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2020.08.12 (公開 2020.08.12) 海水魚図鑑

バンデッドデムワーゼルの飼育方法~白黒模様が特徴的な飼いやすいスズメダイ

バンデッドデムワーゼルはスズメダイ科の魚で、白い体に黒い横帯が目立つ魚です。飼育はとてもやさしく、スズメダイの仲間ですが、大きめの水槽であれば他の魚とも比較的混泳させやすい種といえます。そしてサンゴにも無害ですので、リーフタンクにも入れることができます。今回はバンデッドデムワーゼルの飼育方法をご紹介します。

標準和名 なし
学名 Amblypomacentrus sp.
流通名 バンデッドダムゼルなど
英名 不明
分類 スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・Amblypomacentrus属
全長 7cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど
温度 25℃前後
水槽 45cm~
混泳 比較的おとなしく混泳も楽しめる(個体差あり)
サンゴ飼育

バンデッドデムワーゼルって、どんな魚?

バンデッドデムワーゼルは白っぽい体色に黒い横帯が2本あり、ミスジリュウキュウスズメダイやヨスジリュウキュウスズメダイ、あるいはルリスズメダイ属のミスジスズメダイなどに似ていますが、Amblypomacentrus属という別属の魚です。この仲間は3種類が知られており、フィリピン、インドネシア、ソロモン諸島、東インド諸島、ベトナムなどに3種が分布しています。

名称の問題

バンデッドデムワーゼルは「バンデッドダムゼル」ともよばれていますが、一般的に「バンデッドダムゼル」とよばれている種はダンダラスズメダイ属のスズメダイで、本種とは属からまた別のものになります。さらにややこしいことに「バンデッドダムゼル」と呼ばれるダンダラスズメダイ属の魚にも2つのタイプの種がおり、一般にはフィリピンからインドネシア、オーストラリアに生息するDischistodus fasciatus (Cuvier, 1830)をバンデッドダムゼルと呼んでいますが、オーストラリア北部にすむDischistodus darwiniensis (Whitley, 1928)もバンデッドダムゼルとよぶのでややこしいです。Fishbaseでは前者にBanded damsel、後者にBanded damsel-fishというコモンネームをつけて(一応は)区別しているようです。

ダンダラスズメダイ属の魚は入荷数が少なく入手しにくいところがあります。ホワイトダムゼルなど、一部の種が輸入されてくるくらいです。沖縄ではダンダラスズメダイが採集できますが、大きく育ち性格もきつめなので注意が必要です。

分類学的混乱

▲尾の付け根の黒い点が特徴的

一般的にアクアリウムで流通するバンデッドデムワーゼルはフィリピンなどから入るもので、フィリピンのものは背鰭の黒い帯が背鰭でつながらないという特徴により、一般的に「ブラックバンデッドデムワーゼル」と呼ばれるAmblypomacentrus brevicepsではなく、「バンガイダムゼルフィッシュ」と呼ばれるA.clarusというものに似ていますが、A.clarusは尾の付け根に黒い点がなく、黒い点があるのは地理的な変異か、別の種であると考えるのが妥当かもしれません。この仲間は世界中の海水魚店で販売されているものの、販売されているものはほぼすべてが尾の付け根に黒い点があるタイプです。今後この混乱が解消されることが望まれます。このサイトでは学名については未同定、もしくは未記載としてAmblypomacentrus sp.とします。この問題が解決すれば、また変更するかもしれません。

なおA.brevicepsは成長すると尾鰭の上下が少し伸長し、美しくなります。この種の入荷も楽しみに待ちたいところです。

バンデッドデムワーゼル飼育に適した環境

水槽

全長7cmくらいに育ちますので、45cm未満の小型水槽では難しいかもしれません。最低で45cm、60cm以上の水槽での飼育が理想といえるでしょう。混泳を考えるのであれば少なくとも60cm以上の水槽が有利といえます。

水質とろ過システム

バンデッドデムワーゼルは多くのスズメダイ同様ある程度汚い水でも耐えることはできます。しかしそれはベストな状態ではありません。45cm水槽では外部ろ過槽と外掛けろ過槽を用意してあげます。これは外掛けろ過槽は酸欠になりにくいがろ材をあまり多く入れることができず、外部ろ過槽は多くのろ材を入れられますが密閉式のろ過槽であり酸欠が起こりやすいという欠点があるからです。60cm水槽以上であれば上部ろ過槽、オーバーフロー水槽という選択肢があり格段にろ過能力が向上、飼育しやすくなります。

サンゴには無害で、ベルリンシステムなど、サンゴを飼育するためのナチュラルシステムでの相性もよいです。ただしナチュラルシステムは魚を多く入れるのに適したシステムではないので注意が必要です。

水温

水温は25℃をキープします。22~28℃くらいの範囲で一定をキープするのであれば問題なく飼育できますが、温度の変動があるのはいけません。水温の変動が大きいと丈夫なバンデッドデムワーゼルであっても体調を崩して病気になってしまうおそれがあるからです。ヒーターとクーラーをうまく使用して必ず水温を一定に保たなければなりません。

隠れ家

ほかの魚と一緒に飼育する際、バンデッドデムワーゼルやほかの魚が隠れられるような隠れ家が欲しいところです。サンゴ水槽であればサンゴの隙間やライブロックなどに隠れるのであまり問題ありませんが、魚水槽でもサンゴ岩などでしっかり隠れ家を組んであげたいものです。

バンデッドデムワーゼルに適した餌

▲「メガバイト レッド」などがおすすめ

バンデッドデムワーゼルは雑食性のようで、動物プランクトン、底生小動物、藻類などを捕食しています。飼育下ではすぐに配合飼料を食べるようになるので心配不要です。ちなみに我が家では「メガバイト」シリーズや「シグマグロウ」などを与えています。これらの餌をどうしても食べないときにはプランクトンフードを与えるようにしますが、あげすぎは水を汚すのでいけません。またほかに大きい魚、気性の激しいメギスや大型のスズメダイなどがいるとびびって餌を食わなくなることもあるので注意します。

バンデッドデムワーゼルをお迎えする

バンデッドデムワーゼルは日本には分布しておらず、購入にたよるしかありません。一般的にスズメダイの仲間は丈夫で飼育しやすいものが多いのですが、入荷直後は体調を崩していることもあるため避けなければなりません。フィリピンからの便でくるものは袋が小さめで、しかも水も少なく下手すると魚が何とか泳げるくらいというもので、これでは状態を崩しやすいといえるでしょう。

このほか、鰭がぼろぼろになっているもの(溶けているものを含む)、鰭や体表の一部が赤くなっているもの、呼吸が激しいもの、眼が濁ってるもの、鰭などに白い点がついているもの(ただし本種では鰭に白い斑点がはいることがある)などは購入してはいけません。入荷して時間がたち餌をよく食べているものが安心です。

バンデッドデムワーゼルとほかの生物の関係

ほかの魚との混泳

我が家の水槽で飼育しているバンデッドデムワーゼル

スズメダイの仲間はけっこう気が強めなのですが、ほかの魚との混泳も可能です。筆者はクマノミやほかのスズメダイ、カエルウオ、ヒメアイゴなどと一緒に混泳させています。また人によっては小型ヤッコなどと混泳させています。意外なほど多くの魚と混泳できますが、それでもおとなしいハゼなどとはやめたほうがよいかもしれません。またほかの魚と混泳させるのであれば60cm以上の水槽が適しています。

一方非常に大きなスズメダイ(ミツボシクロスズメダイなど)などは本種をいじめてしまうことがあるので混泳を避けます。このほか当たり前ですが肉食性が強い大型のバスレット、ハタの仲間、ウツボ、カサゴ、オコゼ、アンコウなどとは混泳できません。また、好む水温が大きく異なるような魚との混泳もやめましょう。

サンゴ・無脊椎動物との相性

バンデッドデムワーゼルはサンゴ水槽での飼育もおすすめです。サンゴには危害を加えることなく、どんなサンゴ水槽にも似合いますが、ウチウラタコアシサンゴなどは動きが弱い魚を捕食してしまう危険があり注意が必要です。また、クマノミと共生するような大型イソギンチャクはほかの魚を食べてしまうので一緒に飼育しないほうがよいでしょう。ディスクコーラルやマメスナギンチャクなどは問題ありません。

甲殻類は小型のものであればおおむね問題はなく、我が家ではベニワモンヤドカリやケブカガニなどと飼育しています。このほかサラサエビ類、クリーナーシュリンプ、小型ヤドカリなどであれば問題ないでしょう。いけないのは大型ヤドカリ、大型のカニ、大型のイセエビなどで、これらは肉食性が強く魚を捕食してしまう危険性があるからです。またクリーナーシュリンプもオトヒメエビは巨大なハサミをもち、夜に魚をバリバリ食べてしまうのでバンデッドデムワーゼルと一緒に飼育するのは避けたほうが無難でしょう。

バンデッドデムワーゼル飼育まとめ

  • 白と黒が特徴的なスズメダイの一種
  • 黒い横帯が背鰭でつながらず黒い点が尾の付け根にある
  • 英語で「バンデッドダムゼル」といえば別の種をさす
  • 水槽は45cm以上がおすすめ。混泳なら60cm以上の水槽を
  • 小型水槽では外掛けろ過槽と外部ろ過槽を使用し、大きめの水槽は上部ろ過槽をメインに
  • 水温は25℃前後。一定の水温を保つことが大事
  • ライブロックなどの隠れ家を入れてあげたい
  • 餌はよく食べてくれる
  • 調子を崩しやすいので入荷直後のものは購入しない
  • 鰭がぼろぼろのものやただれがあるもの、明らかにおかしい状態のものは購入してはいけない
  • スズメダイの仲間としてはほかの魚と比較的組み合わせやすい
  • サンゴには無害。大型の甲殻類との飼育は避ける

2020.08.11 (公開 2020.08.10) メンテナンス

ライブロックに付着した海藻は取り除いたほうがいいの?

ライブロックにはさまざまな生物がついていることがあります。海藻もそのライブロックにつく生物のひとつで、アオサやイワズタ、サボテングサのようなものから、ハネモなど増えすぎて困ったことになってしまうようなものもいます。今回はライブロックについている海藻やその対処方法、逆に増やすにはどうすればよいのかをご紹介します。

ライブロックに生える海藻

海藻の種類

ライブロックにつく海藻にはいろいろなものがあるのですが、多くは緑藻で、次に紅藻が多く、褐藻などはあまり見ることができません。また、顕花植物である海草の仲間は砂の中に根を生やしていたりして、やはりなかなか見られるものではありません。

アオサの仲間

▲ライブロックについていたアオサの仲間と思われるもの

アオサの仲間は緑藻の仲間で、ライブロックによくついています。食用の海藻としても有名で、沖縄近海のものも現地でアーサといって食用にしますが、ライブロックに付着していたものはさすがに食べないほうがいいかもしれません。輸送中に腐ってたり、有害な生物が付着している可能性もあるからです。一方アイゴやハギなどはおいしそうに食べてしまいます。飼育はしやすいほうではないのですが、逆に厄介者にもなりにくい海藻です。

イワズタの仲間

▲左はクビレズタ、右はタカツキズタか?

こちらも緑藻の仲間で、「カウレルパ」とも称されます。いくつかの種類がアクアリストにも知られています。主に販売されているのは「ウミブドウ」とも呼ばれ、食用にもなっているクビレズタで、このほかにもいくつかの種がライブロックなどに付着する形で飼育されていることがあります。ヘライワズタやヨレズタ、スズカケズタ、タカノハズタなどの種類があります。

増殖しやすい海藻で、ときに厄介者にもなりますがサンゴ水槽ではサンゴに根のような部分が張り付いて厄介者扱いされることもあります。アイゴやニザダイにとっては大好物であり、これらの魚がいるといつの間にか無くなってしまうことも多いといえます。また一斉に溶けて消失してしまうということもあります。海藻のリフュージウムを作るのであれば丈夫なヘライワズタやクビレズタがおすすめです。

ハネモの仲間

▲糸状のハネモと思われるもの

ハネモの仲間も緑藻の仲間です。この仲間は時に爆発的に増殖して厄介なことになります。しっかりしたもののほか、細い糸状のものなどもおり、糸状のものはヤドカリなどが食べてくれますが、この糸状のものは分類学的には違う仲間かもしれません。我が家では小型のヤドカリがこの糸状のハネモを捕食したためか、ハネモがいつの間にか消えてしまいました。ヤドカリはほかにもやっとしたコケを食べることもあるため入れておいて損はありません。ただしヤドカリの種類によって食べるか食べないかは異なり、サンゴヨコバサミという種類はよく食べてくれました(導入後いつの間にか消滅)。またウミウシの仲間のレタススラッグなどもハネモを食べてくれるとされます。

シオグサの仲間

ライブロックについていたシオグサ

シオグサの仲間もウミズタ同様海藻の仲間で、非常にカタいのが特徴です。カタいのであまり食べる生物もおらず、ヤエヤマギンポなどはたまにシオグサを食んでいるように見えることがありますが、これはシオグサの表面に生えるコケなどを食べているのであってシオグサを食べているわけではありません。ライブロックを海水から出して、手でシオグサをむしるのが確実でしょう。アイゴ類は食べてくれることもあれば食べないこともあるので注意します。シオグサ対策についてはこちらをご覧ください。

サボテングサの仲間

サボテングサも緑藻の仲間で、特徴的な形からよく飼育されているものです。安定したサンゴ水槽では非常に早いスピードで増殖し、トリミングが必要になるほどよく増えます。大変丈夫で飼育しやすく、リフュージウムなどにも最適といえます。

紅藻・褐藻の仲間

ライブロックには紅藻の仲間がついていることもあります。しかし紅藻の仲間は比較的飼育しにくいものが多く、あまり初心者向けではありません。褐藻の仲間も海水魚水槽ではあまりメジャーではないものの、水槽では厄介者になりやすいアミジグサなどは褐藻の仲間です。アミジグサはあまり食べてくれる生き物がいないようで、とにかく水槽に持ち込まないことが最も重要な対策となります。

ライブロックに生えた海藻を増やしたい!

▲海藻を増やすなら添加剤で鉄分を補給したい

ライブロックに生える海藻の中でも緑藻は比較的飼育しやすいものが多いです。イワズタの類やサボテングサは見栄えもよく飼育しやすいため飼育しているアクアリストも多いです。

海藻をうまく増やすためには添加剤がほしいところです。ヨウ素やカルシウム、ストロンチウムといったサンゴと同様のものが必要になるほか、鉄分も必要になってきます。ただし鉄分は「ブライトウェル フェリオン」(マーフィード)など専用の添加剤もありますが、入れすぎるとコケの大発生にもつながりやすいため、添加はほどほどにします。個人的には同じブライトウェルシリーズの「リプレニッシュ」で十分のように思います。

そのほかの条件として、水流は淀まないていどのものが必要になります。硝酸塩やリン酸は多少検出されても問題ありません。ただし水温が高いのはよくありません。適した水温は大体25℃前後ですが、種類によってはより低い水温で維持すべきものもいます。

ライブロックに生えた海藻の対策

むしり取る

ライブロックに付着する海藻を除去するのに最も効率がよいのがこのむしり取る方法です。ただし種類によっては繁茂してしまうとむしりとるだけでは対処できなくなってしまうような種類の海藻もあります(とくにアミジグサなど)。このような海藻は持ち込まないに限ります。もし可能であればライブロックなどをいったん水槽から出してピンセットなどで摘まんで駆除するのがベストでしょう。

生物兵器に頼る

▲アイゴの仲間(写真はヒメアイゴ)やハギは海藻を好んで食べる

アイゴの仲間やハギ(ニザダイ)の仲間、カニの一種であるエメラルドグリーンクラブ、小型ヤドカリ(特にヨコバサミなど)などは海藻を好んで食べる習性をもっています。

しかしこれらの生物兵器は時として「無差別大量破壊兵器」になってしまうこともあります。ニザダイの仲間を入れるということは同時に温和な魚を入れにくいということを意味しますし、ニザダイ同士は海の中では群れていても水槽内では激しいケンカをするからです。ウニの仲間も海藻の除去に効果があるものの、レイアウトを破壊したり、強い歯や棘でアクリル水槽をかじったり傷をつけたりするおそれもありますので、入れる前にはよく考えましょう。

ライブロックに生えた海藻まとめ

  • ライブロックに様々な種類の海藻が生えていることがある
  • アオサやイワズタなどの緑藻類が多い
  • アオサやイワズタ、サボテングサは間引きやすく厄介者になりにくい
  • ハネモやシオグサなどは増えすぎて厄介者になりやすい
  • 紅藻・緑藻は少ないが厄介なアミジグサは褐藻類に含まれる
  • 育成するなら鉄分の添加は必須
  • 問題ありそうな海藻を見つけたらむしってしまうとよい
  • アイゴやハギ、ヤドカリなど生物兵器の投入も有効
  • 生物兵器が無差別破壊兵器になることも

2020.08.07 (公開 2020.08.07) 海水魚の採集

和歌山~九州の太平洋岸でみられるギンポ・カエルウオの仲間

和歌山から九州太平洋岸の磯では関東の磯よりも多くのカエルウオの仲間を見ることができます。この海域は温暖でサンゴが多くみられ、サンゴに依存するタイプのカエルウオも見られます。一方浅いタイドプールでも様々なカエルウオの仲間が見られ、これらを飼育するのも楽しいものです。しかし中にはニセクロスジギンポやセンカエルウオのように混泳に注意しなければならないものがいます。今回は和歌山~九州太平洋岸の磯で見られるカエルウオをご紹介します。

和歌山~九州太平洋岸の磯

▲高知県の磯で見られたサンゴとイバラカンザシ

紀伊半島から四国の太平洋岸、九州の日向灘沿岸には暖海性の魚が多くみられるようになります。そしてこの地域では磯の浅い場所でもサンゴが見られるようになります。キクメイシ類、シコロサンゴ類、ミドリイシ類と種類は多くはないのですが、このようなサンゴに依存するタイプの魚も見られ、その中には今回は紹介できなかったものの、タテガミカエルウオの仲間やセダカギンポが含まれます。またサンゴがあるということは黒潮があたるということでもあり、水温も暖かく、おそらく多くのカエルウオの仲間が越冬しているのではないかと思います(温帯性のカエルウオはもちろん越冬している)。ただし、関東の磯で見られる種のうちナベカなどは少なくなっているようです。

関東地方で見られるギンポ・カエルウオについてはこちらをご覧ください。

和歌山~九州太平洋岸で見られるギンポ・カエルウオ

「ギンポの仲間」の定義

「ギンポ」は感じで銀宝と書きます。これは硬くておれにくいものを「ギンポオ」とよび、死後硬直したギンポが硬くなったものをそう呼んでいたものを、最後のオが取れてギンポという名前になったともいわれています。しかしこの名前で呼ばれるものは2つのグループに分かれており、片方はゲンゲ亜目、もう片方はギンポ亜目に含まれます。前者はゲンゲ科、タウエガジ科、オオカミウオ科などが含まれています。

磯採集でお馴染みのものではダイナンギンポや、春の磯で多く見られるコモンイトギンポ、東京では天ぷらなどでお馴染みのギンポなどが含まれています。一般にアクアリストにお馴染みのカエルウオ、ヤエヤマギンポなどは後者のギンポ亜目の魚です。ここでは「ギンポ亜目」の魚を扱います。もっとも、和歌山から九州太平洋岸の磯ではゲンゲ亜目の魚は極めて珍しいものといえます。

イソギンポ

▲和歌山県で採集したイソギンポ

イソギンポは夏の終わりには数cmほどの小型個体も多くみられるようになり、主にブイなどについていることが多いです。小さいのはかわいいのですがコケは食べずゴカイなどは食べてしまうこともあるため、注意が必要です。またある程度の大きさになると大きな犬歯が生えるようになるので、つかもうとするとかまれることもありその点も注意します。

タテガミギンポ

▲高知県で採集したタテガミギンポ

後頭部に糸状の皮弁があるのが特徴のイソギンポ族の一種です。またタテガミギンポはイソギンポとは異なり大きな犬歯をもちませんので、その点でも見分けられます。基本的には丈夫で飼育しやすい魚ですが、カエルウオとは分類的に離れているため、コケはあまり食べてくれないので注意が必要です。

カエルウオ

▲日南海岸で採集したカエルウオ

関東の磯ではカエルウオの仲間が少なく、特に房総半島の潮だまりで見られるカエルウオの仲間はほとんどカエルウオのみでしたが、紀伊半島以南では幾分種類が増えます。しかしながら紀伊半島、四国沿岸、九州沿岸においてもこの種が最も多いカエルウオ族魚類であることは疑いの余地がないでしょう。

性格はこの地域で採集できるカエルウオの中でもかなりキツく、注意する必要がありますがスズメダイ類やクマノミ類、ヤッコ、ハギ、ハナダイなどにとってはよいタンクメイトになります。丈夫で買いやすく、もちろんコケはよく食べてくれます。ただし水槽にしっかりフタをしないと飛び出して死んでしまう可能性があります。また琉球列島ではよく似ているニセカエルウオがいますが、この種も和歌山や高知などでも採集されています。ただし外見で見分けるのは難しいといえるでしょう。

センカエルウオ

▲高知県で採集できたセンカエルウオの小型個体

センカエルウオもカエルウオの仲間で、灰色の体に黒い縦線が体に入るのが特徴です。サンゴ礁の潮だまり、ごく浅い場所にみられ、四国や日南海岸での潮だまりで採集できます。しかしカエルウオの仲間よりも臆病で、混泳水槽での飼育難易度は高いです。本種を飼育するのであればカエルウオの仲間は本種のみにしたほうが早く餌付くようになるでしょう。また飛び出しにも注意が必要です。

タネギンポ

▲高知県のタイドプールで採集したタネギンポ

タネギンポはカエルウオのようにも見えますが、ほほの部分の模様がカエルウオと異なるので見分けることができます。また雄の眼の上の皮弁もカエルウオとは大きく異なっています。性格はカエルウオ同様強めで、弱い種とは混泳させられません。そしてカエルウオ同様飛び出しやすいのでフタはしっかりしておきましょう。飛び出しにさえ気を付ければ飼育は難しくなく、よくコケも食べてくれます。

シマギンポ

▲シマギンポ

シマギンポはヤエヤマギンポ属の種類で、背中の白い斑点と腹部の長円斑、そして胸鰭基部付近の大きな白色斑が特徴です。ヤエヤマギンポは主に奄美諸島以南にみられますが、紀伊半島以南の太平洋岸や長崎沿岸でも見ることができます。写真の個体は高知県のタイドプールで採集したもので、岩の隙間にいたものを採集しました。片方の手に網をもちシマギンポが隠れた岩の隙間の出口に網をおいて、もう片方の手でシマギンポを追い込む方法で採集しましたが、この方法はほかのカエルウオの仲間を採集するのにも適しています。もちろんヤエヤマギンポと同じく、コケをよく食べてくれます。

ロウソクギンポ

▲ロウソクギンポ

和歌山以南の磯で見られる種で、体に青白店がある種です。眼の上にアンテナのような皮弁を有しているのも特徴です。また雄は頭部が黒くなりよく目立ちます。ただしこの手の魚はコケとりとして入れられることも多いのですが、本種はカエルウオほどはコケをたべてくれません。

クモギンポ

▲高知県で採集したクモギンポ

和歌山~九州太平洋岸の磯ではナベカ族の魚は少ないのですが、このクモギンポは比較的多くみられるものです。この地域の磯ならほとんどどこにもいそうな種類といえそうです。生息場所も波打ち際のごく浅い潮だまりにたくさん見られますが複雑な動きをしたり危険が迫ると孔の中に入ったりして意外と採集しにくい種といえます。千葉県では多いナベカはこの地域では少なく、和歌山でも北のほうに多いようですが、南方ではなかなか少ない種です。

