラーはまだまだ高価なものです。しかしここでケチって安いのを購入してしまうとなかなか冷えないなんてこともあります。日本において海水魚水槽のクーラーを購入するならゼンスイ、ジェックス、ニッソー(マルカン)、テコ(エムエムシー企画)、レイシーといったブランドの冷媒ガスで冷やすものを選ぶのが安心です。

とくにゼンスイはアクアリウム用のクーラーだけでなくいけす料理店や市場の活魚水槽の冷却システムまであり、適切な機種をチョイスすることにより、ほとんどの種類の魚を飼うための水温をつくることができます。筆者もZC-500を使用して水槽を冷却していますが、殺菌灯を使用したところやや水温が温まってしまいキャパオーバーになってしまっているかもしれません。そのため後から拡張することを考えてクーラーは最初からかなり余裕のあるものを選ぶことをおすすめします。

ゼンスイ 小型循環式クーラー ZC-100α

ゼンスイ 小型循環式クーラー ZC-100α

48,700円(12/14 13:47時点)
Amazonの情報を掲載しています
ゼンスイ 小型循環式クーラー ZC-200α

ゼンスイ 小型循環式クーラー ZC-200α

67,310円(12/14 04:11時点)
Amazonの情報を掲載しています
ゼンスイ 小型循環式クーラー ZC-500α

ゼンスイ 小型循環式クーラー ZC-500α

129,899円(12/14 01:00時点)
Amazonの情報を掲載しています

水温の計測もしっかり

水温はできるだけ毎日水温計でしっかり見るようにしましょう。水槽用クーラーを25℃に設定しても30℃になっていて、調べたらクーラーがオーバーヒートしていた、なんていうこともあります。水温計はデジタルのものとアナログのものがあります。デジタルのものは大きく見やすいところがありますが、アナログのものよりも高価で、電池が必要、水に落としたら壊れてしまいます。アナログのものは電池が不要ですが割れるおそれがあるなど、どちらもメリットとデメリットがあります。

まとめ

  • カクレクマノミなどサンゴ礁の浅瀬の魚は25℃前後で飼育する
  • ハナダイなどサンゴ礁の深場のものは22℃前後がよい
  • 日本の温帯産の魚で高水温に弱いものは20℃くらいがよい
  • オーストラリアの魚は地域により好む水温が違うので注意!
  • ハワイ産やカリブ海、西アフリカ産は22℃前後がよい
  • ダンゴウオなどは水温15℃くらいを好みカクレクマノミとは飼えない
  • 深海性の生物は12~14℃で飼育する
  • クーラーのサイズは余裕をもって
  • あとから殺菌灯などを使うことも考えよう
フリーワード検索
海水魚の記事
サンゴの記事
    もっと読む