ニジギンポ

▲ニジギンポ

ニジギンポは磯というよりは流れ藻や浮遊ブイなどについているものを採集することが多いといえます。イソギンポ科の魚の卵は岩などの基質に産み付けられるため長い距離を回遊することはあまりないのですが、本種は流れ藻などの浮遊物につきかなりの距離を移動できます。飼育については飛び出すことがあるためしっかりフタをする以外に気を付けることはないですが、混泳ではほかの魚の鰭をかじったりしますので単独飼育が無難でしょう。また下顎の歯はかみそりのようになっており注意しなければなりません。

カモハラギンポ

▲水族館で飼育されているカモハラギンポ

カモハラギンポはヒゲニジギンポの仲間で、日本の太平洋岸でよくみられる種です。写真は水族館で撮影したものなのですが、高知の磯や漁港などではこの魚をよく見ます。この色彩で同属の多くの魚と見分けられますが、沖縄のニジギンポには本種によく似た模様のものがいて、擬態の可能性もあります。牙に毒をもつ本種にニジギンポが擬態するのか、下顎にカミソリのような大きな牙をもつニジギンポに本種が擬態しているのかは不明ですが、いずれにせよ混泳水槽では入れにくい魚です。また、カモハラギンポは流れ藻につくようなことはなく、中層をふらふら泳いでいます。

ニセクロスジギンポ

▲ニセクロスジギンポ

ホンソメワケベラによく似た種で、擬態と考えられています。千葉県以南に分布する魚ですが、主な分布域はインド―太平洋域の熱帯サンゴ礁であり、南へ行けば行くほど遭遇しやすい魚といえます。このニセクロスジギンポがホンソメワケベラに擬態する理由としては、大型魚の体表につく寄生虫を食ってくれるホンソメワケベラは大型魚に襲われにくいということで似た模様にして身をまもり、そして同時にほかの魚の皮膚や鱗、鰭などを食いちぎるというところがあげられます。この修正は水槽の中でも見られますので、上の2種同様、混泳水槽には入れたくない魚といえます。

ヘビギンポ

▲ヘビギンポ

ヘビギンポは関東沿岸でも見られますが、和歌山や高知の沿岸でも見ることができます。ただし高知沿岸などではクロマスク属の魚も浅瀬に多くみられるため、関東の磯よりも少ないような気もします。輸送に弱く飼育に耐えられるものを入手することは難しいのですが、一度慣れれば容易に飼育できます。

クロマスク属

▲クロマスク属の魚

クロマスク属の魚はサンゴ礁域や岩礁に生息していますが、伊豆などでは多くありません。ヨゴレヘビギンポか、アヤヘビギンポ、もしくはアカヘビギンポと思われますが、写真ではわかりにくいところがあります。この種は海の中ではきれいなオレンジから褐色のものが見られるのですが、この色を水槽で再現するのは難しいようです。さらに輸送にも弱いなど注意点が多く初心者向けとはいえないところがあります。

和歌山~九州太平洋岸の磯で見られるギンポ・カエルウオ科魚類を飼うときのポイント

餌の注意点

▲カエルウオやタネギンポなどカエルウオ族におすすめの「海藻70」

餌は動物食性のもの、雑食のもの、雑食だが藻類を中心に食うものの3タイプがあります。動物食性のものはニジギンポなどの仲間でこのような種はほかの魚の鰭をつついて食べたりするものもいますが、多くは配合飼料になれます。雑食のものはクモギンポ、タテガミギンポ、ヘビギンポなどでこれらも各種配合飼料で問題ありません。藻類を中心とした食性をもつものはカエルウオやタネギンポ、シマギンポなどで、これらの種類は藻類食魚類向けの餌を与えます。キョーリンの「海藻70」が最適です。またセンカエルウオのような臆病な種は強いカエルウオと一緒だと餌を食べないこともありますので、まずはそのような気の強い種を別水槽などに移してから与えるとよいでしょう。

飛び出し注意

カエルウオの仲間は水槽から飛び出して死んでしまうという事故が起こりやすいです。そのため水槽の上にしっかりとフタをしめるようにします。またニジギンポ系の種も飛び出すことがあるため、この仲間全般にフタは必須といえます。

混泳はどうする?

カエルウオやタネギンポは多くの種類と飼育できますが、やや性格がきついので他のカエルウオとの混泳は避けたほうがよいでしょう。シマギンポはそれほど性格がきつくはなく、多くのカエルウオと飼育できそうです。センカエルウオはやや臆病で、ホホグロギンポなどハナカエルウオ属魚類と似たところがあります。

また、上記の通りニジギンポやカモハラギンポ、ニセクロスジギンポなどはほかの魚をつついたり鰭や鱗をかじるためほかの魚と混泳させないほうが無難でしょう。そのため、いろいろな魚を飼いたい初心者にはおすすめしません。

和歌山~九州太平洋岸のギンポ・カエルウオまとめ

  • 関東沿岸よりも多くの種類を見ることができる
  • イソギンポやタテガミギンポはコケはあまり食わないが飼いやすい
  • カエルウオやタネギンポはコケをよく食うが性格はきつい
  • シマギンポはヤエヤマギンポに近い仲間でコケをよく食う
  • センカエルウオは臆病でカエルウオとは混泳させられない
  • カモハラギンポやニジギンポはほかの魚をかじる悪癖あり
  • ニセクロスジギンポは魚の鱗や鰭、皮膚をかじる
  • 藻類食のものは「海藻70」などを与えたい
  • フタはしっかりとする
  • カモハラギンポなどはほかの魚との混泳はすすめられない

2020.08.06 (公開 2020.08.05) メンテナンス

赤ゴケ「シアノバクテリア」の対策と駆除方法

マリンアクアリウムを楽しんでいると、あるときライブロックや砂の上に赤紫色のコケがべったり、なんていうことがあります。この赤紫色のコケはシアノバクテリア、もしくは藍藻(らんそう)と呼ばれるもので、写真のタイプのシアノバクテリアには毒があるためカエルウオなども食べてくれず、増殖すると困ったことになってしまいます。今回はこのシアノバクテリアの対策についてご紹介します。

シアノバクテリアとは

マリンアクアリウムで用いられる水槽で多くみられるタイプのシアノバクテリアは「赤ゴケ」とも呼ばれるように赤紫色をしたものですが、ほかにも緑色のものなどいろいろな種類が知られています。実際にはコケの仲間ではなく、名前に「バクテリア」とあるように細菌の仲間のようです。日本では淡水域で藍藻類が大量に発生し水が濃い緑色になってしまう現象(アオコ)がよく知られていますが、このアオコもプランクトン様の浮遊性藍藻が引き起こすものです。多くの場合べっとりしており、砂の上やライブロックの上、水槽の壁面に張り付きます。

これほど厄介なシアノバクテリアですが、アクアリウムの役に立つこともあります。

例えばシアノバクテリアの一種に「スピルリナ」というものがいますが、キョーリンから出されている人気の配合飼料「メガバイト グリーン」などにも配合されています。このスピルリナはもともと食用にもされてきたもので、必ずしも「シアノバクテリア=アクアリウムに悪」ということではないといえますが、この記事ではこれ以降、特に記述がない限り水槽で発生したら有害になりうるシアノバクテリアについてご紹介します。

シアノバクテリアの害

シアノバクテリアが発生すると、ライブロックや底砂を覆うようにして増えていきます。そうなると美観を損なうだけでなく、サンゴを覆ってしまい、その部分のサンゴが死んでしまうこともあります。さらに非常に早いペースで成長していきます。そのため、発生したら早めに水槽から取り除かなければなりません。

シアノバクテリアの対策

▲シアノバクテリアのあまりの繁殖力にメガネベニハゼもびっくり?

一般的に海水水槽に発生する赤いシアノバクテリアは毒があるため、カエルウオなどの魚は食べてくれません(もちろん「メガバイト」などの海水魚の餌に配合されるスピルリナなどは無毒です)。そのため、魚に食べてもらう以外の方法による対策を考えることになります。放置して置いたら水槽の底面が一面真っ赤っ赤・・・なんてこともあります。そのため早いうちに対処しなければなりません。

除去剤

▲ウミアザミは薬剤には弱かった

各メーカーからシアノバクテリアを除去する薬剤が市販されており、その大部分がサンゴにも無害であるとうたっているものの、実際にはサンゴに害を及ぼすことがあり、我が家の場合は繊細なソフトコーラルであるウミアザミ、丈夫なLPSであるネジレタバネサンゴなどを死なせてしまい、このほかシコロサンゴなど丈夫なサンゴも色がおかしくなるなどの問題が出てしまいました(元の色に戻るまで半月くらいかかった)。そのため使用するとこのようなことも起こりうるという認識を持たなければなりません。ちなみに影響を受けたのはサンゴや海藻だけで、魚には問題がありませんでした。

生物兵器

▲カエルウオの仲間は食べてくれない

「コケ」といえばカエルウオやヤドカリ、ニザダイなどに対処してもらうことが一般的なのですが、シアノバクテリアは毒性があるため、食べてくれることはありませんでした。アメフラシの仲間であるタツナミガイという種がシアノバクテリアを食べてくれるともいわれますが、筆者は確認していません。アメフラシの仲間ですので紫色の汁を出すこともあり、注意が必要です。

ナマコやマガキガイ、ベントス食性のハゼはシアノバクテリアは食べませんが砂を攪拌してくれますので少しは対策にもなるでしょう。ただしナマコはつぶれたりして死んでしまったら魚にとって強毒の「サポニン」を出すなど、安易に入れないほうがよいともいえます。

根気よく吸い出す

筆者の経験上、地味ですがもっとも効果があるように思います

ホースやエアチューブ、あるいはスポイトなどを使用し、発生したらそのたび、地道に水槽から出していくようにします。また少し時が経過すれば復活するため、その時にはまた吸い出すことになります。これを繰り返すことにより、やがて生えなくなっていくことが多いように思います。ちなみに筆者は比較的長めのスポイトを使用しています。短いものより長いものの方が扱いやすいように感じます。

シアノバクテリアの予防

シアノバクテリアにもいろいろ種類があるため、この予防方法が当てはまらないこともあります。ご了承ください。

水かえ

シアノバクテリアは「水かえなどをさぼっていると発生する」「硝酸塩やリン酸塩が多いと出てくる」ともいわれています。確かに水かえなどをさぼって硝酸塩が多くなった水槽では発生しやすいでしょう。しかしながら、低い硝酸塩濃度を維持している水槽でも発生することがあります。例えばミドリイシがうまく飼育できているような水槽でもシアノバクテリアが発生することがあり、そのような場合はリン酸塩が蓄積されている可能性も高いですので、水かえをして水槽から排出することも重要なのです。リン酸塩は主に餌から入ってきますが、餌を全くやらない、というわけにもいかず、また、吸着剤を使用するといっても限度がありますので、やはり定期的な水かえが重要といえます。

殺菌灯

▲殺菌灯の効果を過信してはいけない

紫外線殺菌灯「ターボツイスト」を日本で販売している神畑養魚によれば、同製品は淡水水槽内のアオコの除去抑制効果をアピールしています。たしかに効果はあるように思うのですが、発生したシアノバクテリアを抑制するのは難しいです。アオコは水中に漂う形でいるのに対し、シアノバクテリアはサンゴ岩やライブロックなどに付着しているから、シアノバクテリアを含んだ水が殺菌灯の中を通らないからです。なおカバーに入っていない、直接照射するタイプの殺菌灯も販売されていますが、ライブロックに直接紫外線を照射すればシアノバクテリアも死ぬでしょうが、ほかの有益な生物も死んでしまう(魚も死ぬし人体にも有害)ので絶対に直接照射してはいけません。

水流

水流ポンプをしっかり回してよどむような場所を作らないということも対策の一つとされます。ミドリイシなどを飼育sているサンゴ水槽ではしっかり水流がいきわたっているはずですが、それでも水があまりしっかりといきわたっていないところにシアノバクテリアがベットリということもありますので、水流ポンプを使って水槽内の水をしっかりと循環させる必要があります。それでも発生してしまったら、やはりホースなどを使用して水槽から取り除くようにしたいものです。

シアノバクテリアまとめ

  • 「赤ゴケ」「藍藻」などと呼ばれるが藻類ではなく細菌に近い仲間
  • すぐ増殖し底砂やライブロック、生きたサンゴを覆ってしまうことも
  • 毒があるのでカエルウオなどは食べてくれない
  • 除去剤はサンゴに無害とされているものでも死なせてしまうことがある
  • カエルウオやニザダイ、アイゴなどは食べてくれない
  • タツナミガイは食べるかもしれない
  • スポイトやホース、エアチューブなどで吸い出すのが確実
  • 水かえが有効なケースもあるが低栄養塩の環境で出現することも
  • アオコ退治には殺菌灯が有効だが海水水槽で増殖したものにはあまり効果なし
  • 水流は大事。よどみない水流を作りたい

2020.08.15 (公開 2020.08.03) 海水魚図鑑

淡水と海水の「エンゼルフィッシュ」の違い

淡水の熱帯魚を飼育されているアクアリストであれば、カワスズメ科の魚でよくのびた鰭を有するエンゼルフィッシュはお馴染みの魚といえます。しかし熱帯・亜熱帯のサンゴ礁にすみ、やはりアクアリウムで飼育される「エンゼルフィッシュ」と呼ばれている魚がいます。

今回は淡水の熱帯魚でエンゼルフィッシュと呼ばれている魚と、海水の熱帯魚でエンゼルフィッシュと呼ばれている魚の違いについてご紹介します。

海水のエンゼルフィッシュ

▲タテジマキンチャクダイ(英名Emperor angelfish)

まずこのサイトは「海水魚ラボ」ということで、海水のほうの「エンゼルフィッシュ」からご紹介します。

マリンアクアリウムの世界で「エンゼルフィッシュ」と呼ばれているのはヤッコの仲間です。正確にいえばキンチャクダイ科の魚を指します。分類学的にはスズキ目・スズキ亜目の魚で、チョウチョウウオ科の亜科とされていたこともありましたが、前鰓蓋のところに大きな棘があるのでチョウチョウウオ科とは見分けられます。インド洋・太平洋・大西洋に生息しており、特にインド―中央太平洋に種類が多いです。小型のものから全長50cm近くになる大きいものまで知られており、食用ともされます。最近はインドネシアなどで養殖もおこなわれていますが、これは食用ではなくアクアリウムのための養殖です。

なお、単に「エンゼルフィッシュ」と呼ばれることはなく「~エンゼルフィッシュ」と呼ばれることがほとんどといえます。例えば「フレームエンゼルフィッシュ」といった具合です。ただし日本に生息する魚では英語名ではなく種の標準和名で呼ばれることが多いです。例えば写真の魚では「エンペラーエンゼルフィッシュ」よりは種の標準和名である「タテジマキンチャクダイ」、もしくは「タテキン」、幼魚は「ウズマキ」と呼ばれることが多いといえます。例外はアヤメヤッコとフカミヤッコで、それぞれ「コリンズエンゼルフィッシュ」「オーネイトエンゼルフィッシュ」「ベルスエンゼルフィッシュ」(もしくは略してコリンズ、ベルス)などと呼ばれています。

淡水のエンゼルフィッシュ

▲エンゼルフィッシュ

一方淡水のエンゼルフィッシュはスズキ目・スズキ亜目(ここまではおなじ)のカワスズメ科に含まれています。分類学的にはヤッコよりもスズメダイに近い仲間とされており、スズメダイ科とともにベラ亜目に入れられることもありますが、これについては否定的な意見が多いです。これら2つの科をスズキ亜目からはなしてもベラ亜目には含めないことも多いです。

カワスズメ科は主に南米・アフリカ(一部アジアにも達する)に広く分布する魚で、特に北米やアジアにも移入されています。理由は食用魚・釣り魚で東南アジアの食品店では養殖されたティラピア類が見られますが、逸出個体も多く見られます。釣り魚として有名なのは南米に生息するアイスポットシクリッドの類ですが、これらもいろいろな地域に放されてしまっているようです。いずれにせよ淡水魚(に限らず海水魚もそうですが)の野外への逸出を招くようなタイプの養殖方法は見直すべきかもしれませんし、もちろん釣って面白いからといって野池に放して釣るのは論外といえます。だれも寄り付かないようなため池であっても大雨などで河川へ逸出するおそれもあります。

ちなみにエンゼルフィッシュの仲間(Pterophyllum属)には3種類が知られています。(Pterophyllum altum, P.leopoldi, およびP. scalare)が知られていますが、一般に「エンゼルフィッシュ」として知られているのはP. scalareです。またエンゼルフィッシュはいくつかの改良品種が作出され、筆者も飼育していました。とても丈夫で美しく、かつ飼育もしやすいため大昔からアクアリストに人気のある種類です。ただし小さい魚に対しては気が強いこともあります。その辺はスズメダイと似ています。

一般的に「エンゼルフィッシュ」といえばどちら?

世界的な魚類データベースである比「Fishbase」のコモンネームで「Angelfish」と呼ばれるのは海産のキンチャクダイ類であるHolacanthus bermudensisです。一方淡水産のエンゼルフィッシュは「Freshwater angelfish」というコモンネームを採用しています。しかしながら基本的に「エンゼルフィッシュ」といえば一般的に淡水のほうを指します。そのため「エンゼルフィッシュを飼育しているんですよ~」と言ってくる人がいれば、その人は淡水のエンゼルフィッシュを飼育していると考えてよいでしょう。なお筆者も「フレッシュウォーターエンゼルフィッシュ」という名前でエンゼルフィッシュを販売しているところを見たことはありません。同じ属の近縁種もPterophyllum altumは「アルタムエンゼル」、P.leopoldiのほうは「ドゥメリリィエンゼル」(旧学名から)と呼ばれ、最も普通に飼育されるP.scalareと区別することができます。ただし品種名で販売されることもあります(ブラックエンゼル、ダイヤモンドエンゼルなど)。

一方H. bermudensisは日本国内では「ブルーエンゼルフィッシュ」と呼ばれることが多いです。また海外でも少なくともアクアリウム界隈ではBlue angelfishの名称で通じます。もしくはこの種の産地である大西洋のバミューダ諸島にちなみ「Bermuda blue angelfish」と呼ばれることも多いです。

エンゼルフィッシュまとめ

  • 淡水の熱帯魚で「エンゼルフィッシュ」と呼ばれるものと海水の熱帯魚の世界で同名で呼ばれるものは全くの別種
  • 海水の「エンゼルフィッシュ」はヤッコの仲間を指す
  • 淡水の「エンゼルフィッシュ」はカワスズメ科の魚を指す
  • 一般的に「エンゼルフィッシュ」といえば淡水魚のほうを指すことが多い

2020.07.31 (公開 2020.07.31) 海水魚図鑑

ヘビギンポの飼育方法~磯魚で容易に採集できるがコケは食べてくれない

ヘビギンポは国内の広い範囲に分布するギンポ亜目の魚です。カエルウオやヤエヤマギンポとは異なり、ヘビギンポ科に属する魚です。見た目上最大の特徴は3つ背鰭があることで、この特徴をほかにもつのはタラ類くらいで珍しいものといえます。磯に生息する魚で磯採集の際にヘビギンポも採集できるのですが、カエルウオなどと異なり採集直後は飼育しにくいところがあります。今回はこのヘビギンポの飼育方法をご紹介します。

標準和名 ヘビギンポ
学名 Enneapterygius etheostomus (Jordan and Snyder, 1902)
英名 不明
分類 条鰭綱・スズキ目・ギンポ亜目・ヘビギンポ科・ヘビギンポ属
全長 5cm
飼育難易度 ★★★☆☆
おすすめの餌 クリーンコペポーダホワイトシュリンプ
温度 23℃前後(本州産)、25℃前後(沖縄産)
水槽 45cm~
混泳 おとなしい魚との混泳が最適。ヘビギンポの口に入るような魚や肉食魚などはだめ
サンゴとの飼育 概ね可。イソギンチャクなどは要注意

ヘビギンポって、どんな魚?

▲房総半島の磯でみられたヘビギンポ

ヘビギンポはほとんど日本各地に生息するスズキ目・ギンポ亜目・ヘビギンポ科の魚です。分布域は広くて青森県以南の日本海岸、千葉県以南の太平洋岸、琉球列島に見られ、海外では韓国、台湾、香港などに生息します。雌雄で体色が異なり、特に雄は黒い体に白い線が入るという独特な色彩になります。

食性は雑食性で藻類も少し食べるようですが、基本的には動物食性が強くコケはほとんど食べてくれないので注意が必要です。

ヘビギンポの鰭の特徴

▲ヘビギンポの背鰭

ヘビギンポはカエルウオやヤエヤマギンポなどと同じギンポ亜目の魚ですが、これらの魚とことなり、ヘビギンポ科に分類されます。この科の魚の最大の特徴は背鰭で、多くの魚は背鰭が1基、もしくは2基ですが、ヘビギンポの仲間は3基の背鰭をもち、英語ではこの仲間をTriplein(3つの鰭)と呼びます。ほかに背鰭を3つ有するものとしてはタラの仲間くらいで珍しいものといえます。一方ヘビギンポ科の魚は臀鰭が一つしかないのですが、タラの仲間は臀鰭が二つありますので見分けがつきますが、ヘビギンポとタラの類では臀鰭の数のほか、体色も、体つきも、生息環境も大きさも全くことなるので、見分けに苦労することはまずないでしょう。

よく似たミヤケヘビギンポ

ミヤケヘビギンポは名前に「ミヤケ」とあるように、三宅島や八丈島にのみ生息するヘビギンポの仲間です。この種もそれらの島々にある潮だまりなどで普通にみられるものです。一方八丈島にもヘビギンポはおり、単に置き換わっただけというわけではないようです。この種とヘビギンポの差は微妙なのですが、体側の茶色い帯の上に白い点があるのが特徴といえます。また雄の婚姻色はオレンジ色になり、非常に美しい魚です(ただし水槽では色が出ないことが多い)。なお、飼育はそれほど難しくなく、採集した個体を何年も飼育していました。

ヘビギンポに適した飼育環境

水槽

ヘビギンポは小型水槽でも飼育できますが、特に初心者の場合は45cm以上の水槽での飼育が望ましいでしょう。また複数飼育する場合やほかの魚と飼育するのであれば60cm以上の水槽が安心でしょう。

水質とろ過システム

ヘビギンポは水質の変化に弱いイメージがあります。そのためできるだけ高い能力をもったろ過システムを構築しなければなりません。小型水槽では外掛けろ過槽と外部ろ過槽の両方を使用し、60cm水槽では上部ろ過槽をメインにするのが間違いありません。もちろん圧倒的なろ過能力をもつオーバーフロー水槽も望ましいです。

ヘビギンポの仲間はサンゴの上に乗っかることがありますが、悪影響は与えないのでサンゴ水槽で飼育できます。ただしベルリンシステムなどは魚をたくさん入れられるようなものではないので、入れすぎに注意します。

水温

基本的に温帯の磯で採集された個体は23℃前後、沖縄などのサンゴ礁で採集された個体は25℃前後で飼育するとよいでしょう。もちろん水温の変動が大きいと病気になりやすいので常に水温を一定に保つようにします。クーラーやヒーターは余裕のあるサイズのものを使用したいところです。

隠れ家

ヘビギンポは意外と臆病なところがあります。ライブロックでも、サンゴ岩でも、専用の土管などでもよいので隠れられて落ち着く場所などを作ってあげるとよいでしょう。

ヘビギンポに適した餌

ヘビギンポは海では動物プランクトンを食べていますが、水槽下でも最初のうちは動物プランクトンを与えたほうがよいのですが、冷凍のプランクトンフードは水を汚しやすいので注意します。冷凍プランクトンフードもいろいろな種類がありますが、個人的には小型個体はコペポーダ、大きく育った個体はホワイトシュリンプをよく食べます。ただし最初の期間さえ乗り越えれば配合飼料になれるのも早いです。しかし採集時の状態が悪かったものなどはスレていて弱っており、そのまま死んでしまった、なんていう例もあります。

ヘビギンポをお迎えする

▲ヘビギンポの成魚。第3背鰭にスレ傷がある

ヘビギンポは磯で簡単に採集することができます。二つの網を用意して、一つの網をセットしておき、もう一つの網で追い込むようにすれば簡単に採集することができます。ただしヘビギンポはカエルウオなどのイソギンポ科と比べるとスレ傷に弱いところがあります。採集する際もできるだけ網を水から上げないようにし、採集した後は容器などで掬うなどの工夫をしましょう。鰭膜と網がすれても弱ってしまうことがあり、たとえば写真のヘビギンポは体表はそれほど傷ついていないように見えましたが、第3背鰭が擦れによりぼろぼろになっています。この個体は写真を撮影した翌日、死んでしまいました。たくさんいるのでついついたくさん採集したくなりますが、欲張って大量に持ち帰っても死なせてしまうだけなので、健康そうなものを少しだけ持ち帰るようにするとよいでしょう。

また弱りやすく、運搬中に死んでしまったり、バケツの中の水質が悪化したりしてほかの魚も道連れにしてしまうことがあります。できるだけヘビギンポは別の容器(水を共有しない)で運んであげたほうがよいかもしれません。

ヘビギンポとほかの生き物との関係

ほかの魚との混泳

ヘビギンポは比較的おとなしい魚ですが、一部のベニハゼなど、口に入る魚は食べてしまう可能性があります。そのため口に入るサイズの魚と飼育するのはいけません。ほかの魚とであれば混泳できる可能性が高いですが、スズメダイやメギスのような気性が激しいものや、遊泳性ギンポなどのようにほかの魚をつつく魚、肉食性の魚との混泳は避けなければなりません。とくにヘビギンポは細身の体をしており、肉食性の魚に襲われる可能性も高いといえます。なお、以前はヤエヤマギンポや遊泳性ハゼ、ハチマキダテハゼ、ヒフキアイゴ、小型のカクレクマノミなどと一緒に飼育していました。

サンゴ・無脊椎動物との相性

基本的にサンゴとの飼育は問題ありません。ヘビギンポはサンゴ礁でも見られ、浅い潮だまりでも見られるため、ミドリイシなどのSPSやソフトコーラルとの相性がよいといえます。LPSとの相性もよいのですが、LPSに給餌した餌を横取りしてしまうこともあります。LPSにも餌がいきわたっているか確認しましょう。また陰日性のウチウラタコアシサンゴや、クマノミと共生するタイプの大型イソギンチャクなどは魚を捕食してしまうことがあります。とくにイソギンチャクは本種に限らずギンポやハゼなど動きが遅い魚を好んで食べてしまうこともあり、飼育はおすすめできません。クマノミと共生するタイプのイソギンチャクを飼育するのであれば、クマノミとイソギンチャクのみを飼育するのがベターといえます。

甲殻類も大型のエビ(イセエビなど)、大型のカニ、大型のヤドカリはヘビギンポを襲って食うことがありますので混泳はさせないほうがよいでしょう。クリーナーシュリンプ、ペパーミントシュリンプ、サラサエビ、小型のカニ、サンゴヤドカリは問題ないことが多いです。ただしクリーナーシュリンプのうち、オトヒメエビは大きなハサミをもち、ほかの魚(特に夜間、動きが鈍くなるところ)を捕食する恐れがあるので、一緒に飼育してはいけません。

ヘビギンポ飼育まとめ

  • カエルウオなどの含まれるイソギンポ科とは別科の魚
  • 背鰭が3つあるのが特徴的
  • よく似たミヤケヘビギンポとは見分けるのが難しい
  • 45cm以上の水槽で飼育するのがおすすめ
  • 水質悪化に弱いように思われる。しっかりしたろ過槽が必要
  • 本州産のものは23℃、沖縄産のものは25℃の水温で飼育したい
  • 隠れ家をつくってあげたい
  • 配合飼料は最初から食べるとは限らないので冷凍餌で餌付ける
  • 擦れに弱いため採集時に傷つけないように
  • 口に入る魚やスズメダイなど気が強いとの混泳はさける
  • 肉食性やイソギンチャク、大型の甲殻類などとの飼育もだめ

2020.07.31 (公開 2020.07.30) 海水魚の採集

関東の磯でみられるギンポ・カエルウオの仲間

関東の磯ではギンポ・カエルウオの仲間は少ないです。死滅回遊魚としてもあまり種類を見ることはできません。なぜならばギンポ・カエルウオの類の卵は岩などに産み付けられることが多く、あまり分散できないため、熱帯性のものが関東に来ることはほとんどないといえます。しかしながらそれでも何種類かは関東の磯でも見ることができます。今回は関東の磯でみられるギンポ・カエルウオの仲間をご紹介します。なおここでいう「関東沿岸」はだいたい千葉県・神奈川県・静岡県東部(伊豆まで)で、神津島や三宅島、八丈島などは含みません。

関東の磯でみられるギンポの仲間

「ギンポの仲間」の定義

▲ダイナンギンポの仲間はギンポ亜目に含まれない

「ギンポ」は感じで銀宝と書きます。これは硬くておれにくいものを「ギンポオ」とよび、死後硬直したギンポが硬くなったものをそう呼び最後のオが取れてギンポという名前になったともいわれています。しかしこの名前で呼ばれるものは2つのグループに分かれており、片方はゲンゲ亜目、もう片方はギンポ亜目に含まれます。前者はゲンゲ科、タウエガジ科、オオカミウオ科などが含まれています。磯採集でお馴染みのものではダイナンギンポや、春の磯で多く見られるコモンイトギンポ、東京では天ぷらなどでお馴染みのギンポなどが含まれています。一般にアクアリストにお馴染みのカエルウオ、ヤエヤマギンポなどは後者のギンポ亜目の魚です。ここでは「ギンポ亜目」の魚を扱います。

イソギンポ

▲イソギンポ

イソギンポは日本の広い範囲に生息しているイソギンポ科の代表的な種です。眼の上の大きな皮弁が特徴的でかわいいのですが大きな犬歯をもちかまれると痛いので注意します。分類はイソギンポ科の中のイソギンポ族に含まれ、カエルウオやヤエヤマギンポなどが含まれるカエルウオ族と異なった仲間です。食性は雑食性で、ライブロックについたコケも少しは食べるものの、掃除屋さんというような働きはしません。

カエルウオ

▲カエルウオ

関東の磯ではカエルウオ族の魚は本種がもっとも多く見られます。というか本種を除くと少ないです。浅い磯で非常に多く見られますが、ジャンプして逃げてしまうこともあるため、注意が必要です。飼育するとやや気が強いところがあるものの、ガラス面やサンゴ岩、ライブロックなどについているコケなどを捕食してくれるので掃除屋さんとして重宝します。ただし脱走してしまうこともありますのでフタはしっかりしましょう。ほぼ1年中見られ、夏から秋にかけては小さな個体が多数見られます。分布域は広く千葉県勝浦以南の太平洋岸、兵庫県以南の日本海岸~種子島・屋久島にまで見られますが、それより南ではニセカエルウオに置き換わるようです。カエルウオ飼育についてはこちらをご覧ください。

ホシギンポ

▲ホシギンポ

ホシギンポは三浦半島以南の沿岸に生息しているカエルウオの仲間です。房総半島では見られませんが、三浦ではよく見る種です。また日本海岸でも見ることができます。南は沖縄本島にまで分布しているようです。コケは少し食べますが、カエルウオのほうが優れた働きをしています。写真の個体はオレンジ色が強いのですが、普通は異なる色で、茶褐色の地色に白い細かい斑紋が多数入ります。また頭部の上のアンテナのような皮弁もかわいいものです。

ニジギンポ

▲ニジギンポ

ニジギンポはイソギンポ科の魚ですが、カエルウオやイソギンポなどとは異なる別のグループに含まれる魚です。体は細長く、黒い縦線が入ります。下顎に大きく強い、かみそりのような歯がありかまれるとけがをすることもあるので注意します。流れ藻やブイ、浮遊するゴミなどについており、それらごと掬うことにより簡単に採集することができます。飼育は難しくはないのですが飛び出しやすいので注意が必要で、また、ほかの魚の鰭などをかじる悪癖があるので注意が必要です。

ナベカ

▲ナベカ

ナベカは黄色の体と、黒い横帯が目立つ魚です。熱帯魚のような趣ですが、実際には周年磯でみることができます。ナベカと異なり掃除屋さんという仕事はあまりしませんが、少しはライブロックの付着藻類などをかじってくれます。基本的にはおとなしく飼いやすい魚ですが、肉食性が強い魚との混泳は避けたほうがよいでしょう。温帯性ですが高水温への耐性も比較的あり、カクレクマノミなどとの混泳もできます。

クモギンポ

▲クモギンポ

クモギンポは房総半島以南の太平洋岸に生息するイソギンポ科の魚で、分類としてはナベカに近い仲間です。体側には白っぽい縞模様がありますが色彩は褐色でナベカよりも地味といえます。ナベカよりは南方系で紀伊半島などではよく見られる種ですが、房総半島では繁殖していないかもしれません。非常に丈夫で飼育はしやすく、餌もよく食べるなど初心者にもおすすめの魚ではありますが、細い体をしているため大型魚の餌になりやすいので混泳には注意が必要です。

ヘビギンポ

▲ヘビギンポ

ここまではイソギンポ科の魚をご紹介しましたが、ここからはイソギンポ科以外の魚をご紹介します。日本産のギンポ亜目の中で、イソギンポ科(79種以上)に次ぎ種数が多いのがヘビギンポ科の魚で、32種類が知られています。ヘビギンポ科の魚は背鰭が3つあります。このほかに3つの背鰭を有するのはタラの仲間くらいで極めて珍しい特徴です。ヘビギンポの仲間はコケは少しは食べてくれるようですが掃除やさんというほどの活躍はしません。またスレ傷や運搬に弱いようで飼育してすぐは気をつかう必要がありますが、一度慣れれば丈夫で飼育しやすいといえます

潜ると全身真っ黒で白い帯を出しているヘビギンポを見ることができますが、これは雄の婚姻色のようです。しかしそのような個体も水槽では色彩の維持が難しいです。ヘビギンポの仲間は沖縄や小笠原諸島などで多くの種類が見られますが、関東では種類がすくなく、見られるのはこのヘビギンポか、ヒメギンポくらいのものです。

コケギンポ

▲コケギンポ

関東沿岸ではコケギンポもよく見られます。この仲間は温帯域に多く、沖縄には少ないです。またこの種が含まれるコケギンポ科の分布の中心は東太平洋であり、日本近海ではコケギンポ属の種が8種知られているのみです。雑食性の魚ですが動物プランクトンなどを食べ、コケはほとんど食べません。口が大きく口の中に入る魚は食べてしまうことがありますが、カクレクマノミなどとであれば普通に混泳できます。逆に肉食性が強い魚との相性は温帯性の魚ですが25℃でも十分飼育できます。

関東の磯のギンポ・カエルウオ類飼育の注意点

餌に注意

▲カエルウオの餌におすすめなのが「海藻70」

この仲間は種によって食べるものが違います。例えばカエルウオやホシギンポは藻類を食べ、ナベカやイソギンポは雑食性が強く何でも食べる、ヘビギンポやコケギンポは雑食性だが動物食が強い、という具合です。よくアクアリストにも飼育されているカエルウオはコケ取りとして入れられることも多いのですが、この魚はかなり長い時間餌を食んでおり、多くの餌を必要とします。そのため、コケだけでは生きていけませんので、必ず藻類食魚向けの餌を与える必要があります。イソギンポやナベカなどはメガバイトなどの配合飼料などで十分といえます。

一方ニジギンポは動物食性が強く、配合飼料で間に合いますが、ほかの魚の鰭や体表をかじるという悪癖をもっていますので注意しましょう。

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飛び出しに注意

▲我が家のカエルウオ飼育水槽。しっかりとフタをすることが大事だ

とくにカエルウオやホシギンポ、ニジギンポなどの種で顕著なのですが、この仲間はフタをしない水槽では飛びだして死んでしまうこともあります。そのためフタはしっかりしましょう。できればフタのカット部分もアクリル板などで埋める慎重さがほしいところです。オーバーフロー水槽ではフロー管の上にもプラ板などを使用してサンプに落ちないような工夫をしてあげたいところです。このほかの種類を飼育するときもできるだけフタをして、飛び出しを防ぐようにします。

関東の磯のギンポまとめ

  • ギンポやダイナンギンポなどはゲンゲ亜目の魚でギンポ亜目ではない
  • 関東沿岸では少ない
  • カエルウオやホシギンポはコケを食べる
  • イソギンポ、クモギンポやナベカなどはあまりコケを食べない
  • ニジギンポやヘビギンポ、コケギンポは肉食性が強い
  • 種類ごとに与える餌を考えたい
  • カエルウオなどはジャンプすることがあるのでフタはしっかりしたい

2020.07.30 (公開 2020.07.29) 海水魚の採集

関東の磯でみられるスズメダイの仲間

夏から秋にかけて、関東の磯でもカラフルな魚が見られます。これらは死滅回遊魚と呼ばれるもので、幼魚が黒潮にのり本州にまで運ばれてくるのですが、水温が低下する冬には死んでしまいます(暖冬の年には生き残ることもあり)。その中にはチョウチョウウオやキンチャクダイ(ヤッコ)の仲間のほか、スズメダイの仲間も多く見られます。今回は関東近辺(房総、三浦、伊豆半島。ただし伊豆諸島はのぞく)の磯でみられるスズメダイの仲間をご紹介します。

スズメダイの仲間の死滅回遊魚

スズメダイの仲間はスズキ目スズメダイ科の魚のことを指す場合も多いのですが、アクアリウムの本などではスズメダイの仲間のうち、クマノミ亜科のものをスズメダイの仲間から外して別扱いされることも多いです。基本的には琉球列島以南で見られることが多く、本州沿岸でも何種か見ることができます。スズメダイのような温帯性の種もいるのですが、沖縄などから黒潮にのって運ばれてくるような魚もいます。しかし、このような魚の多くは本州の冬の寒さに耐えることができず死んでしまいます。このような魚を「死滅回遊魚」といいます。

スズメダイの仲間とチョウチョウウオの仲間の回遊の違い

▲チョウチョウウオのトリクティス幼生

死滅回遊魚としてはチョウチョウウオの仲間がよく知られています。チョウチョウウオは死滅回遊魚として多くの種類が関東やその近くまで流れてきます。トゲチョウチョウウオ、フウライチョウチョウウオ、チョウチョウウオ(ナミチョウ)、チョウハン、アケボノチョウチョウウオなどは毎年のように流れてきますし、ミゾレチョウチョウウオ、ゴマチョウチョウウオ、セグロチョウチョウウオ、ニセフウライチョウチョウウオ、トノサマダイも見られ、少ないですがアミチョウチョウウオ、イッテンチョウチョウウオ、ミスジチョウチョウウオなども見られるようです。一方スズメダイの仲間は少なく、後述のような種類が見られるだけで、ルリスズメダイやシリキルリスズメダイ、デバスズメダイなどの種類は見ることができません。この違いは何に由来するものでしょうか。

実はスズメダイとチョウチョウウオの仲間では、卵のタイプが大きく違います。チョウチョウウオ類は分離浮性卵、つまりばらばらになって浮かぶタイプの卵を産むのに対し、スズメダイの仲間は岩や死サンゴ(クラカオスズメダイ属のように生きたサンゴに産卵することもある)に卵を産み付けるという繁殖様式をもち、多くは親魚により保護されます。しかし、スズメダイ科のこのやり方では卵の孵化率はあがるのかもしれませんが、分布を遠くに広げることができません。チョウチョウウオ科の魚類は南アフリカから西―中央太平洋にまで分布しているという種も多いのに対し、スズメダイの仲間の分布域が狭いものが多いというのはこれも理由のひとつのようです。

チョウチョウウオの稚魚期はトリクティス幼生などと呼ばれ、頭部に兜をかぶったような姿をしています。この期間は浮遊しており、卵だけでなくこの姿で海流により流されてくることもあるようです。一方スズメダイの仲間の稚魚の浮遊期間はチョウチョウウオよりも短く、はやいうちに着底するようです。そのためチョウチョウウオのように分布域を北へ広げるのが難しいといえそうです。

関東の磯でみられるスズメダイ

スズメダイ

▲スズメダイ

スズメダイは温帯によく適応している種で、日本海側でも越冬するなど、死滅回遊魚とはいえません。関東ではあまり食されることはないのですが、福岡県の玄界灘では本種をアブッテカモとよび食用にします。これがなかなか美味しいものです。スズメダイとしては比較的おとなしめの魚で、同じくらいの大きさの魚と飼育することもできますが、高水温にやや弱く、また水が汚いとすぐ眼が突出してしまうなどの問題がありますので注意が必要です。また全長も15cmくらいになりますので大きめの水槽で飼育することを心がけます。本種は和名も「スズメダイ」であり、スズメダイ科の魚でも代表的なものといえます。属はスズメダイ属であり、この属には本種のほかにデバスズメダイやブルークロミスなど、おなじみの種類が多く含まれています。

従来、三宅島などにすむ「ミヤケスズメダイ」は本種の亜種とされていましたが、現在はこの亜種を認めず変異とされていることがほとんどです。

オヤビッチャ

▲房総半島で採集したオヤビッチャ

オヤビッチャは関東沿岸では非常に多くみられるスズメダイです。丈夫で飼育しやすく、性格がきついものの混泳困難というほどにはならないことが多いです。カクレクマノミなどとの混泳もできますが、小型水槽での混泳はやめましょう。本種はスズメダイの中では分布域が広いですが、これは流れ藻などによくついており、流れ藻と一緒に移動することがあるからかもしれません。また流れ藻のほかにもブイや流木などの浮遊物についていることが多いです。

ロクセンスズメダイ

▲ロクセンスズメダイの幼魚

房総ではほとんど見ないスズメダイですが、三浦や伊豆半島などで採集することができます。オヤビッチャに似ていますが尾鰭に黒い線があるので容易に見分けられます。生息場所も潮だまりにいたり、ブイなどの浮遊物についているなど、オヤビッチャに似たところがあります。成魚の体はブルーグリーンで性格もシマスズメダイよりはおとなしめで飼育しやすいスズメダイといえます。

シマスズメダイ

シマスズメダイの幼魚

シマスズメダイの幼魚も夏から秋にかけ非常によく見られます。潮だまりに多い魚で、ごく浅い場所でよく見られるものです。そのため子供でも簡単に採集することができます。しかし成長すると15cmにもなり(海では20cm以上!)、性格は非常にきつくなってしまいますので、持ち帰って飼育するかはよく考えてからにしましょう。琉球列島では成魚も水深1~2mほどのごく浅い場所に見られ、活発に泳ぎ回ります。海では藻類を主に捕食していますが、甲殻類なども食べています。成魚は食用になります。

イソスズメダイ

▲イソスズメダイの幼魚

イソスズメダイは灰色っぽい体で黄色い横帯が入ります。オヤビッチャ同様に磯やサンゴ礁の浅いところで見られプランクトンを主食としています。幼魚はそれほどでもないのですが、成長するにつれて性格がきつくなっていくので注意が必要です。

テンジクスズメダイ

▲テンジクスズメダイの幼魚

テンジクスズメダイはやや内湾の磯に多い感じのスズメダイです。基産地のベンガル湾とか、タイランド湾などでもよく見ます。日本国内でも房総半島以南でよく見られますがバリバリの波浪がすさまじい磯というよりは、内湾の磯、防波堤などに多い感じで、小笠原諸島などの海洋島ではまれです。成長するとほかのスズメダイ同様に大きくなり、性格もきつくなります。なんとか混泳はできますが、小魚やおとなしめの魚とは避けたほうが無難です。

ミヤコキセンスズメダイ

▲ミヤコキセンスズメダイの幼魚

ミヤコキセンスズメダイは黄色い体と青い縦線が特徴のスズメダイです。背鰭付近に大きな眼状斑があり、チョウチョウウオの仲間と間違えられることもあります。関東の磯ではイチモンスズメダイよりもミヤコキセンスズメダイのほうが多いようです。見分け方は鰓蓋の周辺に橙色の斑点があればミヤコキセンスズメダイ、なければイチモンスズメダイという見分け方がなされることが多いです。成魚は黒い体で白い帯があり地味です。そして性格はかなりきついです。幼魚のうちはおとなしくむしろ臆病ですが成長するにつれ大胆になります。

インド洋のものはきれいで、観賞魚として輸入されることがあります。「サージダムゼル」という名前で販売されていることがありますが、ミヤコキセンスズメダイと同種とされており、大きくなると地味になります。ただしインド洋のもの(Chrysiptera brownriggii)は太平洋のもの(Chrysiptera leucopomaとされた)とは色彩(特に幼魚)が異なっております。そのため日本近海の個体についてはChrysiptera leucopomaの学名が復活する可能性もあります。またミヤコキセンスズメダイ、という誤植もよく見られます。

イチモンスズメダイ

▲イチモンスズメダイの幼魚

イチモンスズメダイもミヤコキセンスズメダイ同様に関東の磯でみられる種ですが、関東の磯では幼魚の数はミヤコキセンスズメダイよりは少ないようです。実際に私も関東の磯では本種を見たことはなく、逆に高知などでミヤコキセンスズメダイを見たこともありませんでした。もっともこの2種は非常に酷似しており、写真からだけでは同定が難しいところもあります。成魚まで育てられれば一発で見分けられますが、成魚は地味になり性格もきつくなってしまいます。

ネズスズメダイ

▲ネズスズメダイの幼魚

インド―太平洋に広く分布する種で、わが国でも房総半島や伊豆半島ではよく見られるスズメダイです。分類学的にはルリスズメダイ属で、ミヤコキセンスズメダイやイチモンスズメダイによく似ていますが、グレーの体に背中の青い線、体側の青い点が独特の魚です。しかしこの特徴は幼魚のときにしかみられず、成魚はねずみ色になってしまいます。また性格もかなきついものになってしまいますので、お持ち帰りはあまりおすすめできません。

ソラスズメダイ

▲ソラスズメダイ

関東地方の磯でみられる「青いスズメダイ」はほぼ間違いなく本種といえます(ルリスズメダイやシリキルリスズメダイは関東ではほぼいない)。本種を磯で見たら、だれでもドキドキ、ワクワクしてしまうというものです。しかし成長すると色は黒っぽくなってしまうことも多いです。性格はややきついので、混泳を考えるのであればある程度の大きさの水槽での飼育が適しています。死滅回遊魚というよりも温帯(から熱帯)の磯で多く見られる魚です。

ナガサキスズメダイ

▲ナガサキスズメダイ

ナガサキスズメダイは先ほどのべたスズメダイに似ていますが、スズメダイ属ではなくソラスズメダイ属に含まれます。幼魚は体が暗い青色ですが、成魚は写真のように暗色になります。丈夫で飼育はしやすいのですが、性格はきついので注意が必要です。名前は本種が採集された「長崎」にちなみますが、千葉県以南の太平洋岸、琉球列島、モルディブ以東のインド洋~西太平洋に生息します。

ミツボシクロスズメダイ

ミツボシクロスズメダイの幼魚

ミスジリュウキュウスズメダイ属のスズメダイは国内に4種いますが、関東近辺でみられるのはフタスジリュウキュウスズメダイ(伊豆周辺)と、このミツボシクロスズメダイです。幼魚は黒い体に大きな白色斑があるのが特徴です。しかしこの白色斑は成長に従い小さくなっていき、しまいにはほかの魚を追い掛け回すようになってしまいます。なお幼クマノミが共生するイソギンチャクと戯れる習性がありますので、イソギンチャクの周辺で採集できますが、性格が非常にきついので持って帰るべきかはよく考えましょう。

なお、ここで紹介したもののほかに、ハクセンスズメダイ、セダカスズメダイ、コガネスズメダイなどの種類も関東沿岸でみることができます。

関東でみられるスズメダイの注意点

丈夫で飼育しやすい

スズメダイの仲間はよく餌を食べますので、餌付きという点での心配は不要といえます。藻類などを食べる種類でもすぐに配合餌を食べてくれることが多いです。丈夫で飼育しやすいものが多く、初心者向きといえそうですが、大きな落とし穴があります。

混泳は難しい

スズメダイの仲間は飼育は簡単です。しかしながら性格がきつく、混泳が難しいというところがあります。スズメダイの仲間は縄張りをつくることが多く、その縄張りの中に入ってきた魚を追い払ってしまいます。そのためほかの魚との混泳が難しいといえるのです。大きめの水槽であれば混泳可能なこともあるのですが、初心者は60cmくらいの水槽しか持っていないことも多く、採集したスズメダイを飼育するのには不向きな点があるといえそうです。

もちろん、スズメダイが飼育できなくなったからといって、海へ逃がすのは慎まなければなりません。

関東の磯のスズメダイまとめ

  • 関東でも一部のスズメダイが死滅回遊してくる
  • チョウチョウウオの仲間と異なり浮遊期間が短く流れてくる種類は少ない
  • スズメダイは温帯性
  • オヤビッチャは流れ藻についてくるもので数が多い
  • テンジクスズメダイは内湾に多くみられる
  • ソラスズメダイは青がきれいだがその色を保つのが難しい
  • ミヤコキセンスズメダイやイチモンスズメダイは幼魚はきれいだが成魚は地味になる
  • シマスズメダイやミツボシクロスズメダイなどは飼育したら後悔することも
  • 飼いきれなくなっても海へ逃がしてはいけない

2020.07.29 (公開 2020.07.28) サンゴ図鑑

コモンサンゴに堆積したゴミ、デトリタスを取り除く方法と対策

コモンサンゴはミドリイシの仲間ですが、飼育がしやすいこと、非常に鮮やかな色彩と独特な形状が人気のサンゴです。しかし、複雑な形状のコモンサンゴにはゴミやデトリタスがたまりやすく、このデトリタスがサンゴの上に乗ってしまうと、その部分のポリプが死んでしまうことがあります。

そのため早いうちにスポイトを使って取り除いてあげたいものです。今回はコモンサンゴの上にたまりやすいデトリタスなどのゴミ対策をご紹介します。

コモンサンゴとは

▲オレンジが美しいコモンサンゴ

コモンサンゴはイシサンゴ目ミドリイシ科のハードコーラルです。しかしミドリイシと比べて飼育しやすいので、多くのアクアリストがコモンサンゴの飼育を楽しんでいます。コモンサンゴははじめてSPSを飼育するのに最適のサンゴといえるでしょう。このコモンサンゴの魅力的は、まず蛍光色が鮮やかなところ、成長が非常に早くあっという間にプラグを覆いつくすように大きくなっていくこと、そしてミドリイシなど、ほかのサンゴにはないユニークな形状をしているところです。

コモンサンゴの仲間の特徴や飼育方法についてはこちらの記事をご覧ください。

コモンサンゴ飼育で起こる厄介なこと

▲カンボジア産のコモンサンゴ

▲上記のサンゴを上から見たところ

コモンサンゴは美しい蛍光色や丈夫で成長が早いところなどが人気のサンゴなのですが、コモンサンゴを飼育していると問題が発生することがあります。まず一つはウミウシの問題です。コモンサンゴの仲間には、サンゴを食べてしまうミノウミウシの仲間が付着していることが多くこれが大量に発生するとサンゴを死なせてしまうことがあります。とにかく水槽に入れないことが重要といえます。専用の薬剤が市販されていますので水槽に入れる前に薬浴をする必要があります。「コーラルRXプロ」や「リバイブ」がありますが、この中ではコーラルRXプロのほうが高価ですが使いやすいと思います。

そしてもう一つがコモンサンゴの上にデトリタスや砂などのゴミが乗っかることがあるということです。デトリタスというものは粒子状の有機物で、微生物の死骸や排せつ物、あるいは甲殻類を飼育するのであればその脱皮時の抜け殻などもやがてデトリタスになっていきます。

デトリタスが積もるというのは特にウスコモンサンゴなど複雑な形状のコモンサンゴほど起こりやすいように思われますが、比較的単純な形をしたサンゴの上にも蓄積されることがあるので注意が必要です。

我が家で飼育しているカンボジア産のコモンサンゴはコーラルタウンで購入したもので、独特なグリーンの色彩でお気に入りなのですが、形状も複雑で、とくに奥の部分が隆起しておりその手前付近にはデトリタスなどのゴミがたまりやすいのが難点です。このままの状態が続けばこの部分のポリプが死んでしまい、その部分がはげてしまいます。さらにその部分にコケが生えると、コケの種類によっては生きている部分の上にも覆いかぶさってしまうなど、たいへん厄介なことになりますので、早いうちに対策を施さなければなりません。

コモンサンゴのゴミ対策

スポイトで取り除く

▲スポイトでゴミを吸い出す

コモンサンゴの上にデトリタスが蓄積されたら、その都度スポイトですいとるようにします。細くて長いスポイトが向いているでしょう。中国・ウェーブリーフが製造し日本ではLSS研究所が販売している「ウェーブリーフ ターゲットスポイト」などがおすすめです。この商品は40、50、70の3種類があるのですが、この用途であれば40か50で十分かもしれません。我が家でも使用していますが、先端が折れて短くなってしまいました。そのため扱いには注意が必要です。

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水流を見直す

▲複雑な水流をつくりデトリタスの蓄積を防ぎたい

水流を見直すということも大事です。サンプから揚げられる水の吐出口からの流れと水中ポンプからの流れをぶつけるなどして、複雑な水流を生み出すようにします。またタイマーをつかい一定時間だけ強い流れの反流を起こすなどの工夫も必要になってきます。いずれにせよサンゴが直接、長時間強い水流にさらされているのはいけません。このようなことが起こるとサンゴにとってはストレスになるだけでなく、サンゴが死んでしまうこともあります。間接的な水流があたるのが一番です。我が家では吐出口の向きを若干変更しただけで、あまりデトリタスがたまらなくなったのでとりあえずはよしとしましょう。ただしコモンサンゴの形状によっては、水流をいじっても改善につながらないことがありますので注意が必要です。

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コモンサンゴのゴミ対策まとめ

  • コモンサンゴはミドリイシ科だが比較的飼育しやすい
  • 鮮やかな色彩や複雑な形に成長するた人気もある
  • ウミウシなどの発生に注意したい
  • 複雑な形のコモンサンゴにはデトリタスがたまることも
  • デトリタスがたまればその部分のポリプが死にコケが生えることもある
  • 定期的にスポイトなどで吸い取りたい
  • 水流に手を加えるという方法もあり

2020.08.22 (公開 2020.07.27) 海水魚図鑑

メタリックシュリンプゴビーの飼育方法~派手で飼育もしやすいがやや大型になる

メタリックシュリンプゴビーは、クビアカハゼやハチマキダテハゼ、ヤノダテハゼ同様、ダテハゼ属の共生ハゼです。全長10cmを超えこの仲間では大型になり、派手な色彩をしています。黒っぽい底砂を敷いて飼育すると、暗色の体に青白い斑点が光り輝き、非常に美しくなります。丈夫で飼育も容易ですが、入荷直後の状態にだけは注意しましょう。今回はメタリックシュリンプゴビーの飼育方法をご紹介します。

標準和名 なし
学名 Amblyeleotris latifasciata Polunin and Lubbock, 1979
英名 Metallic shrimp-goby, Wide-barred shrimpgoby
分類 条鰭綱・スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ハゼ亜科・ダテハゼ属
全長 10cm(海では14cm)
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドMなど
温度 25℃
水槽 60cm~
混泳 多くの魚と混泳できる
サンゴとの飼育 サンゴには無害。イソギンチャクに食われやすい

メタリックシュリンプゴビーって、どんな魚?

▲メタリックシュリンプゴビー

メタリックシュリンプゴビーは西太平洋(フィリピン、インドネシア、タイ、マレーシアなど。日本からの記録はまだない)~インド洋に生息している共生ハゼの仲間です。分類学的にはクビアカハゼやヤマブキハゼなどと同様、ダテハゼ属の魚で、ヤノダテハゼ同様に細長い体が特徴です。しかし本種はヤノダテハゼよりもがっしりとした体をもち、太くて茶色い5本の横帯、頭部にある青く輝く斑点、第1背鰭や体側前半部に見られる赤い斑点などが特徴的です。

共生するテッポウエビは?

主にニシキテッポウエビと共生し、このほかコシジロテッポウエビに似た種のテッポウエビと共生することがあります。ダテハゼ属の仲間の多くはあまりテッポウエビの種類にはこだわらないようで、簡単に共生を楽しむことができるというメリットがあります。

メタリックシュリンプゴビー飼育に適した環境

水槽

全長10cmと比較的大きく育つハゼですので、できれば水槽も最低でも60cmくらいは用意してあげましょう。ほかの共生ハゼとの飼育を楽しむのであれば90cmくらいはあったほうがよいかもしれません。

水質とろ過システム

メタリックシュリンプゴビーは多少硝酸塩の蓄積にもたえますが、できるだけきれいな水で飼育してあげたいところです。やや大型の種で、小型水槽で飼育しにくいため、外掛けろ過槽は選択肢になく、砂を動かすこともあり(テッポウエビがいなくても)、底面ろ過槽もいけません。おすすめは上部ろ過槽で、それに外部ろ過槽も補助的に使用しろ過能力をあげることもできます。またオーバーフロー水槽は高価ですが設置してしまえばほかのろ過槽よりも圧倒的に高いろ過能力を誇ります。

メタリックシュリンプゴビーはサンゴには何ら悪さをしませんので、サンゴ水槽での飼育もできます。ただし、サンゴ飼育に最適なベルリンシステムの水槽では魚を多く入れることはできませんので、注意が必要です。

水温

メタリックシュリンプゴビーに最適な水温は25℃前後です。浅場にも見られるためもう少し高い水温でも大丈夫ですが、できるだけ28℃以下にとどめましょう。筆者は22~23℃で長いこと飼育していました。もちろん水温の変動が大きいのはいけません。水温の変動が大きいと体調を崩して病気になりやすいからです。ヒーターとクーラーを使って水温を一定にキープすることが重要です。

砂とサンゴ岩

底に砂を敷いてあげて飾りもいれると、共生ハゼは落ち着きます。砂は普通のサンゴ砂でもいいのですが、灰色から黒色の砂を敷くと微妙な色彩を維持しやすいとされています。ただし底に敷く砂はシーケムの「グレイコースト」などのような海水魚用のものでなければなりません。間違っても淡水魚用のソイルなどを使用しないようにしてください。もちろん、サンゴ砂を敷いて飼育していても飼育自体には何ら問題はありません。

またサンゴ砂はパウダーだけでなく、大きな粗目のサンゴ砂も敷いてあげましょう。これはパウダーサンドだけではテッポウエビが巣を作りにくいからです。私の水槽ではパウダー状のサンゴ砂をベースに、粗目のサンゴ砂や礫状のサンゴ砂を敷いています。

フタ

共生ハゼの仲間は意外と飛び出してしまいやすい魚といえます。壁面をつたうように移動したり、何かに驚いたり、浮かぶ餌を食べようとするときなどに、勢い余って飛び出してしまうこともあります。そのため、しっかりフタをする必要があります。

メタリックシュリンプゴビーに適した餌

メタリックシュリンプゴビーは動物食で底生小動物や動物プランクトン、魚の稚魚などを捕食しています。水槽内では配合飼料をすぐ食べてくれるため、あまり問題はありません。プランクトンフードは水を汚すので、たまに与える程度にとどめます。できれば沈降性のものが望ましいです。たとえば「メガバイト」シリーズであれば、長く浮かぶ小粒のSサイズよりも、沈むのが早いMサイズが適しているでしょう。Lサイズでは大きすぎるように思います。

メタリックシュリンプゴビーをお迎えする

▲ダンダラダテハゼの名前で販売されていたもの

メタリックシュリンプゴビーは日本には分布していないので、購入にたよることになります。共生ハゼでもギンガハゼやヒレナガネジリンボウなどはよくお店で見られますが、この種は流通量が少ないといえます。また別種の名前で販売されることもあり「ダンダラダテハゼ」の名前で販売されていた店舗もあります。ちなみに写真の個体は東京都の「ナチュラル」、もしくは横浜市都筑区の「kazika」で購入した個体で、それぞれ別の個体となります。

高価な魚ではないのですが、この魚の産地はフィリピンやインドネシアなどですので、状態には注意しなければなりません。体表に傷があったり、一部が赤くなっているようなものは購入してはいけません。また鰭の裂けくらいはすぐに治りますが、溶けているようにぼろぼろなのは避けるべきです。もちろん入荷直後のものも購入しないようにしましょう。

メタリックシュリンプゴビーとほかの生き物との関係

ほかの共生ハゼとの混泳

性格はやや強めですが、強すぎではないです。ハチマキダテハゼと混泳していましたが、特に問題はありませんでした。ただし小型のヒレナガネジリンボウなどはプレッシャーを受けることがあるので避けたほうがよいかもしれません。またがっちりとした体形のニチリンダテハゼも気が強いためあまりおすすめできません。

ほかの魚との混泳

ほかの魚との混泳もできる!

性格がやや強く、ほかの魚との混泳もこなします。ニシキテッポウエビと共生させた水槽で様々な魚と混泳させていました。温和なキンセンイシモチやミヤケテグリのほか、気が強いソラスズメダイなどとも一緒に飼育していました。ただし肉食性の強い魚とは一緒に飼育するべきではありません。本種はダテハゼの仲間でも特に細長い体をしており、肉食魚に食べられてしまいやすいからです。また気性の激しい大型スズメダイやメギスの仲間とも飼育するべきではないかもしれません。

サンゴ・無脊椎動物との相性

メタリックシュリンプゴビーはサンゴにいたずらをすることはありません。そのためサンゴ水槽での飼育もできます。ただし、共生するテッポウエビがレイアウトを崩さないか、一応ちゅういしたほうがよいでしょう。クマノミの仲間が共生するようなイソギンチャクと飼育すると、イソギンチャクに食べられてしまうことがあります。共生ハゼは驚いたりしたときにイソギンチャクの触手につかまってしまうことがあるためこの組み合わせもできるだけ避けたほうが賢明です。ただしマメスナギンチャクなどのスナギンチャク系や、小型のディスクコーラルなどは無害です。大型のディスクコーラルはときに小魚を食べてしまうこともあるため注意します。

テッポウエビ以外の甲殻類との相性は、大型のエビ、大型のカニ、大型のヤドカリは避けます。クリーナーシュリンプはおおむね問題ないのですが、オトヒメエビは大きなハサミをもって動きの遅いハゼなどを食べてしまうのでいけません。小型のサンゴヤドカリ、アカシマシラヒゲエビ(スカンクシュリンプ)、サラサエビなどは問題ありません。

メタリックシュリンプゴビーまとめ

  • 細身な体と鮮やかな色彩が特徴な大型のダテハゼ属魚類
  • ニシキテッポウエビなどと共生する
  • やや大きくなるため60cm水槽がほしい
  • ろ過は上部ろ過槽かオーバーフローシステムが最適
  • 水温は25℃前後がよい
  • 意外なほど飛び出し事故が起こりやすいのでフタはしっかり
  • 砂を敷いてあげること。海水用の黒い砂を敷くのもおすすめ
  • 沈降性の餌がおすすめ
  • 傷がついていたり体の一部が赤くなっているようなものは購入しない
  • 入荷直後の個体も購入しない
  • 多くの魚と混泳できるが肉食魚やスズメダイは避ける
  • サンゴには無害だがイソギンチャクには捕食されることも
  • 大型の甲殻類もできれば避けたい

2020.08.19 (公開 2020.07.25) 海水魚図鑑

ローランズデムワーゼルの飼育方法~丈夫で飼育しやすく比較的おとなしめ

ローランズデムワーゼルはサンゴ礁にすむスズメダイの仲間です。ルリスズメダイほど派手なものではないのですが、暗色と白色のグラデーションが美しく、地域によっては頭部が黄色になるなど、非常に美しい魚です。今回はこのローランズデムワーゼルの飼育方法をご紹介します。

標準和名 なし
学名 Chrysiptera rollandi (Whitley, 1961)
流通名 ローランズダムゼル、ローランドダムセルなど
英名 Rolland’s demoiselle
分類 スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・ルリスズメダイ属
全長 6cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドメガバイトグリーンなど
温度 25℃前後
水槽 45cm~
混泳 ルリスズメダイ属のなかでは比較的おとなしい
サンゴ飼育

ローランズデムワーゼルって、どんな魚?

ローランズダムゼルはスズメダイ科ルリスズメダイ属の魚です。名前の表記には「ローランドダムゼル」「ローランドダムセル」など、揺らぎがあります。種の標準和名はなく、属名・英語名とも人名に由来しています。英名の「デムワーゼル」「ダムゼル」はフランス語に由来します。貴婦人とか、お嬢さんという意味で、かわいらしい様子や美しい色彩からついたのでしょうか。スズメダイの仲間は多くの種が結構タカビーな性格をしていますが・・・。体色はインドネシアなどから来るものは、灰色っぽい頭部と、黄色い体が特徴ですが、海域によるバリエーションが知られています。とても丈夫で飼育しやすいため、入荷直後の個体をのぞけばビギナーにもおすすめです。

美しいニューカレドニアタイプ

ローランズデムワーゼルは西太平洋に広くいますが、色彩や模様については生息海域によりバリエーションが知られています。その中でもよく知られているのが加藤昌一氏の「ネイチャーウォッチングガイドブック スズメダイ」(誠文堂新光社)では「ニューカレドニアタイプ」とされているもので、体は前(頭部)から黄色、暗色、白色という3色で極めてカラフルな個体です。ニューカレドニアタイプとされていますが、バヌアツから来るものも同様で、バヌアツのシマヤッコが入ってきた際には本種も来ていないか、チェックしてみたいものです。ただしお値段はスズメダイの類の中では結構高めです。ニューカレドニアタイプはたしかに美しいですが、一般に販売されるインドネシアなどのものでも頭部が薄くグリーンになり美しい魚です。

ルリスズメダイ属の魚は海域によるカラーバリエーションが豊富で、ほかにルリスズメダイや、タルボッツデムワーゼルも同様に海域によるバリエーションが知られていますが、そのなかのいくつかは別種とされるかもしれません。インドネシア近海に生息するシリキルリスズメダイなどはいくつかの種に細分化されました。

またローランズデムワーゼルは幼魚のうちは青いアイラインや背鰭の目玉模様がめだちますが、これらは成長につれ目立たなくなっていくようです。

ローランズデムワーゼルに適した飼育環境

水槽

ローランズデムワーゼルは小型種で成魚でも6cmほどです。45cm水槽での終生飼育が可能ですが、初心者や、ほかの魚と混泳するのであれば60cm以上の水槽での飼育をおすすめします。

水質とろ過システム

水質にはうるさくないのですが、色褪せを防ぐためにもきれいな海水で飼育したいものです。できれば上部ろ過槽を使用して飼育するのがよいでしょう。オーバーフロー水槽での飼育もよいです。小型水槽では外掛けろ過槽と外部ろ過槽を両方使用するのがベストといえます。

ローランズデムワーゼルはサンゴに無害なので、サンゴ水槽での飼育もできます。ベルリンシステムのミドリイシ水槽やソフトコーラル水槽ではよく似合います。しかしベルリン水槽は魚を多く飼うためのシステムではないことに注意しなければなりません。

水温

水温は25℃前後を確実にキープするようにします。22~27℃くらいであれば問題なく、丈夫な魚で28℃を超えても死ぬことは少ないのですが、クーラーとヒーターを使用し、できるだけ一定の水温をキープするように心がけましょう。水温の急変は魚が体調を崩して病気の発生につながりやすいからです。

ローランズデムワーゼルに適した餌

ローランズダムゼルは雑食性が強く、小動物やプランクトン、藻類も食べます。しかし水槽ではすぐに配合飼料を食べるので餌付けに関しては苦労しなくてすむことが多いです。おすすめの餌は粒状の「メガバイトシリーズ」。ローランズデムワーゼルであればSサイズで問題ありません。若干藻類も食うようですので、メガバイトはレッドでもグリーンでもよいでしょう。プランクトンフードとしてはコペポーダやホワイトシュリンプなどもよく食べますが、大量に与えると水を汚しますのでほどほどにしなければなりません。

ローランズデムワーゼルをお迎えする

西太平洋―東インド洋の熱帯域に広く分布していますが、日本にはいませんので購入に頼ることになります。本種はスズメダイの中でも安価なもののひとつで、ニューカレドニアやバヌアツのものでなければ1000円以内で購入することもできます。しかし、安価ということはいいことだけではありません。安価なものは扱いが雑になりやすく、それゆえ購入前の状態が重要になっています。やせていて薄っぺらくなっていたり、体表に傷がある、体表や鰭が赤くなっている、などの個体は購入してはいけません。できれば入荷してからある程度時間がたったものが望ましいです。

ローランズデムワーゼルとほかの生物との関係

ほかの魚との混泳

スズメダイ同士の混泳例

ローランズデムワーゼルはルリスズメダイ属の魚であり、そのため性格が若干きつめなところがあります。ただしローランズデムワーゼルはルリスズメダイよりはかなりおとなしめであり、大きな魚やほかのスズメダイとの混泳では若干ビビることもあります。観察は怠らないようにしましょう。90cm水槽では大きなクマノミなどと飼育していましたが、拒食となってしまい死んでしまいました。

我が家では45cm水槽でスプリンガーズデムワーゼルや、ビオラリボンスズメダイなどと混泳しています。これらは比較的おとなしめのスズメダイで組んでいるところがポイントです。後方に移っている青いスズメダイはスプリンガーズデムワーゼルですがこの種は同じく青いルリスズメダイなどと比べるとずっと温和です。

サンゴ・無脊椎動物との相性

ローランズデムワーゼルはサンゴ水槽での飼育もできます。水深35m以浅のサンゴ礁に多く見られ、どのようなサンゴにも似合います。ただしイソギンチャクの仲間には捕食されてしまうこともありますので、クマノミ類&イソギンチャクを飼育している水槽では飼育しないほうがよいでしょう(ディスクコーラルなどや、マメスナギンチャクなどのスナギンチャク類は問題なし)。

甲殻類はローランズデムワーゼルを食べてしまうものは避けます。大型のエビ、大型のカニ、大型のヤドカリなどはその傾向が強いです。一般的に魚と飼育されるクリーナーシュリンプは問題ないことが多いのですが、オトヒメエビの類は小型魚を襲って食べてしまうため、一緒に飼育するのは避けたほうが無難です。

ローランズデムワーゼル飼育まとめ

  • 丈夫で飼育しやすいスズメダイ
  • インドネシアなどから来るものとニューカレドニアやバヌアツから来るものでは色彩が異なる
  • 45cm水槽でも飼育できるが初心者には60cm以上の水槽が飼いやすい
  • 60cmなら上部ろ過槽。小型水槽なら外掛けろ過槽と外部ろ過槽を
  • 水温は25℃で安定していることが重要
  • 配合飼料をよく食べてくれる
  • 入荷直後のものは購入しない
  • 鰭や体表に傷があるものやただれがあるもの、やせているものもだめ
  • 大人しめのスズメダイで混泳も楽しめる
  • サンゴには無害

2020.07.26 (公開 2020.07.23) 海水魚図鑑

テンジクスズメダイの飼育方法~丈夫で飼育しやすいが性格はややきつい

テンジクスズメダイはオヤビッチャに似た小型のスズメダイです。体側には7本の細い横帯が入ることでよく似たオヤビッチャと見分けることができます。きれいでついつい持ち帰りたくなるものですが、成長するにつれ性格はきつくなり、またそれなりに大きくなるため最低でも60cm以上の水槽で飼いたいスズメダイといえます。今回はテンジクスズメダイの飼育方法をご紹介します。

標準和名 テンジクスズメダイ
学名 Abudefduf bengalensis (Bloch, 1787)
英名 Bengal sergeantなど
分類 条鰭綱・スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・オヤビッチャ属
全長 15cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトグリーンなど
温度 25℃
水槽 60cm~
混泳 性格きつめなので混泳には注意が必要
サンゴとの飼育 サンゴには無害だが、水質にデリケートなサンゴとの飼育は避けたい

テンジクスズメダイって、どんな魚?

▲テンジクスズメダイの成魚

テンジクスズメダイはスズキ目・スズメダイ科・オヤビッチャ属の海水魚です。全長15cmになり、スズメダイ科としては大きく育つ種です。薄い緑色の体に黒色の横帯が入るのが特徴でオヤビッチャに似ていますが、成長すると背鰭の軟条部が長くなり見事ですが、そのシルエットはなぜか淡水魚のティラピアの類を思わせます。名前の由来については、種の標準和名は「天竺」、英語名、学名もインドのベンガル湾からきていますが、この種のタイプ標本がベンガル湾で採集されたことにちなむものと思われます。余談ですが、現在(2020年7月)知られている日本産魚類の学名をアルファベット順にならべるとイトヒキオキハギ、オキハギ、ツチフキ、ツマジロオコゼ、カササハオコゼ、ハマダツに次ぐ7番目となります。

テンジクスズメダイとオヤビッチャの違い

▲テンジクスズメダイの横帯は7本

▲オヤビッチャの横帯は5本

テンジクスズメダイは、オヤビッチャに近いスズメダイの仲間で、テンジクスズメダイの幼魚はオヤビッチャの幼魚に非常によく似ています。しかし、体に7本の横帯があり、その幅はオヤビッチャよりも細くなりますので容易に見分けられるでしょう。

成魚は尾鰭の端が丸くなるなどの特徴もあります。また背鰭や臀鰭などもオヤビッチャと比べると明らかに形が変わっています。なお幼魚のころにあった体側の7本の横帯のうち最も後ろのもの(尾鰭に近い)は点状になることが多いようです。

なお、同じように体側に7本の横帯をもつ種としてはシチセンスズメダイやローレンツスズメダイがいますが、シチセンスズメダイは頭部の形が丸く、幼魚は尾鰭の付け根に目立つ黒色斑があります。さらに帯の様子も大きく異なっています。一方ローレンツスズメダイのほうは、テンジクスズメダイによく似たシルエットをしている魚ですが、最後の黒色横帯(尾柄部にある)は大きな黒色斑状となるので、ほかの同属魚類とは容易に見分けることができます。またローレンツスズメダイは日本国内では西表島からしか知られていない種です。

テンジクスズメダイに適した飼育環境

水槽

テンジクスズメダイは15cmを超え、スズメダイ科としては大型種です。水槽での飼育下ではそれほど大きくなることはありませんが、最低でも60cm以上の水槽で飼育してあげるべきです。また成長すると性格もきつくなっていくため、ほかの魚との混泳を考えるなら最低でも90cm水槽が欲しくなります。もっとも本種との混泳に適した魚は多くありませんが(後述)。

水質とろ過システム

テンジクスズメダイは魚の多い、硝酸塩濃度の高い水槽でも飼育することができます。しかしながら、あまりに硝酸塩が多い状態で飼育するのはあまりよくありません。少なくとも成魚は上部ろ過槽か、オーバーフロー水槽での飼育が最適です。

テンジクスズメダイは性格がきつめですが、サンゴには無害なのでサンゴ水槽で飼育することもできます(後述)。しかし、ベルリンシステムなどで飼育するのであれば魚を多数入れることはできないので注意が必要です。また、テンジクスズメダイは大型になり成魚は排せつ物の量もそれなりに多くなります。したがってベルリンシステムなどでの飼育はあまり向いていないかもしれません。

水温

極めて浅い場所に生息しており、30℃前後の高い水温への耐性もありますが、できれば22~25℃の水温で飼育してあげたい魚といえます。もちろん水温が一定であることが重要です。これは水温の変動が大きいといくら丈夫なテンジクスズメダイであっても体調を崩して白点病などの病気になってしまうこともあるからです。ヒーターやクーラーを使用し、常に一定の水温をキープするようにします。

テンジクスズメダイに適した餌

▲おすすめはキョーリンの「メガバイト」シリーズ

テンジクスズメダイは海の中では雑食性で、藻類や小型の甲殻類、流れてくる動物プランクトンなどを食べています。水槽内では配合飼料もよく食べてくれるので心配は不要といえます。コペポーダやホワイトシュリンプといった餌は与えればよく食べますが、これらの餌は水を汚しやすいのでほどほどにしましょう。なおテンジクスズメダイは藻類食でもあるので藻類の成分を強化した餌がよいかもしれません。個人的におすすめなのはキョーリンの「メガバイト グリーン」です。メガバイトグリーンにはサイズの異なる3種がラインアップされていますが、テンジクスズメダイの体サイズによって使い分けるようにしましょう。ただし餌の単用はあまりよくないのでメガバイトレッドなど、ほかの餌もたまに与えてあげるとよいでしょう。

テンジクスズメダイをお迎えする

▲テンジクスズメダイのいるタイドプール

テンジクスズメダイは海水魚店ではほとんど販売されていません。とくに幼魚の販売は皆無といえます(成魚は飼いきれなくなった個体が引き取られて販売されていることがある)。幼魚は磯に見られますが、外洋に面した荒磯よりも濁ったタイドプールに多いような印象を受けます。筆者は宇和海のかなり奥の磯、オヤビッチャさえほとんどいないような場所でも採集したことがあり、内湾性という印象が強いです。分布域は相模湾以南から九州の太平洋岸で、案外沖縄や小笠原諸島ではあまり見ません。東~南シナ海には多く生息しているようで、大陸沿いを中心とした分布なのかもしれません。

見つけたら2本の網で囲むように採集するのが簡単ですが、採集しても持ち帰るべきかどうかはよく考えてからにしましょう。飼育できる水槽がない、60cm(できれば90cm)水槽を置けないという人や、小さいのを採集して大きくなってから逃がせばいいやと思っているのであれば、飼育してはいけません。

テンジクスズメダイとほかの生物の関係

ほかの魚との混泳

▲幼魚はほかの魚との混泳が可能だが

ほかのオヤビッチャ属の多くの種も同様ですが、幼魚のうちはおとなしく、多くの魚と混泳できます。しかしある程度大きくなると縄張りを主張し、ほかの魚を蹴散らすようになってしまうので、同じようにタフなスズメダイの仲間、ニザダイ類や大型ヤッコくらいしか適した混泳相手がいなくなります。ハタの仲間は口がかなり大きく、サイズによっては捕食されてしまうこともあるので注意が必要です。

サンゴ・無脊椎動物との相性

▲コモンサンゴとテンジクスズメダイ

先ほども述べたようにテンジクスズメダイはサンゴには無害ですので、サンゴ水槽での飼育も可能です。内湾の浅場に生息するということで、浅場のコモンサンゴやキクメイシとの飼育が楽しいでしょう。ミドリイシとの飼育もできないわけではないのですが、大きくなり排せつの量も多く、性格もきつい(ほかの魚をいれにくい)テンジクスズメダイとの相性はよくないといえるでしょう。イソギンチャクはクマノミ以外の魚を食べてしまうので、テンジクスズメダイとの飼育には向きません(マメスナギンチャクやディスクコーラルは問題なし)。

そのほか無脊椎動物ではサラサエビなどを食べてしまうことがあり、逆に大きなイセエビの類、大型のカニ、大型のヤドカリには襲われてしまうことがあります。甲殻類の中で一緒に飼育できるのはサンゴヤドカリやベニワモンヤドカリ、各種クリーナーシュリンプですが、オトヒメエビは大きなハサミを持っており、テンジクスズメダイの幼魚を襲って食べてしまうことがあるのでなるべく一緒にしないほうがよいでしょう。

テンジクスズメダイ飼育まとめ

  • オヤビッチャに似ているが体側に7本の横帯がある
  • 成長すると鰭の形が特徴的になる
  • 飼育するなら最低でも60cmは欲しい
  • ろ過槽は上部ろ過槽もしくはオーバーフローが最適
  • 高水温にも耐えられるが25℃がベスト、安定していることも重要
  • 雑食性だが配合飼料もよく食べる
  • 販売されることはほとんどないので採集するしかない
  • 採集しても持って帰るかどうかはよく考えるべき
  • 幼魚は多くの魚と混泳できる
  • 成魚は大型魚でないと混泳は難しい
  • サンゴには無害だが水を汚しやすい

2020.08.28 (公開 2020.07.22) 海水魚の採集

夜の磯で魚採集!獲れる魚や注意点を解説します

海水魚採集は昼間に楽しむものと思いがちですが、魚の種類や季節などによっては夜間のほうが採集しやすいことも多くあります。しかしながら、ただでさえ危険で注意すべき点が多い磯採集であり、夜間はより危険が増すのでより注意しなければなりません。今回は夜の磯採集での注意点や獲れる魚などをご紹介します。

夜磯採集とは

文字通り、夜の磯でおこなう採集です。アクアリストが追いかけるチョウチョウウオ、スズメダイ、キンチャクダイ、ニザダイ、ハゼ、カエルウオetc…これらの魚は昼間泳ぎ回っていますが、夜間は眠ってしまうのです。これらの魚が眠っていて動きが鈍いときに網で掬って採集するのが夜磯採集の基本なのです。ここでは夜の磯採集についてご紹介していますが、砂地の混ざりの磯などで採集を行う際の参考にもなるかもしれません。ただし夜間の漁港での釣り採集については対象外とさせていただきます。

夜磯採集の利点

魚の動きが鈍い

▲素早いカエルウオも夜間はじっとしていることが多い

夜間に磯採集をおこなう最大のメリットがこれです。夜間は魚の動きが鈍くなるため昼よりも採集がしやすくなります。すばしっこいチョウチョウウオの仲間やニザダイの仲間、あるいはすぐ飛び跳ねて逃げようとするカエルウオの仲間などを採集するときにはこのメリットが大きいといえます。

夜しか姿をあらわさない魚も

夜行性の魚はその名の通り、夜間に活発になります。昼間にはなかなか姿を現さないものもおり、そのような魚は夜間に採集するのがよさそうです。ウツボやアナゴの仲間、テンジクダイの仲間、イットウダイの仲間、各種甲殻類や貝類などは夜間に活発になります。ただしオトヒメエビやタカラガイ、イモガイの類は採集してもよいのですが、イセエビやサザエなどは獲ってはいけません。またウツボやタコ、イモガイなどかまれると痛い目にあうものもいますので十分に注意します。

夜磯採集の注意点

足元が危ない

▲オニダルマオコゼは背鰭に猛毒棘あり。刺されると危険

まず夜間の磯採集は昼以上に足元に注意しなければいけません。夜の磯の場合足を踏み外して海に落下なんていう事故はとくに生命にかかわってきます。できれば磯へ行く前に航空写真などを閲覧して、できればあらかじめ明るいうちに現場に入るようにしてどのような状況になっているか把握しておきたいものです。また沖縄などでは足元にサンゴがごろごろと転がっていることもありますので、サンゴを踏みつぶさないようにします。そしてオニダルマオコゼやエイなども有毒の棘があり踏むと危険ですので細心の注意をはらう必要があります。

密漁に間違えられることも

夜は無脊椎動物の活動時間でもあります。その中でも貝類やイセエビの仲間は活発に動き回ります。そのためイセエビを密漁しているのではないか、と間違えられることもあります。バケツを除いたらイセエビがごっそり、なんてことのないように注意します。また都道府県によっては懐中電灯と一緒に使用できる網の大きさが決められていたりするようで、注意が必要といえます。またウミガメの仲間は光を嫌うようでそうなると産卵のために上がってこなくなるようで、懐中電灯などの利用が制限されることもあります。そのような場所での採集はやめたほうがいいかもしれません。

危険生物に注意

▲イモガイの仲間

先ほどものべたように、夜は無脊椎動物の活動時間でもあります。特に貝類や甲殻類は昼間よりもよく見られるのですが、その中には触ると危ない生物もいろいろいます。イモガイの仲間やらタコの仲間などは毒をもち、刺されたりかまれたりすると種によっては死に至るものもあります。このほかにイシガニの仲間(挟む力が強い)、ゴンズイ(背鰭と胸鰭の棘に毒がある)、ウツボ(歯が鋭くかまれると危険)、などがいます。

ものをなくしやすい

夜中の磯は真っ暗なので、当然昼間よりも網やバケツなどをなくしやすいといえます。用品は基本的に一つにまとめておいておき、手には懐中電灯、網、小さなバケツくらいにとどめておくのが無難です。そして一つにまとめた用品には発光するサイリウムなどを一緒においておくとよいでしょう。

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子連れ採集には最大限の注意を

最近は夜の磯でも採集する親子の姿を見ますが、磯に子供を連れて採集するときは必ず子供と一緒にいるようにしなければいけません。これは子供は好奇心が旺盛であちこちうろうろして危険な目にあいやすいからです。しかしながら私は、子供を夜の磯へ連れていくことはあまりおすすめしません。ただでさえ危険なことがいっぱいある磯なのに、暗くて足元も危ないので危険性が増してしまいます。また、大人であってもなるべく一人では行かないようにしたいところです。仲間がいないというときは、TwitterやFacebookなどのSNSサイトなどで仲間と出会うこともできます。

懐中電灯の電池残量は大丈夫?

▲夜の磯を歩く筆者。懐中電灯が欠かせない

夜間採集でもっとも重要なものが懐中電灯です。この懐中電灯の電池については、できれば採集へ行くたびに新しいものに交換しておきたいところです。採集の際に突然懐中電灯の電池が切れてしまえば採集に支障がでるどころか、生命にかかわることさえあります。できれば、もう一つ予備の懐中電灯を用意しておくくらいの万全な体制で磯に挑みましょう。懐中電灯も多くが従来の豆電球型からLEDのものに切り替わるようになりました。海水魚採集では防水のものが安心です。筆者はアイリスオーヤマのLED懐中電灯(1300ルーメン、結構重い)や、松下電器(現:パナソニック)の豆球懐中電灯BF-BS10(7000ルクス、軽いが大きい)などを使用しています。ただし懐中電灯は明るさも重要ですが持ち運びが楽かどうかも重要となります。いろいろ購入して自分に合ったサイズのものを見つけましょう。

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夜磯で出会える生物

チョウチョウウオの仲間

▲チョウハンのナイトカラー

昼間は素早くてなかなか採集できないチョウチョウウオも、夜間はさすがに泳ぎも鈍く、見つけることができれば容易に採集することができます。ただし夜間のチョウチョウウオは写真のように、昼間とは全く異なる色彩をしており見つけにくいこともあります。チョウチョウウオの仲間のほか、ほかの魚も同様の色を出していることが多いです。飼育はしやすいとはいえず、またサンゴ水槽にも入れられません。中~上級者向けといえます。

スズメダイの仲間

▲テンジクスズメダイの幼魚

▲ソラスズメダイ(水槽内で撮影したもの)

夜の磯でもスズメダイの仲間はお馴染みのものです。潮だまりではテンジクスズメダイ(写真)、イソスズメダイ、シマスズメダイなど、オヤビッチャ属の魚が多く見られます。しかしオヤビッチャ属の魚は性格がかなりきついので注意が必要です。昼間は用意に種を見分けられますが、ナイトカラーを出しているものはなかなか見分けにくいので、注意が必要です。ちなみにソラスズメダイやルリスズメダイは昼間は鮮やかな青色なのですが、夜間は暗い藍色になっていたり、真っ黒になっていることもあります。

ニザダイの仲間

▲シマハギ

ニザダイの仲間は昼に採集しようとすると素早く泳いで逃げ回りますが夜間は岩陰で休息しており動きもおとなしくなります。浅い潮だまりではニザダイ、クロハギ、ニセカンランハギ、ニジハギ、シマハギ、モンツキハギなどが採集できますが、シマハギ以外は大型になるため水槽もかなり大きなものが必要になるなど、飼育しにくいところがあります。

同様に昼間は泳ぎ回るアイゴの仲間も夜の磯で採集できます。しかし種類は少なく、関東ではアイゴのみ、沖縄でも潮だまりに入るのはアミアイゴなど数種と少ないです。またニザダイは尾に棘をもっており、取り扱いには注意が必要です。またアイゴやニザダイの鰭棘は強く、毒をもつため注意が必要です。

ボラ・トウゴロウイワシの仲間

▲トウゴロウイワシ科のムギイワシ

ボラの仲間はタイドプールではよく見かけますが、ある程度大きく育ったものは動きが素早く採集するのは難しいといえます。しかし夜間は昼間より動きがおとなしいことも多く、採集することができます。このほか、ボラの仲間によく似たトウゴロウイワシの仲間も昼間は水面直下を大群で素早く泳ぎ回っていますが、夜間は少しはおとなしくなり、採集もしやすくなります。写真のムギイワシも夜間波打ち際に集団でいたところを採集しました。場所的には国内どこでも獲れるようですが、西日本や琉球列島では多くの種が見られます。

テンジクダイの仲間

▲沖縄や奄美方面で採集できるテンジクダイの仲間たち

テンジクダイの仲間は夜間は活発に動くようになります。本州ではクロホシイシモチやミスジテンジクダイなど見られる種類は多くはないのですが、琉球列島では数・種ともに多くスジイシモチ(写真右)、タスジイシモチ(写真左)、キンセンイシモチなどが浅瀬で数多く見られ、シボリやリュウキュウイシモチ、ホソスジナミダテンジクダイといったちょっと変わった種類も見ることができます。

イットウダイの仲間

▲サンゴ礁の浅瀬ではホシエビスなども見ることができる(写真は飼育個体)

昼間はめったに姿を見せないのに夜間には活発に動くタイプの魚としてはこのイットウダイの仲間がいます。イットウダイの仲間は昼間は洞窟のような場所に潜んでいますが、夜間には泳ぎ回ります。イットウダイ科の魚は関東では少ないものの、アヤメエビスやテリエビス、おそらくツマリマツカサと思われる種が採集できることがあります。もちろん南西へ行くほど種類は多くなり、上記の種のほかナミマツカサ、クロオビマツカサ、ニジエビス、ホシエビス、ウケグチイットウダイ、アカマツカサ(琉球列島限定)などが見られます。

ウツボ・アナゴの仲間

▲沖縄島で採集したアミキカイウツボ

ウツボの仲間も昼はなかなか姿を見せませんが夜間のタイドプールではよく泳ぎ回る姿を見ることができます。関東では主にウツボかトラウツボ、もう少し行くとワカウツボやサビウツボ、ミナミウツボも見られ、琉球列島ではさらに多くのウツボを見ることができます。海水魚店ではよく見られるクモウツボも採集できるかもしれません。このほかアセウツボ、シマアラシウツボ、ヘリゴイシウツボ、ゼブラウツボ、アミキカイウツボなどが浅瀬で見られます。とくにアミキカイウツボはかなり浅い場所でも見られ、採集も容易です。ただしウツボの仲間は鋭い歯を持っているものが多く、かまれるとけがをすることもあるので注意しましょう。

アナゴの仲間で岩礁域にいるものは少ないのですが「トオヘエ」ことクロアナゴは夜間たまに見られます。これを飼育するのも楽しいように思えますが、この種はメーターオーバーになってしまうため、家庭水槽ではなかなか飼育しにくいものです。

カエルウオの仲間

▲夜のカエルウオの仲間(ホホグロギンポ)は捕まえやすい。手で触れたらそのまままっすぐ網の中へ入った

カエルウオの仲間は干潮時潮が引いたタイドプールでよく見られますが、網を近づけるとジャンプしてしまうのでなかなか採集しにくいところもありますが、夜間は潮だまりでじっとしており、網を近づけたら簡単に採集することができます。ただしフタをしていないといくら夜間寝ぼけてた個体といえジャンプして逃げてしまうこともあるため、バケツにフタはしっかりしておきましょう。

関東沿岸では少ないのですが、高知や宮崎、鹿児島、琉球列島では多くの種類を採集することが可能です。アクアリストにお馴染みのヤエヤマギンポ、それよりも小ぶりなシマギンポ、カエルウオ(九州以北)、ニセカエルウオ、センカエルウオ、ホホグロギンポ、スジギンポなど、カエルウオの仲間もいろいろいるのです。

ダンゴウオ・クサウオの仲間

▲ダンゴウオは冬の夜の人気者だ

冬季限定ですが、ダンゴウオやスナビクニンといったかわいい魚も夜の磯で採集できます。秋から冬季は夜のほうが昼間よりも潮が引くことが多いようで、このような魚に出会えるチャンスも多くなるのです。ただし、これらの魚は低い水温を好むため、クマノミやヤッコといった熱帯性海水魚や、造礁サンゴとの飼育は一切できませんので、注意が必要です。ダンゴウオと出会える場所は大体太平洋岸の三浦や房総などで、西日本では少ないです。なお、日本海岸にはダンゴウオはおらず、かわりにサクラダンゴウオというのが見られます。

ベラの仲間は少ない

▲夜間に採集したメガネモチノウオ

昼間の磯ではベラの仲間はよく見るものですが、夜間の磯ではベラの仲間はほとんど見られません。ベラの仲間は夜間は砂に潜ってしまうからです。夜間の磯で採集することができるベラの仲間はオハグロベラやモチノウオの類など一部の種に限られます。これらのベラは大きくなり、そうなると小魚や甲殻類を食べてしまいますので、サンゴ水槽での飼育には適していません。

夜磯採集まとめ

  • 魚の種類や季節などによっては夜間のほうが採集しやすいことも多い
  • 昼間泳ぎ回る魚も夜は動きが鈍くなっている
  • 夜間にしか姿を現さないような魚も多い
  • 足元は昼間以上に注意が必要
  • 密漁と間違えられることもある
  • 危険な生物も多く出現する
  • ものをなくしやすいのでひとまとめにおいておくのもよい
  • できるだけ一人では行かないようにする
  • 懐中電灯は命綱。電池はできるだけ新しいものを
  • チョウチョウウオやスズメダイは動きが鈍い。ナイトカラーを出していることも
  • ニザダイは夜間は採集しやすいが棘に注意
  • ボラやトウゴロウイワシなどもゆったりと泳いでいる
  • テンジクダイやイットウダイ類、ウツボなどは夜間に多い
  • 冬の夜磯ではダンゴウオも採集できるが熱帯性海水魚や造礁サンゴとの飼育は不可
  • ベラの仲間はほとんど見られない

2020.07.21 (公開 2020.07.20) 海水魚の採集

関東で採集できるチョウチョウウオ~種類と飼育の際の心構え

夏から秋にかけては関東地方沿岸にもチョウチョウウオの仲間の幼魚が出現します。沖縄などと比べると数は少ないのですが、それでもチョウチョウウオ、トゲチョウチョウウオ、フウライチョウチョウウオは毎年のように見られ、チョウチョウウオなど一部の種は越冬しているのではないかと思えるくらい見ることができます。この関東沿岸でみられるチョウチョウウオの仲間を飼育するにはどうすればよいでしょうか。

関東でみられるチョウチョウウオ

我が国は四方を海に囲まれており、その海には「海流」という大きな海水の流れがあります。よく知られているのが太平洋岸を流れる日本海流、通称「黒潮」で、フィリピンあたりからはじまり、沖縄を経て九州から四国、そして本州の太平洋岸に及びます。その後は房総沖あたりで千島海流(親潮)とぶつかり日本から離れていきます。この黒潮に南方から魚の卵や稚魚が運ばれて夏になると本州から九州の太平洋岸でみられるようになりますが、冬になると寒さに耐えられず死んでしまい、このような魚を「死滅回遊魚」とか、最近では「季節来遊魚」とかいったりします。チョウチョウウオもこのような死滅回遊魚の一種であり、夏から秋の終わりにかけて関東以南の磯でみられるのですが、残念ながらほとんど越冬できず冬には死に絶えてしまいます。アクアリストはこのような魚と出会うために、毎年海へ出かけていくのです。トップの写真も外房で採集したチョウチョウウオとフウライチョウチョウウオです。

「外房5種」とは?

よくアクアリスト、それも磯採集が好きな人が使う言葉に、「外房5種」というものがあります。「外房5種」とは、千葉県外房地域(房総半島南端から勝浦あたりの太平洋岸)でよくみられるチョウチョウウオの仲間です。種類でいえばチョウチョウウオ(俗にナミチョウ)、トゲチョウチョウウオ、フウライチョウチョウウオ、チョウハン、そしてアケボノチョウチョウウオです。これらの5種はほぼ毎年のように見られる種で、ベテランとなるとこれらのチョウチョウウオには見向きもせず、より珍しい種を追い求めていく、という人もいます。しかしこれらの種類も美しいため、あまり無視してほしくはないなと思います。

外房5種のチョウチョウウオ

チョウチョウウオ(ナミチョウ)

▲チョウチョウウオ

関東の沿岸ではもっともよくみられるのがこのチョウチョウウオ。この種の標準和名が科の標準和名にもついていることからもわかるように、この仲間の代表的な種といえます。しかし、この種は採集できても持って帰らないという人も多いのです。理由は飼育が難しいからで、雑食性のチョウチョウウオであるにもかかわらずなかなか配合飼料を食べないという問題があります。また、磯にたくさんいるので軽視されがちという問題もあります。成魚は黄色がきれいなだけにもったいないといえます。

トゲチョウチョウウオ

▲トゲチョウチョウウオ

チョウチョウウオ(ナミチョウ)に次いで2番目に多いのがこのトゲチョウチョウウオ。成魚では背中から臀鰭、尾鰭まで黄色くなりますが、幼魚ではこれらの鰭はオレンジ色をしていて、尾鰭は透明です。チョウチョウウオの仲間でも丈夫で(比較的)飼育しやすいものですが、成魚はやや強めになります。はじめてチョウチョウウオを飼うなら本種がおすすめといえますが、まずはほかの魚から飼育を初めて経験を積むのが安心でしょう。

トゲチョウチョウウオの飼育についてはこちらをご覧ください。

フウライチョウチョウウオ

▲フウライチョウチョウウオ

フウライチョウチョウウオもトゲチョウチョウウオ同様、チョウチョウウオに次いでよく見られるチョウチョウウオの仲間の魚です。トゲチョウチョウウオに似ていますが、体側のオレンジ色の域が狭く、白色とオレンジ色の境界が黒っぽくなっているのが特徴です。また背鰭軟条部に黒色斑があるのは幼魚だけで、成魚にはこれは見られません。飼育については雑食性ですが、臆病であったり気が強めであったりという、説明するのが難しい性格で、なかなか長期飼育させにくいチョウチョウウオといえます。餌は食べるのですが、やせやすいです。

フウライチョウチョウウオの飼育についてはこちらをご覧ください。

チョウハン

▲チョウハン

チョウチョウウオによく似た種類で、眼を通る黒い帯の後方に黒色域があるチョウチョウウオの仲間です。背鰭には幼魚の時にだけ黒色斑がありますが、成魚では消失します。関東の磯でも毎年夏から秋にかけて見られますが、個体数はチョウチョウウオやトゲチョウチョウウオと比べると圧倒的に少ないです。飼育についても小さいものは臆病なところが見られます。ある程度の大きさに育ったものを飼うのが安心でしょう。

アケボノチョウチョウウオ

▲アケボノチョウチョウウオ

アケボノチョウチョウウオも人気があるチョウチョウウオの仲間です。写真はちょっと大きくなった個体ですが、夏から秋にかけては模様がほとんど変わらず、そのまま小さくしたような個体を見ることができます。サンゴのポリプを中心にした雑食性ですが、状態がよければ配合飼料にも早く餌付きます。

外房5種以外に関東で見られるチョウチョウウオ

ハタタテダイ・ムレハタタテダイ

▲ムレハタタテダイの子

ハタタテダイ・ムレハタタテダイともに広い分布域をもち、外房5種と呼ばれるチョウチョウウオに本種を合わせて「外房6種」なんて言ったりもします。ムレハタタテダイは定置網に入ることも多いのですが、定置網では獲れたあと氷水に漁獲物を入れることも多く、状態はよくないです。一方ハタタテダイは岸壁でも採集することができます。早い段階で配合飼料を食べるのですがやせやすく。かつ好奇心は旺盛でほかの魚の鰭をつつくことがあります。

セグロチョウチョウウオ

▲セグロチョウチョウウオ

セグロチョウチョウウオも幼魚は千葉や三浦で採集できるのですが、その数は少なく、採集できたらハッピーといえます。トゲチョウチョウウオに近い仲間とされ、トゲチョウチョウウオ同様、成長すると背鰭後方の鰭条が長く伸長するようになります。幼魚は内湾の環境を好み、濁った漁港の中で見られますが、成魚はサンゴ礁でよく見られます。食性は雑食性で餌は食べてくれますが、ややデリケートなようです。

ニセフウライチョウチョウウオ

▲ニセフウライチョウチョウウオ

ニセフウライチョウチョウウオは全長30cmを超えるチョウチョウウオ科としてはもっとも大きくなるもののひとつです。幼魚は千葉県以南の太平洋岸でも見られ、セグロチョウチョウウオと同様に内湾に多いように思います。基本的には丈夫で飼育しやすく、成魚であればヤッコなど大きめの魚との混泳もできるのですが、幼魚のうちはアサリなどから餌付かせるようにします。

ミゾレチョウチョウウオ

▲ミゾレチョウチョウウオ

ミゾレチョウチョウウオはチョウチョウウオ科の中でもとくに餌付きがよい魚なのですが、やや気が強いというところがありますので、混泳には注意が必要です。外房でも見られ、分布域は非常に広いのですが、チョウハンやトゲチョウチョウウオなどと比べると数は非常に少ないといえ、これも採集出来たらハッピーといえます。先ほども述べたように餌付きがよく配合飼料も食うようになりますが、小さいのは餌を食っていてもやせやすいので配合飼料を食っていてもアサリなどをしばらく一緒にあたえるのがベターです。

シラコダイ

▲シラコダイ

シラコダイは温帯に多いチョウチョウウオで色彩は派手ではないのですが、うすい黄色の体と紫色の頭部が特徴で美しい魚です。ほかのチョウチョウウオと異なり餌付きは非常によいのですが、高水温に注意しなければなりません。

このほか関東沿岸でもゴマチョウチョウウオ、アミチョウチョウウオ、トノサマダイ、ミスジチョウチョウウオ、フエヤッコダイ、ハシナガチョウチョウウオ(1匹のみ)などの採集記録はありますが、これらは個体数が少なく、今回は外させていただきました。このほかゲンロクダイなど深場にすむ種も除外しています。

外房5種の飼育

外房5種は毎年よく見られるだけあり、ほかの珍しいチョウチョウウオの仲間と比べると扱いが雑になってしまいやすいのですが、そのような扱いをするのであればチョウチョウウオの仲間は飼育しないほうがよいでしょう。チョウチョウウオの仲間の飼育にはしっかりとした装備が必要になり、以下に述べるようなものをそろえないと短命に終わってしまいやすいのです。ですから初心者のアクアリストはチョウチョウウオの仲間を採集しても持ち帰らず、逃がしてあげたほうがよいでしょう。

水槽サイズ

チョウチョウウオの仲間の幼魚はアサリなどを与えなければならず、水を汚しやすいため小型水槽での飼育には向かないところがあります。最低でも60cm、できれば90~120cm水槽が欲しいところです。

水質とろ過システム

オーバーフロー水槽が最適

チョウチョウウオはできるだけきれいな海水で飼育したいものです。ろ過装置もしっかりしたものが必要です。ろ過槽の種類は上部ろ過でもよいのですが、おすすめはオーバーフロー水槽です。外部ろ過槽や外掛けろ過槽は思ったほどにパワーがなく底面ろ過槽は砂がないと使えません。また、できれば上部ろ過槽やオーバーフロー水槽でもセットして早いうちにチョウチョウウオを採集して水槽に入れるというのはよくありません。できればチョウチョウウオを入れる前に、ほかのおとなしい魚を泳がせておいてある程度時間がたってからチョウチョウウオを入れるようにしたいものです。

水温の安定

チョウチョウウオは白点病になりやすい魚です。そのため、水温の安定は非常に重要です。水温の変動が激しいと魚が体調を崩して病気になりやすいからです。ヒーターとクーラーの両方を使用して水温を安定させるのですが、紫外線殺菌灯も取り付けたいところですのでクーラーは強力なものを使わなければなりません。これは殺菌灯が水温上昇を招きやすいためです。

紫外線殺菌灯

紫外線殺菌灯はチョウチョウウオ飼育の必須アイテムともいえます。チョウチョウウオは白点病にかかりやすいため、その病気予防策が必須なのです。殺菌灯は病気予防に確かに効果はあるのですが、万能なアイテムではなく、いくら殺菌灯がついていても水質が悪化すれば魚は死んでしまいますし、水温の変化が激しいと魚も体調を崩してしまいます。そうなると病気にかかりやすくなるのです。水温を一定に保ち、水質も大きなろ過槽できれいな水を維持していることを前提に、殺菌灯で病気を防ぐというものです。

殺菌灯や殺菌灯を水槽につなげるポンプは熱を出してしまうのでパイプやホースで配管するときは必ずクーラーの前に来るようにします。殺菌灯の照射により温められてしまった海水をクーラーで冷やすというイメージです。そのためクーラーも強いものが必要になります。

隠れ家

チョウチョウウオたちが隠れられるように、水槽にはサンゴ岩や飾りサンゴなどの隠れ家を作ってあげましょう。ライブロックでもよいのですが万が一病気が発生したら、ということを考えると薬を使用することができるサンゴ岩や飾りサンゴのほうが適しているかもしれません。いずれにせよ一度隠れ家を入れたら動かさないようにします。隠れ家の底のほうにはデトリタス(有機物粒子)がたまりやすいからです。その中には白点病を引き起こす生物が潜んでいるかもしれません。

水流ポンプ

水がよどんでいるのもよくありません。そのような場所にはデトリタスが堆積しやすく、白点病を引き起こす生物がいる可能性もあります。コラリアなどの水流ポンプを使用し、よどんでいる場所をなくしたいものです。

いずれにせよすでに有機物が多数あるような水槽に新たに水流ポンプを使用して底方に強い流れを起こすのはよくありません。あらかじめホースなどを使用してデトリタスをとりのぞき、その分新しい海水を足してからポンプを稼働させる必要があります。

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底砂

底砂は敷くことも敷かないこともあります。敷くメリットとしてはpHの安定、底面のガラス面に移った自分の影におびえない、などがあげられ、逆にデメリットとしては砂の中に白点病のもとになる生物が潜んでいる可能性がある、食べ残しを回収しにくい、などがあげられます。底砂を敷くのであれば薄く(1cmくらいまで)敷くようにして決して厚く敷かないようにします。

餌はとりあえずアサリを与えます。冷凍したアサリを開いて、ミンチにしたり、切れ目を付けたものを殻ごと水槽に沈めるだけで十分です。アサリを冷凍させるのは寄生虫などがいることがあるからです。その後はアサリと配合飼料を一緒に与えて慣らしていきます。ただし配合飼料に餌付いても幼魚はかなりやせやすいため、できればアサリも継続して与えたいところです。このような餌やりは水を汚しやすいですが、だからこそ豊富な水量の水槽としっかりしたろ過槽が必要な理由になります。

関東のチョウチョウウオの仲間まとめ

  • 関東の磯でもチョウチョウウオと出会うことができる
  • 外房5種と呼ばれるチョウチョウウオ、フウライチョウチョウウオ、トゲチョウチョウウオ、チョウハン、アケボノチョウチョウウオは毎年のように見られる
  • ほかハタタテダイやミゾレチョウチョウウオなどに出会えることも
  • 採集できても準備ができていない、もしくは初心者は逃がしたほうがよいかもしれない
  • 90~120cm以上の水槽で飼育する
  • 水を汚しやすいのでろ過槽はしっかり。オーバーフロー水槽が理想
  • 水温の安定は重要。とくにクーラーは大きなものを
  • 殺菌灯は病気予防に有効だが水温や水流も重要な要素
  • 隠れ家はサンゴ岩や飾りサンゴが理想。あまり動かさないように
  • 水がよどまないよう水中ポンプもつけてあげたい
  • 底砂は敷かないほうが管理はしやすい
  • 餌は冷凍したアサリを中心に

2020.07.17 (公開 2020.07.17) メンテナンス

ライブロックに二枚貝が付着していた際の対処方法

マリンアクアリウムで使用されるライブロックにはさまざまな生物が付着していますが、その中にはそのまま水槽で飼育し続けてよいものだけでなく、害を及ぼすおそれがあるため、水槽から取り除きたい生物もいます。ライブロックからはたまに二枚貝の仲間が出てくることもあります。この二枚貝は果たして飼育している魚やサンゴに害を与えてしまうのでしょうか。それとも何もせずそのまま飼育していてよいのでしょうか。今回はライブロックから出てくることがある二枚貝とその対応方法についてご紹介します。なお、ライブロックから出現する生物についてはこちらもご覧ください。

二枚貝とは

▲アサリ

分類学的には動物界・軟体動物門・二枚貝綱に属する生物です。昔は斧足綱とも呼ばれていましたが、昨今は二枚貝綱と呼ばれることが多くなっているようです。二枚貝は巻貝やツノガイの仲間と異なり、その名前の通り、二つの殻をもつ貝の仲間です。一般的には岩に固着したり、砂泥底中に埋まりながら暮らしており、自力で動くことができないような種類も多いです。食性は一般的に水管から有機物やプランクトンを吸い込んで捕食しています。海産が多いのですが、ドブガイやヌマガイ、シジミなど淡水に生息するものもいます。

二枚貝は食用種も多く、思いつくだけでもアサリ・ハマグリ・バカガイ・アカガイ・ホタテガイ・マテガイ・カキなど、美味なものもいろいろといます。しかしながらその食性ゆえに有害物質を取り込むこともあるので食用にする際には注意が必要なことがあります。このほかに真珠養殖の母貝としてアコヤガイなどのウグイスガイ類を使用したり、貝細工を作ったりします。

ライブロックにつく二枚貝

二枚貝の仲間と一口に言ってもさまざまなものがあります。アサリやハマグリのように砂泥底にもぐってすむものや、岩の中に穴を掘ってすむもの、岩に付着しているものがいますが、ライブロックについている二枚貝は岩に付着するもので、エガイの仲間やイガイ科、もしくは小型のウグイスガイ科、あるいはカキの仲間のものが多いです。このほか大型のサンゴを購入すると岩の中に穴をほってすむ二枚貝が見られることがあります。

フネガイ科

▲エガイと思われる貝

フネガイ科に属する二枚貝の仲間で、ライブロックにつく二枚貝としては多くみられるものです。ライブロックの隙間や穴の中に潜んでいることも多く、結構高い確率で入ってくる貝といえます。サンゴ礁ではベニエガイなどの美しい種が知られていますが、まず観賞魚店では販売されない種類といえます。おもに足糸というものを出して岩やコンクリートに固着しています。

イガイ科

▲ムラサキイガイ

この仲間は欧州で「ムール貝」と呼ばれよく食べられているものです。主に岩やコンクリートなどに足糸と呼ばれるもので張り付いています。写真の個体にも見られます(長いふさふさの糸のようなもの)。ほかにミドリイガイなどの貝もいますが、サンゴ礁にはあまり多くはないようです。サンゴ礁ではイガイの仲間にかわり、ウグイスガイやフネガイの仲間が多くなります。そのためライブロックについていることはあまり多くないように思います。

ウグイスガイ科

▲ウグイスガイ科の代表種 アコヤガイ

ウグイスガイ科の貝もいろいろいますが、小さいのがライブロックについてくることがあります。ただしキュアリングの際にはじかれることも多くありますので、発生することは少ないようです。この仲間で有名なのはアコヤガイで、この貝は真珠養殖の母貝になります。ほかこの科にはマベガイなど、真珠養殖の母貝になるものが多いです。このほか似たようなアオリガイ科の仲間も見られますが、アオリガイの仲間はウグイスガイ科よりも貝殻がもろいので到着時には死んでいることもあります。

この仲間も足糸を使用して岩などにくっつきます。写真でもアコヤガイの左のほうに緑色の足糸が見られます。

カキの仲間

熱帯のサンゴ礁にもカキの仲間が生息しており、一部はライブロックなどに小さいのが付着していることもありますが、トサカガキなどは美しい形・色をしているので販売されていることもあります。ライブロックに付着していますが、これまでご紹介した貝とは異なり、この仲間は足糸でくっついているわけでなく、セメント質を分泌して岩に付着しているようです。日本沿岸ではマガキやイワガキ、イタボガキなどを食用にしていますが、ライブロックの中に生息するものは食用にはなりません。

二枚貝は有害?無害?

▲ライブロックについていたが死んでしまったエガイの仲間

二枚貝は巻貝とはことなり、サンゴを食べたり魚を襲うということはしません。そのためマリンアクアリウムではほぼ無害な存在ではあります。しかし、注意点としては死んでしまうと著しく水質を悪化させてしまうということがいえます。とくに大きな二枚貝を小型水槽で飼育しているときなどは注意が必要です。ただ写真のような小型個体が死んでしまってもあまり水質に悪影響はありませんでした(殻サイズ2.5cm、水槽サイズ40cm。アクアシステムのルノアール360)。

また、よく「二枚貝は水質浄化に役立つ」などとうたわれて販売されていますが、これは二枚貝が粒子状の有機物をろ過するようにして捕食しているものの、それほど劇的な水質改善は望みにくく、また逆に何かのトラブルがあって死んでしまったら一気に水槽崩壊に近づきます。結論として、特に大きな害は及ぼさないものの、小型水槽での飼育には注意が必要な生き物といえます。場合によっては取り出したほうがよいかもしれません。また水槽から取り出しても、海に逃がすようなことは決してしてはいけません。

マリンアクアリウムで飼育される二枚貝

二枚貝も種類が豊富ですが、マリンアクアリウムではあまりお目にかかれません。砂に潜っているものも多く、そういう意味でもなかなか見られないといえますが、飼育が難しいものも多いというのがその理由といえます。しかし、中にはマリンアクアリウムで飼育される二枚貝もいます。

シャコガイ

▲シャコガイ

シャコガイは二枚貝の中でもアクアリストにはお馴染みの貝といえます。外套膜に褐虫藻を共生させてそこから主にエネルギーを得ているため、強い光がないと飼育は難しいといえます。また水質も高いレベルのものが求められ、サンゴ、それもSPSを飼育するような環境が欲しいところです。そのため、初心者には飼育が難しい貝といえます。

なお、シャコガイ科には世界最大の二枚貝の仲間であるオオシャコガイも含まれています。この仲間はいずれの種も食用として人気で養殖もされているほどです。シャコガイの飼育方法はこちらをご覧ください。

ミノガイの仲間

▲フクレユキミノか?

ミノガイ科の貝も飼育されることがあります。有名なのが「フレームスキャロップ」ともよばれるウコンハネガイで、非常にカラフルな色彩で人気がありますが、殻を開閉させて動くという特徴があります。しかしこのほかにも似たような貝が何種類かおり、一部の種は海で採集することもできます。ただし長期飼育についてはやや難しいような印象を受けます。また写真のミノガイ(フクレユキミノ?)は貝殻が薄く写真の個体も少し欠けてしまっていました。

ライブロックにつく二枚貝まとめ

  • ライブロックに二枚貝がついていることもある
  • ライブロックにつく二枚貝はほぼすべて岩に固着するタイプ
  • フネガイ科のエガイなどが多くみられる
  • イガイ科は岩などによく固着するがライブロックについていることは少ない
  • ウグイスガイ科やアオリガイ類は小さいものがついていることがある
  • カキの仲間が固着していることもある
  • 基本的に生物を捕食するなど害を与えることはない
  • 死ぬと水質が急激に悪化する
  • 水槽から出す場合も海に逃がしてはいけない

2020.07.17 (公開 2020.07.16) 海水魚図鑑

メジナの飼育方法~すぐ大きくなり性格もきつめ!持ち帰る場合は注意

メジナは「磯魚」の代表的な魚で、釣りの対象魚および食用魚としてよく知られている魚です。幼魚のうちは潮だまりで群れをつくり、丈夫で飼育もしやすいため、持ち帰ろうとするアクアリストも多いのですが、水槽内でも大きく育ち、性格もきつくなってしまうので、持ち帰る前によく考えるようにしなければなりません。今回はメジナの飼育方法をご紹介しますが、個人的にはあまりおすすめはしません。

標準和名 メジナ
学名 Girella punctata Gray, 1835
英名 Largescale blackfishなど
分類 条鰭綱・スズキ目・スズキ亜目・メジナ科・メジナ属
全長 30cm(海では50cm)
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド海藻70など
温度 25℃
水槽 90cm~
混泳 性格はややきつい。弱い魚とは組み合わせないほうがよい
サンゴとの飼育 LPSとの飼育は注意が必要かもしれない

メジナって、どんな魚?

▲藻場で群れるメジナの幼魚

スズキ目・メジナ科・メジナ属の海水魚です。メジナ科はイスズミ科の魚と習性などよく似ており、カゴカキダイ科やタカベなどとともにイスズミ科に含められることもありますが、今回はカゴカキダイのときと同様、独立した科(メジナ科)として扱います。

シルエットはタイの仲間のようにも見え、実際に「クロダイ」とよぶ地方名もあるのですが、タイ科ではありません。海では大きいものは60cm近くになり、釣りの対象魚として人気があります。また食用になり冬には脂がのり刺身などにして美味です。そんなメジナは春から夏にかけて沿岸で小さな個体を多数みることができます。体色は黒っぽく、鱗に小さな黒色斑がありますが、驚くと白っぽいまだら模様が出ることもあります。日本の幅広い地域に分布し、北海道南部から九州南岸、沖縄諸島にいますが、沖縄県では希少な魚です。海外では韓国、台湾、中国(タイプ産地)に分布しています。

メジナの仲間の分布域

メジナの仲間は太平洋、大西洋の温帯域に生息しています。このうち日本近海には3種が分布しています。この仲間はオーストラリアに多く生息しており、その中でもゼブラフィッシュとよばれるGirella zebraは日本にも輸入されたことがあります。熱帯域に少なく、北半球と南半球の温帯域に広く分布しているという点ではイシダイの仲間と分布が似ているようにもみえますが、イシダイ科はインド洋では南アフリカに多いのに対し、メジナの仲間はインド洋ではオーストラリア周辺に限られ、その代わりに大西洋(カーポベルデ)にも分布しています。

オーストラリアやカーポベルデのものは日本のメジナにまだ似ていますが、東太平洋のものなどは本当にこれがメジナ属?と疑問を抱いてしまうような種類もいます。Doydixodon属とするべきかもしれません。

メジナとクロメジナの違い

日本には3種類のメジナ科魚類がいます。そのうちオキナメジナは幼魚や若魚の体側に黄色い横帯が入り、黄色い横帯が不明瞭、または消失する成魚であっても独特の顔つきでほかの種との区別は容易ですが、メジナとクロメジナの2種はかなりよく似ています。

▲メジナ(上)とクロメジナ(下)

よくこの2種を見分ける方法として、「鰓蓋後縁が黒いのがクロメジナ」とされがちなのですが、メジナの中にも鰓蓋後縁が少し黒っぽいのがいるため、この部分だけで同定すると間違えやすいといえます。鱗の色彩や数で同定するとよいでしょう。

メジナは鱗に黒点があり(たまにないものもいる)、鱗が粗いのが特徴です。もう一方のクロメジナは鱗に黒点がなく、鱗が細かいのが特徴です。鱗数にも違いがあり、メジナは側線有孔鱗数(LLp)50~56、背鰭棘条部中央下側線上方横列鱗数(TRac)6~9で、クロメジナではLLpが57~65、TRacが8~13となっています。クロメジナのほうが鱗が細かくその分数も多い感じです。ただし鱗の色彩などは小さすぎるうちは特徴が出てこないこともあります。この2種は非常によく似ており、初心者にはわかりにくいかもしれません。多くの個体を見たり触ったりすることで覚えるとよいでしょう。

生息場所についてはクロメジナのほうがやや暖かい海の外海に面した磯を好み、メジナの方は内湾から外海に面した磯まで広く生息している感じです。メジナは日本海岸・太平洋岸どちらでもよく見られますが、クロメジナは日本海側ではまれな種とされています。またメジナと同じく、沖縄でもあまり見られない種のようです。太平洋岸の紀伊半島や高知、宮崎、あるいは長崎といったところではメジナ同様によく見られます。

メジナは地方名は関西など西日本方面で「グレ」「クロダイ」といいますが、釣り人の間では「口太」とも呼びます。クロメジナは釣り人の間では「尾長」と呼ばれて区別されています。サイズという点ではクロメジナのほうがメジナより大きくなり人気です。

メジナに適した環境

水槽

▲かわいい稚魚もすぐに大きくなってしまう

▲メジナの成魚

メジナの仲間は自然下では全長50cmに達し、水槽内ではそれほどにはならないでしょうが、ある程度は大きくなります。そのため、成長するに従い大型の水槽が必要になります。また成長も早く、5月に採集した稚魚は秋に手のひら大の大きさに成長してしまいます。そのため、当然ながら早めに大きめの水槽を用意するようにしましょう。最終的には90cm、できれば120cm水槽を用意するのが無難でしょう。それができないなら持ち帰らず海に逃がしてあげるようにしましょう。

ろ過槽

おすすめのろ過槽は上部ろ過槽です。外部ろ過槽は酸欠になりやすいため単用を避け、プロテインスキマーや外掛けろ過槽を使用し、酸欠にならないように注意します。メジナは極めて丈夫な魚ではありますが、ろ過が中途半端だとうまく飼育することはできないでしょう。

オーバーフロー水槽での飼育はおすすめです。メジナは大きくなる魚で排せつの量も多くなります。またほかの魚と飼育するのであれば必然的に大型水槽が必要になりますので、そうなるとオーバーフロー水槽が有利となるのです。

水温

メジナは温帯性の魚ですが、水温の変化には強いようで、比較的高めの水温でも飼育できます。夏が来て魚の調子がイマイチの中でも、メバルやアイナメ、カワハギといった魚が弱っていくなかメジナはピンピンしていました。ただし高水温に耐えられるといっても、25℃前後での飼育が理想です。メジナは極めて丈夫な魚ではありますが、水温が大きく変動するようでは丈夫なメジナであっても病気になってしまうことがありますので、できるだけ一定の水温を保つようにします。

メジナに適した餌

雑食性でエビやカニなどの甲殻類、海藻類を捕食しています。理想は肉食魚用・藻類食魚用、両方の餌を与えることです。状態さえ悪くなければ、ペレット、フレークいずれの餌もよく食べてくれるでしょう。生餌はよほどのことがない限り、与える必要はありません。逆に与えすぎると水を汚してしまうことがあります。もちろん釣り餌のオキアミであるとか、撒き餌などは絶対にあたえてはいけません。

私がかつてメジナを飼育していたのは学科内の水槽であり、養殖用の配合飼料を与えていました。しかしこのような餌は一般家庭ではもてあましやすいので注意が必要です。

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メジナをお迎えする

▲高知県で釣れたコッパサイズのメジナ

メジナは北海道南部から琉球列島まで、日本のほとんどの海岸に生息しています。多いのは関東地方・能登半島から九州沿岸で、沖縄ではあまりみられません。沖縄ではクロメジナも少なく、一番多いのがオキナメジナという種類です。オキナメジナは南方系で幼魚期には黄色い模様が入る美しい魚で、幼魚期には千葉~九州の太平洋岸でも採集できます。コッパサイズ、とよばれるやや大きいもの(それでも幼魚ですが…)が欲しいときはオキアミを釣り針の先端につけ、釣ってみるとよいでしょう。

ただしここでよく考えてみましょう。90cm、できれば120cm水槽で終生飼育できる覚悟がありますでしょうか。もしそれができないのなら逃がしてあげる(か、食べる)べきです。一度水槽に入れた魚は、海に再放流すべきではありません。

メジナと他の生物との関係

メジナと他の魚との混泳

メジナの性格はやや強めで、他の小型魚をいじめることがあるため、混泳には注意が必要です。ただし大きめのサイズの他魚とは混泳可能です。近縁科とされるカゴカキダイ、タカノハダイ、温帯性のベラ、メバルの仲間など、さまざまな魚と飼育できます。ただし同種同士では群れていますが大きくなると争うこともあるので混泳には注意しましょう。実際に同じメジナ同士を飼育するときはかなり大型水槽が欲しいところです。

メジナとサンゴ・無脊椎動物との相性

私が以前メジナを飼育していたときは魚水槽で飼育していたのですが、近い仲間ともされるカゴカキダイはサンゴをつついたという例もあります。それを考えるとLPS水槽での飼育はやめたほうがよいのかもしれません。また、海藻は餌になってしまうおそれがあり、入れてはいけません。甲殻類はメジナに捕食されない・またはメジナを捕食しないもので、水温など生息環境が同じものであれば、いっしょに飼育することができます。具体的にはアカシマシラヒゲエビ(スカンクシュリンプ)、シロボシアカモエビ(ホワイトソックス)、サンゴヤドカリなどです。メジナの大型個体はサラサエビなどを食べてしまうこともあり、一緒にしてはいけません。オトヒメエビはメジナの大きいのとは入れても大丈夫のようですが、大きなオトヒメエビと小さなメジナを組み合わせると、オトヒメエビの大きなハサミで襲われる危険もあり、注意が必要です。

まとめ

  • 日本の広い範囲に分布する磯魚の代表種
  • 春から夏に幼魚がよく見られる
  • 成長は早く大きくなるので最低でも90cm水槽が必要になる
  • ろ過槽もしっかりしたものが必要
  • 温帯性だが25℃前後でも飼育できる。一定の水温を保つことを心がけたい
  • 配合飼料をよく食べてくれる
  • 動物質・植物質のもの両方を与えるのが望ましい
  • 販売されることはまずなく採集にたよることになる
  • 採集しても持ち帰って飼ってもいいのかかよく考えたい
  • 気が荒いが混泳不可というほどでもない。ただし巨大水槽は必要
  • サンゴ飼育には注意が必要かもしれない
  • 甲殻類との飼育も注意が必要

2020.07.15 (公開 2020.07.15) 海水魚図鑑

コスジイシモチの飼育方法~飼育方法や近縁種との見分け方を紹介!

コスジイシモチはテンジクダイ科の魚で、この科の中でも多くの種が知られるスジイシモチ属の魚です。体には赤みを帯びた色の縦縞が7本と、尾柄部に黒色斑があり、ほかの多くのテンジクダイの仲間と見分けることができます。鮮やかで熱帯性の魚と間違えられやすいのですが、沖縄では少ない温帯性の魚で高水温に弱く、また水質の悪化にも弱い点があります。今回はコスジイシモチの飼育方法をご紹介します。

標準和名 コスジイシモチ
学名 Ostorhinchus schlegeli (Bleeker, 1855) ※後述
英名 Schlegel’s cardinalfishなど
分類 条鰭綱・スズキ目・スズキ亜目・テンジクダイ科・スジイシモチ属
全長 12cm
飼育難易度 ★★★☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど。どうしても餌付かない場合は冷凍フード。
温度 22℃
水槽 60cm~
混泳 性格が強い魚、肉食魚、コスジイシモチの口に入るような魚は不可
サンゴとの飼育 多くのサンゴと飼育できるがSPSとの飼育は不向きかも

コスジイシモチって、どんな魚?

コスジイシモチはスズキ目テンジクダイ科の魚です。体には7本の縦縞模様があり、その帯が赤茶色から濃いオレンジ色になること、尾の付け根に黒い大きな円形斑があることにより、ほかの縦縞のあるテンジクダイの仲間と見分けることができます。これほど美しい色彩をしていますが温帯性の魚で、琉球列島では少ないです。しかし中国やインドネシアには分布しています。生息水深も浅瀬から水深70mにまで達しています。

釣りや定置網などで漁獲され、食用となっていますが、あまりメジャーなものではありません。しかし塩焼きなどにして食べるとおいしいものです。

学名について

コスジイシモチの学名はかつてオランダのピーター・ブリーカーによりApogon schlegeliとして記載されました。その後はApogon endekataenia の異名とされたこともありましたが、現在はそれぞれ別種とされています。なお、従来のApogon属(旧:テンジクダイ属)は大幅に整理がなされ、現在コスジイシモチの学名はOstorhinchus schlegeli (Bleeker, 1855)となっています。学名の種小名はおそらくオランダ・ライデン博物館のヘルマン・シュレーゲルにちなむものと思われます。だとすればカエルの一種であるシュレーゲルアオガエルと同様です。

キンセンイシモチとの違い

キンセンイシモチはコスジイシモチのようなオレンジ色の縦縞があり、たまにコスジイシモチと間違えられることがあります。しかしこの2種は尾柄の部分を見れば簡単に見分けることができます。コスジイシモチは尾柄の部分に暗色斑があるのですが、キンセンイシモチにはそれがありません。たまにキンセンイシモチによく似たもので尾柄部に赤色の円形斑があるのもいますが、これはアカホシキンセンイシモチという別種となっています。

コスジイシモチは本州から九州までの太平洋岸で多く見られます。キンセンイシモチも同様ですが、和歌山や四国などではよく見られるものの、それより北だと近縁種であるスジオテンジクダイと呼ばれる種が多くなります。スジオテンジクダイはキンセンイシモチに似ますが、眼の下から腹部にかけての模様がキンセンイシモチと大きく異なっています。沖縄ではキンセンイシモチが浅場に多いものの、コスジイシモチはほとんど見られないようです。

縦縞模様のあるテンジクダイの仲間

体側に縦縞模様のあるテンジクダイはコスジイシモチやキンセンイシモチのほかにも多数います。とくにこれら2種が含まれるスジイシモチ属の魚はこの傾向が強いです。コスジイシモチに似ていますが縦縞の数が少ないオオスジイシモチやミスジテンジクダイなどは九州以北でもよく釣れたり獲れたりするもので本種と間違えられやすいです。

なお、この海水魚ラボでは、過去に体側に縦縞模様のあるテンジクダイの仲間の見分け方を掲載しています。この手のテンジクダイを釣りなどで採集し、種類がわからないというときは、こちらもご覧ください。

コスジイシモチ飼育に適した環境

水槽

▲コトブキ製60cm水槽を使用したコスジイシモチの飼育例

コスジイシモチは全長10cmほどになるため、それなりのサイズの水槽が必要になります。最低でも60cm水槽で飼育するようにしましょう。ほかの魚との混泳を考えた場合は90cm水槽が欲しくなることもあります。

水質とろ過システム

テンジクダイの仲間はヤッコの仲間よりは水質にうるさい面があります。そのためきれいな水を保つようにしなければなりません。基本的には上部ろ過槽を使用してろ過することになりますが、外部ろ過槽も追加できればなおよいです。しかし他よりも圧倒的に大きなろ過槽スペースをもつオーバーフロー水槽が最適といえます。

コスジイシモチはサンゴに無害なので、ベルリンなどのサンゴ水槽でも飼育できますが、意外と大食いであり餌を絞りにくいため、水を汚しやすくその点は注意が必要です。また生息地的にも浅場のSPS(ミドリイシ)よりはやや深い場所に住むLPSや陰日性サンゴが似合いますが、陰日性サンゴとの飼育はベテランでないと難しいところがあります。

水温

コスジイシモチは高水温に弱いところがあります。20~22℃であれば状態よく飼育できますが、25℃では高すぎるように思え、それ以上では非常に危険です。夏を乗り切るのには水槽用クーラーが必須といえます。もちろん水温は年中一定に保つ必要があります。

コスジイシモチに適した餌

口が大きく小魚などや甲殻類を捕食する

コスジイシモチは動物食性です。一般的にこのテンジクダイの仲間は配合飼料などをすぐに食べてくれるのですが、このコスジイシモチは特に大型個体は最初から配合飼料を食べてくれるというわけではありません。なかなか餌付かないときは冷凍のホワイトシュリンプや、イカや魚の切り身などを食べさせる必要があります。クリルも食べますが栄養が偏りやすいので注意が必要です。またこれらの餌は水を汚しやすいので、しっかりしたろ過システムが重要になります。また釣り餌のオキアミなどは添加物が含まれていたりして、魚やサンゴに有害あったり、水質を大きく悪化させてしまう可能性もあるので与えないようにします。

配合飼料を食べる個体であればその配合飼料を与えるようにし、先ほど述べたホワイトシュリンプや切り身などはたまに与えるだけで十分です。

コスジイシモチをお迎えする

購入する

一般的な海水魚店ではまず販売されていません。近海魚に強いお店か、自分で釣ってくるのが一番です。海水魚店で「コスジイシモチ」として販売されていることもありますが、大体が海外産の別種です。以前お店でヤクシマダテイシモチをコスジイシモチとして売っていることがありました。購入時の注意点としては、体表や鰭に白点やただれ、傷などがあるもの(とくに鰭がボロボロだったり、溶けているものは危ない)、入荷直後のもの、眼が飛び出ているものは購入しないようにします。

採集する

コスジイシモチは内湾の防波堤などで夕方~早朝にかけて釣ることができます。針はサヨリ針、それにオキアミをつけておくと比較的釣りやすいように思います。ちなみに私が飼育していた個体は愛媛県宇和島市の防波堤で、夕方に釣れました。釣れたら速やかに、なるべく直接魚の体表に触れないように素早く針を外して海水を張ったバケツに泳がせます。

また、釣れて細かい泡が発生するようなエアーストーンを使用するのはいけません。体表が弱いらしくこれで傷つくことがあるようです。また底のほうの汚れが舞いやすく、水質悪化を招くこともあるのです。汚い水で生かしておくと、尾鰭などがぼろぼろになってしまうことがあります。そうなると回復させるのは困難になってしまいます。きれいな水を組むだけにするか、投げ込み式のろ過槽を使用して運搬するとよいでしょう。

コスジイシモチとほかの生物との関係

ほかの魚との混泳

▲コスジイシモチとクロホシイシモチ(奥)

コスジイシモチはほかの魚との混泳ができますが、体表が弱くスレ傷などに弱いところがあります。そのため、気性が激しいスズメダイなどとの混泳はやめたほうがよいでしょう。とくに小型水槽では悲惨な結果になりやすいです。このほか本種を捕食する恐れがあるミノカサゴやカエルアンコウ、ハタの仲間などもいけません。120cm以上の大きな水槽で、ハナダイの仲間やベラの仲間などとであれば飼育できますが、それでもいじめられていないか、よく観察しましょう。なお、同じテンジクダイの仲間であれば問題ないことが多いです。一方でコスジイシモチの口に入ってしまうような小魚も一緒に飼育することはできません。熱帯性の魚との飼育もできますが、あまり似合いません。

サンゴ・無脊椎動物との相性

サンゴとの相性は悪くはないのですが、先述のように大型個体は配合飼料に餌付きにくいことがあったり、大食漢であることから、ミドリイシなどのデリケートなサンゴとの飼育には向かないところもあります。LPSや陰日性のサンゴとの飼育は可能です。ただしイソギンチャクは魚を捕食するおそれがあり、これもおすすめできません。甲殻類はコスジイシモチを傷つけることがあるため避けます。サンゴヤドカリの類、ベニワモンヤドカリなどであれば混泳は可能です。クリーナーシュリンプも可能ですが、オトヒメエビは大きなハサミをもち、魚を襲うこともあるためできるだけ一緒に飼育するのは避けるべきです。逆にサラサエビやペパーミントシュリンプなどは、大きさによってはコスジイシモチに捕食されるおそれもあるため、これもいけません。

コスジイシモチ飼育まとめ

  • 赤身を帯びた縦縞と尾柄部の黒色斑が目印
  • キンセンイシモチに似るが尾柄部に黒色斑がある
  • 全長10cmと比較的大きくなるので要注意
  • 最低でも60cm水槽+上部ろ過槽
  • 高水温に弱いため20~22℃の水温で飼う
  • 配合飼料も食べるがどうしても食わないときは冷凍餌を与える
  • 海水魚店で販売されることはほぼないため釣って採集する
  • なるべく体表に触れないように針をはずし綺麗な水を張ったバケツに入れる
  • ほかの魚や甲殻類との混泳には注意が必要
  • サンゴには無害だがSPSとの飼育には不向き

2020.09.26 (公開 2020.07.14) 海水魚飼育の基礎

小型水槽でサンゴを飼育する注意点~水槽・機材の選び方、難易度

最近は小型水槽でサンゴを飼育しているアクアリストも多くなりました。しかし小型水槽は水量が少なく、60cm以上の水槽で維持するサンゴ水槽とくらべ安定した環境を維持しにくいというデメリットもあります。しかし最近は小型水槽用の機材も増え、従来よりは小型水槽でも維持しやすくなりました。今回は小型水槽でサンゴを状態よく飼育するためポイント、機材、小型水槽に適した種類などをご紹介します。

小型水槽でもサンゴ飼育を楽しめる?

マリンアクアリウムにおいて水量というのは非常に重要な要素になります。水槽が大きければ、水温や水質といった水槽内環境は安定し、逆に水槽が小さいと水温や水質の変動が激しくなり、これが小型水槽で魚やサンゴを飼育するのは難しい、といわれている理由になります。しかし最近は機材もそろい、近年は小型水槽用のクーラーもそろうようになりました。その結果、従来よりは小型水槽でもサンゴ水槽を楽しめるようになりました。

それでも、小型水槽でのサンゴ飼育はマリンアクアリウムをはじめたばかりのアクアリストには向かないところがあります。今回の記事は、ある程度経験を積んだアクアリスト向けの記事となります。なお、ここでは大体幅45cm未満の水槽を小型水槽としています。

小型水槽で飼育できるサンゴの条件

小型水槽でサンゴを飼育するための条件は、以下の通りになります。

1.丈夫で水質悪化にある程度耐えうること

▲デリケートなナガレハナサンゴは小型水槽には向かない

小型水槽は水質が安定しにくいのが特徴です。大型水槽よりも水温が変わりやすかったり、海水中の水が蒸発してしまい塩分がかなり高くなってしまうこともあります。そのため水質の変化に弱いサンゴは飼えません。具体的にはミドリイシ、コモンサンゴ、ショウガサンゴなどのSPS類はもちろん、LPSでもナガレハナサンゴやハナガササンゴなどのデリケートなサンゴは小型水槽での飼育にはあまり向いていないところがあります。ソフトコーラルもウミアザミやチヂミトサカなどは水質悪化に弱い面がありますので、小型水槽での飼育はおすすめしません。

2.大きく広がったりしないこと

▲背が高いトサカの仲間は小型水槽に向かない

大きく広がったり、背が高くなるタイプのサンゴもあまりおすすめしません。小型水槽のような小さなスペースでは大きくサンゴが広がったり伸びたりしてしまうと狭く感じられることがあるからです。また水流を遮ってしまうこともあるので、このようなサンゴは小型水槽には適していないといえます。具体的には写真のようなトサカの類は背が高くなりますし、ヒユサンゴ(オオバナ)も非常に大きく広がることがあるため注意が必要です。ハナサンゴの類は水質の面と合わせても小型水槽での飼育が難しいといえます。

3.給餌が不要なこと

▲給餌が必要なイボヤギやキサンゴも小型水槽には向かない

当たり前のことなのですが、小型水槽は60cmや90cmの規格水槽よりも小さいのです。そうなると水質が悪化するのも早くなります。水質悪化の要因は魚の給餌(それにより出てくる残餌)と排せつです。サンゴの仲間も給餌が必要なものは小型水槽での飼育には向きません。イボヤギやキサンゴなどはとくに給餌を必要とする種類で、餌がないと飼えないため小型水槽での飼育に向かないといえます。

小型水槽向けのサンゴ

小型水槽で飼えるサンゴといえば以下の通りです。以前ご紹介しました「初心者におすすめのサンゴ一覧」とかぶる種類が多いですが、やはりこれらのサンゴが丈夫で飼いやすいということがいえるでしょう。

マメスナギンチャク

▲マメスナギンチャク

マメスナギンチャクは小型のソフトコーラルの中でとくに飼育しやすい種です。カラーバリエーションも豊富で小型水槽を彩ります。硝酸塩が高くても死んでしまうことが少なく、丈夫で飼育しやすいものです。給餌もすれば増えますが小型水槽ではもてあますこともありますので、あまり増やさないほうがよいでしょう。また先述の通りで、餌を与えると水質を悪化させやすいので注意が必要です。光は一般的に販売されているLED照明で十分、水流は強くても弱くても問題はおきにくいです。

スターポリプ

スターポリプ

スターポリプはソフトコーラルの一種です。緑色やベージュ色で、開いたら大変美しいサンゴです。ただしソフトコーラルの中では意外と水流を必要とします。小型水槽用の水流ポンプとしては、ハイドールから出ている非常に小型の「ピコエボマグ」などがありますのでつけたほうがよいでしょう。開かないときは水替えして水質をよくしたり、照明や水流ポンプの位置を変えてみましょう。うまくいけば、もてあますくらいにまで増えますので適度に間引きます。

ディスクコーラル

▲鮮やかな青色がきれいなディスクコーラル

ディスクコーラルもサンゴというよりはイソギンチャクに近いようです。この種もマメスナギンチャクと同様非常に飼育しやすく、初心者でも安心して長期飼育が楽しめるサンゴです。ただうまく飼育できていると爆発的に増えてしまうこともあるので注意が必要です。ほかに退避できるような水槽がなければ避けた方が無難かもしれません。また餌を与えると増えますが、小型水槽では増えるともてあまし、大きくなるとほかのサンゴと接触することもあるので、たまにやる程度で十分です。

なお、ディスクコーラルは種類も多く、エレファントイヤーなどの種類は小型水槽では確実にもてあますほど大きくなるので、十分注意します。

ウミキノコ

▲ウミキノコ

ウミキノコはトサカの中では比較的丈夫で飼育しやすいサンゴですが、それでもできるだけきれいな水質での飼育を心掛けたいものです。小型水槽でも飼育しやすいサンゴですが、成長するとトサカなどと同様背が高くのびることも多いです。光が足りないと茎のような部分が長くのびてしまいやすいので、強めの光のもとで飼育したいサンゴです。また水流はやや強めのほうが望ましいサンゴです。

オオタバサンゴ

▲オオタバサンゴ

オオタバサンゴはピンク、オレンジ、グリーンなど、色彩がカラフルで美しいサンゴで、コレクションする楽しみのあるサンゴです。非常に丈夫で10年単位での飼育もしやすいハードコーラルですが、ハードコーラルですので骨格を育てるのにKHやカルシウム、マグネシウムなどは添加してあげたいところです。餌は与えれば増えますが、爆発的に増えることはありません。また頻繁に給餌すると水を汚してしまうのでたまに与える程度で十分です。光は必要ですが強すぎるものはいけません。同様に水流も強いのは好みません。

カクオオトゲキクメイシ

▲オーストラリア産のカクオオトゲキクメイシ

「キクメイシ」と名前がついてはいますがキクメイシよりもオオタバサンゴに近い仲間です。成長もキクメイシよりは早く、オオタバサンゴ同様に丈夫で飼育しやすいサンゴといえます。飼育の注意点はオオタバサンゴと同様ですが、カラーバリエーションは非常に豊富で見て楽しいサンゴです。

タバネサンゴ

インドネシアのタバネサンゴ

タバネサンゴはキクメイシの仲間のサンゴです。この種も非常に丈夫で飼育しやすいので、小型水槽でも飼育できるサンゴといえます。餌は与えなくてもよいのですが、たまに与えるとよりよい状態で飼えます。ただし、やはり餌は与えすぎると水を汚しますので注意が必要です。

「フラグサンゴ」は小型水槽向けではない

フラグの状態で販売されているウスコモンサンゴとコンフサ

よく勘違いされることがありますが、いわゆる「フラグサンゴ」は小型水槽向けのサンゴではありません。大きなサンゴをカッティングして小さなフラッギング用プラグに接着したものなのです。飼育難易度もミドリイシであれば一般的なミドリイシに準じた飼育環境、たとえば安定したカルシウムやKH、強力な照明、ランダムでかつ強力な水流が必要になります。小さく扱いやすいように見えますが、フラグサンゴの難易度はマザーとなったサンゴと変わらないのです。

ただしフラグサンゴでも初心者向けのものがあります。それは先ほどのべたマメスナギンチャクやカクオオトゲキクメイシのフラグです。とくに最近はカクオオトゲキクメイシのフラグが人気です。カクオオトゲキクメイシはカラフルでよく増やせて、かといって爆発的な増殖はなく、飼育もしやすいからです。ただし購入する場合はサンゴに傷がないものを選ぶなど、しっかりとした「見極めの目」が必要になります。

小型サンゴ水槽向け機材

水槽

水槽の素材はガラス製とアクリル製がありますが、筆者が小型水槽でサンゴ飼育をはじめるときはガラスを使用します。アクリルは傷がつきやすいのですが、ガラス水槽は傷がつきにくくガシガシ掃除ができるからです。これは強い照明が必要、つまりコケが生えやすいサンゴ水槽での飼育では重要な要素といえるでしょう。

水槽の形状としてはキューブ水槽がおすすめです。これは水槽の幅、高さ、そして奥行きの3つが同じサイズの水槽です。なぜおすすめかといいますと、30cm規格水槽(30×20×23cm)の水槽では大体12リットルの海水を入れられますが、30cmキューブ水槽では大体24リットルの海水をいれることができるからです。

ろ過槽

海水魚とサンゴを飼育するのであれば上部ろ過槽をおすすめしているのですが、上部ろ過槽は小型水槽に使用できないという致命的なデメリットがあります。そのため外掛けろ過槽と小型外部ろ過槽がベストでしょう。大きめのエーハイム2213などを使用するという選択肢もあるものの、外部ろ過槽は酸素がいきわたりにくく、使用状況によっては酸欠を招くこともあるので外部ろ過槽だけを使用するというのはおすすめできません。

おすすめは外掛けろ過槽と外部ろ過槽の併用です。小型外部ろ過槽はジェックスの「メガパワー」や、スドー「エデニックシェルト」など小型外部ろ過槽、先述のエーハイム2213などがおすすめです。外掛けろ過槽はニッソーの「マスターパル」やジェックスの「簡単ラクラクパワーフィルター」がよさそうです。なぜこれらの商品がよいのかといいますと、外掛けろ過槽のモーターは通常、水槽の外に出して使うのですが、これらの外掛けろ過槽は水中ポンプを使用しており、初期に発生しやすい、「水漏れ」などのトラブルが起こる可能性が少なくなるからです。逆にモーターの熱で水温があがる可能性があるというデメリットもあります。このほかカミハタから出ている「海道河童」という選択肢もあります。

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プロテインスキマー

小型水槽であれば選択肢はエアリフト式だけだったのですが、現在ではゼンスイの「QQ1」みたいに、小型水槽向けのベンチュリー式プロテインスキマーも販売されています。エアリフト式も種類が豊富にあり、どの機材を選べばよいのか悩んでしまいます。マメデザインから販売されている「マメデザイン・マメスキマー」や、エムエムシー企画の「オルカ ミニット」などの候補があります。ただしエアリフト式はベンチュリー式とくらべどうしても能力不足に陥りやすいところがありますので注意が必要です。その一方小型ベンチュリースキマーであるQQ1などは結構大きく、30cm水槽では外掛けろ過槽と並べて使いにくいという欠点もあります。

水流ポンプ

水流ポンプは小型水槽用であればハイドールの商品がおすすめです。この水流を外掛けろ過槽からの水の流れに当てるようにしますが、サンゴに直接あててはいけません。もっとも小型水槽でも飼育できるサンゴは丈夫な反面強い水流を好まないサンゴが多いです(スターポリプやウミキノコは例外)。

照明

陰日性サンゴ(小型水槽向けではない)をのぞき、水槽に照明が必要です。スターポリプやマメスナギンチャクは簡単ではありますが、それでもしっかり照明を点灯させることが必要です。従来は小型の蛍光灯があり、今でも手堅くサンゴを飼育したい層には需要があるのですが、昨今の水槽用照明はLEDがメインで、蛍光灯はいろいろな種類がありましたが選択肢は狭まってしまいました。最近は多くのアクアリストがLEDにシフトしつつあります。LEDを使用する場合はグラッシーレディオやゼンスイの小型LEDライトなどがおすすめです。

水温調整

冬期の保温に使用するヒーターは安価で購入できますが、夏季水槽の冷却を行うクーラーは高価ですので、しっかり吟味して選ぶ必要があります。ゼンスイから発売されている「テガル」は一見簡単そうに見えるのですが仕組みも簡単なペルチェ式のものです。海水魚飼育であればこれでもよいかもしれないのですが、サンゴの中には高水温に弱いものも多いので、できるだけガス冷媒を使用して冷却するタイプのクーラー、例えば同じゼンスイ製のZC、もしくはZRシリーズを使用することをおすすめします。

なお外部ろ過槽はエーハイムなどであればクーラーを接続できますが、エデニックシェルトやメガパワーの小型機種はクーラーとの接続が困難になりますので、リオやネワなどの水中ポンプ(水流専用ではないもの)を購入してクーラーに接続しなければなりません。たとえ小さい水槽であっても、90cmや60cmの水槽と同じような機材の小型バージョンで飼育しなければうまく飼育することはできないのです。

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餌と添加剤

餌は魚・サンゴともに一般的な水槽よりも少なくする必要があります。これは残り餌や排せつ物が水を汚しやすいからです。一方添加剤は重要で、カルシウム・マグネシウム・微量元素・ヨウ素などを供給します。またpHの値を安定させるためにKH上昇のための添加剤(バッファー剤)も添加したいところです。最近ではこれらを総合的に供給する「リキッドリーフ」のような添加剤もあり、添加するとよいでしょう。このほかこまめな水かえでこれらを補うという方法もありますが、それでもヨウ素は分解されてしまいやすいため、添加剤を使用しての供給は必要といえます。

実際の水槽を見て考えてみる

ここまでは小型水槽で飼育できるサンゴや機材をいくつか紹介してきましたが、実際に小型水槽での飼育例を見てみましょう。こちらは筆者が行きつけの海水魚専門店「コーラルタウン」に設置されている30cmキューブ水槽です。サンプは存在せず、この水槽だけで完結しています。水槽システムの根幹をなすのは水槽の背面に置かれている「海道河童」で、物理ろ過と、エアリフト式スキマーにより有機物の除去を行っています。水流専用のポンプは設置されていません。

ライブロックはアーチ状に組まれており、水の通りをよくするなどの工夫がされています。大型水槽と同じようなひな壇レイアウトは、小型キューブ水槽では難しいところがあります。サンゴは上記で述べたスターポリプやディスクコーラルが入っていますが、このほかにツツウミヅタやカタトサカが入っています。ただしツツウミヅタやカタトサカは飼育がやや難しかったり、大きく育ったりするので、小型水槽での飼育は難しいところがあるため注意が必要です。なおこの水槽は店舗の水槽で、クーラーは入っていませんが、家庭であればクーラーやヒーターが必要になります。

魚の数・餌の数はやや絞り、一般にいわれている10日から2週間に1回よりも短いスパンで水かえを行えばこのような小型水槽でも魚とサンゴのハーモニーが楽しめるでしょう。魚はクマノミのペアとヒゲニジギンポで、従来はこれにカエルウオの仲間であるヒトスジギンポもいました。魚は水を汚すため、少なくするのが成功のポイントのひとつですが、個人的には写真のクマノミもでかいように感じますので、小型のハゼや小型テンジクダイなどがおすすめです。

小型水槽でサンゴ水槽まとめ

  • 小型水槽でもサンゴ飼育は可能
  • マリンアクアリウムをはじめたばかりのアクアリストにはおすすめしない
  • 丈夫で、大きく広がらず、餌を必須としないサンゴが小型水槽向け
  • フラグサンゴは小さいが小型水槽向けでないことも多い
  • 水槽は規格水槽よりもキューブ水槽が最適
  • ろ過槽は外掛けと外部ろ過槽の併用
  • プロテインスキマーも欲しい。小型ベンチュリースキマーがおすすめ
  • 小型の水流ポンプも使って水流をつくる
  • LEDライトを使用して光を供給する
  • 小型水槽用のガス冷媒クーラーとヒーターを使用して水温を調整する
  • 魚の数と餌の量は少なめに
  • ライブロックの組み方にも工夫したい
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2020.07.10 (公開 2020.07.10) 海水魚図鑑

イザヨイベンケイハゼ(フルムーンリーフゴビー)の飼育方法~隠れがちだが飼いやすい

イザヨイベンケイハゼはハゼ科イレズミハゼ属のハゼで、海水魚店では英語名からフルムーンリーフゴビーとも呼ばれています。同じ属の魚にはイレズミハゼやベンケイハゼなどもいますが、本種はこれらの種類とは大きく異なり、白っぽい体に黒い横帯が複数本入ります。丈夫で飼育しやすく、サンゴ水槽でも飼育できますが、引きこもって隠れがちでなかなか出てこないのが難点といえます。今回はイザヨイベンケイハゼの飼育方法をご紹介します。

標準和名 イザヨイベンケイハゼ
学名 Priolepis nocturna (Smith, 1957)
英名 Blackbarred reefgoby, Full-moon reefgobyなど
分類 条鰭綱・スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・イレズミハゼ属
全長 3.5cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど
温度 25℃
水槽 45cm~
混泳 性格が強い魚とは避けたほうがよい
サンゴとの飼育 いろいろなサンゴと飼育できるが捕食性が強いのは不可

イザヨイベンケイハゼって、どんなハゼ?

▲イザヨイベンケイハゼ。トップ画像の個体とは模様がだいぶ異なっている

イザヨイベンケイハゼはこのサイトでもかつてご紹介したイレズミハゼと同じ、イレズミハゼ属の種類です。ただし色彩はイレズミハゼとはだいぶ異なり、白い体に黒い横帯が頭部から尾柄にかけて数本(4本前後。眼下のものは含まない)入るのが特徴です。体の色合いはおおむねこのようなものなのですが、模様には若干の変異があります。分布域は西インド洋のセイシェルから南太平洋マルケサス諸島にまで及び、分布域による違いというのもあるかもしれません。あるいはこれらは将来別種となる可能性もあるかもしれないです。なお、第1背鰭棘はイレズミハゼと同様に若干伸びています。

イレズミハゼ同様隠れがちで、なかなか出てこないこともありますが、慣れれば観察しやすい場所に出てくることもあるので、気長に待ちましょう。

イザヨイベンケイハゼに適した飼育環境

水槽

たいへん丈夫で飼育しやすく、小型水槽でも飼育はできますが、安定して飼育するなら45cmくらいの水槽は欲しいところです。ほかの魚と混泳するなら60~90cm水槽で飼育するとよいでしょう。小型水槽でほかの魚と混泳する場合は温和で同じくらいの大きさの魚と組むようにし、カクレクマノミなどは避けたほうがよいでしょう。60cm水槽でカクレクマノミと飼育するときはサンゴ岩などを使いしっかりと隠れ家を作らなければなりません。

水質とろ過システム

丈夫で飼育しやすいイザヨイベンケイハゼですが、できるだけきれいな水で飼育してあげたいものです。ろ過槽は小型~45cm水槽であれば外掛けろ過槽と外部ろ過槽を使用するのがおすすめです。外掛けろ過槽はろ材を入れるスペースが狭いのですが、酸素を取り込みやすく、外部ろ過槽は逆に酸欠になりやすくろ材を入れるスペースが広いという特徴があります。60cm以上の水槽であれば上部ろ過槽かオーバーフローシステムが最適です。

サンゴには無害な魚であり、ベルリンシステムなどでの飼育もできます。そうなればオーバーフロー水槽がよいでしょう。ただしベルリンシステムで飼育するのであれば魚はたくさん入れられないので注意が必要です。

水温

水温は25℃前後で問題ありません。おおむね22~27℃くらいであればうまく飼育できるのですが、水温の変化が大きすぎる(朝22℃、昼27℃)になると体調を崩してしまいやすいので、ヒーターとクーラーの両方を使用して温度を一定に保つようにします。

隠れ家

▲岩の下に隠れるイザヨイベンケイハゼ

イザヨイベンケイハゼが落ち着ける隠れ家をできるだけ用意してあげたいところです。サイズによっては「ハゼ土管」などでもよいのですが、ライブロックやサンゴ岩などが無難といえるでしょう。またレイアウト変更をしたりするときはイザヨイベンケイハゼがライブロックやサンゴ岩、アクセサリーの中にいないか確認しましょう。最悪の場合岩の下敷きになって死んでしまうということもありますので、十分に注意します。

なお、岩の下にかくれていることが多い本種ですが、このように腹を下に向けていることのほか、腹を上に向けて天井に張り付いていることもあります。これはイレズミハゼなどにも見られる行動です。

イザヨイベンケイハゼに適した餌

▲ピペットでハゼのいそうな場所に給餌するのがおすすめ

イザヨイベンケイハゼは動物食性ですが、配合餌にもすぐ慣れてくれます。沈降性の配合飼料を与えます。小型のメガバイト レッドSは落下スピードが遅く、イザヨイベンケイハゼのいるスペースに落ちる前にほかの魚に食べられてしまうこともあります。このようなときは餌を海水に漬けて、ピペットを使用しイザヨイベンケイハゼのすみかに撒くようにして与えるとか、そのような工夫をして与えることが重要です。コペポーダやホワイトシュリンプなど、冷凍のフードも食べますが、このような餌は水を汚してしまうことがあるので、注意が必要です。とくにサンゴ水槽では冷凍餌与えすぎに注意が必要です。

イザヨイベンケイハゼをお迎えする

イザヨイベンケイハゼは日本ではまれな種で水深もイレズミハゼよりも若干深めなので、購入してお迎えすることになります。価格もイレズミハゼよりも高価で、5000円以上の値段で販売されていることも多いです。

基本的に丈夫で状態よく入ってくることが多いのですが、お店にきてすぐの個体は避けたほうが賢明です。また、体や鰭に傷や赤いただれがあるもの、鰭がボロボロになっているもの、白い点や膜が体を覆うものなどは避けるようにしましょう。

イザヨイベンケイハゼとほかの生物との関係

ほかの魚との関係

イザヨイベンケイハゼは多くの魚と協調性があり、我が家ではハタタテハゼやイトマンクロユリハゼ、カクレクマノミ、キンセンイシモチなどと90cm水槽で混泳させていました。ただし大きく力の強い魚(スズメダイの大きいのなど)や、メギスの仲間など気性が激しい魚、肉食性の強い魚とは組み合わせてはいけません。またカクレクマノミも意外と気が強いところがあるため小型水槽ではできるだけ避けるべきでしょう。

小型水槽で飼育していたときはイレズミハゼと飼育していたこともありましたが、あまり争わずにすごしていました。

サンゴ・無脊椎動物との相性

サンゴにはいたずらしないためほとんどの種と組み合わせることができます。ただしウチウラタコアシサンゴやイソギンチャクの大きいものなどは魚を食べてしまうことがあり、とくにハゼのなかまは捕食されやすいといえます。ただし一般的に「タコアシサンゴ」として販売されるナガレハナサンゴの仲間とは問題ないようです。またディスクコーラルやマメスナギンチャクの類は問題ないことが多いです。

甲殻類については大型のエビ、大型のカニ、大型のヤドカリはいけません。一般的なクリーナーシュリンプ、サンゴヤドカリなどは問題ないことが多いですが、オトヒメエビは大きなハサミをもち、動きが鈍いハゼなどの魚を捕食してしまうことがあるので、一緒に入れるのは避けましょう。

イザヨイベンケイハゼ飼育まとめ

  • イレズミハゼと同じ属であるが色彩や模様は大きく異なる
  • 丈夫で飼育しやすく小型水槽でも飼育できる
  • ほかの魚と混泳するなら60cm以上の水槽がおすすめ
  • 小型水槽での飼育では外掛けろ過槽と外部ろ過槽が最適
  • 60cm以上の水槽なら上部ろ過槽かオーバーフロー水槽がおすすめ
  • 水温は25℃前後をキープする
  • サンゴ岩やライブロックに隠れることも多い。存在を忘れないように
  • 配合飼料をよく食べてくれる
  • お店に来てすぐのものや体・鰭にただれがあるものなどは購入してはいけない
  • おとなしい魚と混泳させたい
  • サンゴには無害だが捕食性がつよいものとは組み合わせないほうがよい

2020.07.15 (公開 2020.07.09) 海水魚の買い方

ベッセル(群馬県高崎市)のショップレビュー~群馬の海水魚専門店といえばここ!

ベッセルは群馬県高崎市にある海水魚専門店です。関越自動車道・高崎インターチェンジに隣接しており、自動車でのアクセスが良好でかつ夜の比較的遅い時間まで営業しているということもあり首都圏からのお客さんも多いです。かなり大きなお店で多くの魚やサンゴが販売されている人気店です。

お店の名前 海水魚・サンゴ専門店ベッセル
運営会社 株式会社ベッセル
お店の住所 群馬県高崎市京目町235-1
電話番号 027-353-5519
営業時間 平日は12:00~22:00、土日祝日は午前10:00~22:00
定休日 毎週火曜日・第3月曜日(祝日は営業)
取扱い生体 海水魚・サンゴ
魚の状態 種類が多くレアフィッシュも多い。全体的に状態も良好
サンゴの状態 SPSの取り扱い量が多い、フラグ化もしている
ウェブサイト http://www.vessel-1997.com/index.htm
通販 あり

ベッセルへのアクセス

自家用車の場合、東京方面からも新潟方面からも関越自動車道の高崎ICのすぐそばなので簡単にアクセスできるところも魅力です。逆に鉄道駅は近くになく、アクセスしにくいのが難点です。料金所をくぐったら前橋西・伊勢崎方面へ向かい降りると右側に見えます。直接はいけないので京目町交差点を右折し、歩道橋(京目歩道橋)の直前を右折、細い道を走り突き当りを右折、再度直進しT字路を右折すると到着します(近隣にあるJAの施設は「通り抜けできません」とあり)。店舗前に駐車スペースが複数台分あります。

▲左は高崎駅方面。右へ行くと前橋・伊勢崎へ。ここは右へ向かう

「京目町」交差点を右折

▲歩道橋の手前を右に入る

▲突き当りを右に(当時は工事中。後述)

▲この角を右折すれば到着

ただし、訪問した当時は下水道工事のため、このルートでは行くことができませんでした。その際は歩道橋のある道を直進し緑色の屋根がある「奄美屋」を右折、ぐるっと大曲がりして行くことになります。またこのほか高速を降りて高崎の市街地方面から「島野町北」交差点を右折しアンダーパスを経由していく方法もあります。

ベッセルの店舗の特徴

北関東らしい広い面積の店舗が特徴です。同じ群馬県のチャームはベッセルよりも店舗が広いのですが、チャームは淡水魚や愛玩動物なども扱っているのに対し、ベッセルは海水魚・サンゴ・器具オンリー。つまり海水魚やサンゴの飼育に特化したモノがいろいろそろうのです。実際に店舗内にはさまざまなメーカーの機材があったり、入り口付近にはブックスペースがあったりと、広い店舗のメリットを生かしています。機材もETSSのプロテインスキマー(廃盤?)のデモ機やらリフュージウムまで、ユニークなものがあったりします。

添加剤も壁にびっしりと専用のコーナーがありこれだけでもこのお店を訪れる理由になりえます。筆者も最近はなぜか見なくなったブライトウェルの「リストア」などを購入しました。

魚やサンゴの様子

海水魚

▲海水魚ストックの一部。多くの魚が入っている水槽であっても状態はよさそう

ベッセルはマリンアクアリウムの専門店ですが、その中で最も力を入れているのは海水魚です。レアフィッシュとしてイトヒキハナダイやヒノマルハナダイなどめったなことではお目にかかれないような深場系の魚も多数販売しています。サンゴ水槽には入れにくいチョウチョウウオの仲間や大型ヤッコ、さらにはフエダイ、モンガラといった魚まで・・・。

一つの水槽にたくさんの魚が入っていますが、それでも状態は非常によさそうです。ただしこれはろ過がしっかりしていたり、スタッフによる管理がしっかり行き届いているためで、家庭の水槽ではなかなかマネできるものではないのでそこは注意が必要です。

また、マニアックな魚が多いのもベッセルの魅力的なところで、特にベラの仲間やスズメダイの仲間、テンジクダイの仲間は面白いものが入ります。魚については関東地方のほかのどのお店よりも多くの種を扱っている、といえるかもしれません。値段も比較的安価で購入しやすいです。

サンゴ

▲ベッセルのフラグサンゴ

ベッセルといえば海水魚なのですが、サンゴ水槽も多数あり、健全で状態の良いサンゴも多数見られます。その中でもとくにミドリイシなどのSPSには力が入っており、専門の機材もそろいます。近年はフラグサンゴも多数あり、中にはかなり綺麗なものも見られます。写真のようにコモンサンゴやミドリイシなどが主体ですが、センベイサンゴなど変わったものもあります。写真のようなカラフルなのもいるのですが、これは若干色をいじっています。実際に見ると青い照明が強いです。

ベッセルの水槽で飼育しているコモンサンゴなどをマザーコーラルとして、店舗内でフラグ化、販売されていることも多く、おおむね状態がよいです。個人的には緑のノリがよいコンフサやオレンジがきれいなウスコモンサンゴなどがお気に入りです。また通販でもこれらのサンゴを扱っており、興味がある方は購入してもよいでしょう。

ベッセルまとめ

  • 海水魚やサンゴ、それらの飼育機材に特化したマリンアクアリウム専門店
  • 関越道高崎ICに近く自家用車でのアクセスが便利
  • 海水魚の種類が非常に多く状態もよい
  • サンゴはSPSを中心に多数あり
  • ベッセルで飼育されたコモンサンゴのフラグも販売している
  • 通販も行っている
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